11.『案件3』彼女が魔法を身につけた理由と彼への想い
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タリスマンへと来訪した戦士と獣人族の二人組パーティ
その一人、回復魔法を使える獣人族のブライアの問題を解決してほしいと依頼され、回復魔法を使う理由をリナは問いただす。
「貴方が回復魔法を使う理由を教えてくれ、そして何故回復魔法を身につけたのかも」
「少し、長くなりますがいいですか?」
「ああ、込み入った事情がありそうだからな」
ブライアは自身が回復魔法を使う理由について話し出す。
「私は獣人族の村で育ったんですが、幼少期に人さらいにあって奴隷商人の元に連れてこられたんです、逆らおうとすると毎日ムチで打たれたりして言うこと聞かされて辛い毎日でした、ある時奴隷商人が鍵を掛け忘れたスキを見て牢屋から逃げ出すことが出来たんです」
「脱走に気付いた奴隷商人が追手を差し向けて追撃され、捕まり殴られたりして連れ戻されそうになった時、偶然通りがかった駆け出し冒険者のバットが奴隷商人達の追手を必死に撃退して私を救ってくれたんです」
「バットは困ってる人を見捨てられない性分で、獣人族だった私でも救いの手を伸ばしてくれたんです、でも最初は人間が信じられなくて彼に噛みついたり攻撃したり反発しました、でも酷い目にあったと思い彼は我慢して自分の育ったカイネン村まで私を連れ帰り、彼のお母さんとお会いしました」
「バットのお母さんは獣人族だった私を全く差別せずに、まるで自分の娘の様に迎えてくれました、一緒に生活するようになり言葉が通じないため、私と会話が出来るように人間の言葉と文字を熱心に教えてくれて、徐々に会話出来るようになりました」
「お母さんの優しさに心を開いた私は家の手伝いと、一緒に農作業をして暮らすようになりました、バットは冒険者家業を続け時々家にお金を運んできたり、私と会話したりしてまるで本当の家族みたいになっていました」
「だけどバットのお母さんは持病があって、薬を買うためにバットは危険な冒険者稼業をしていることを聞きました、私もそれを助けたくて冒険者になりたいとバットに願い出たんです、最初は二人に反対されたんですが結局押し切って冒険者として格闘メインの冒険者になりました」
「最初は苦戦しましたけど、二人でうまくやっていました、順調に冒険も出来てお母さんの薬代も稼げてしばらくは安泰でした」
ブライアはそこで一旦呼吸を落ち着け、それからの事を語りだした。
「ですがある冒険に出た時、オーガとの戦闘中に突然現れた伏兵から私が攻撃を受けそうになった時、バットが私をかばって相手の一撃を背中に食らって大怪我をしてしまったんです」
「なんとか敵は倒せたんですが、大怪我したバットを近くの街まで連れ帰り治療できる人を探したんですが誰も治せる人がいなくて、私が獣人族だと言うのもあって話しすら聞いてくれない人も多くて…」
「街中ずっと探し回って途方にくれた時に、偶然通りがかった魔法使いみたいな方に必死に頼み込んだんです、『大怪我した仲間を治療してください!』って」
「その方は『自分は治療出来ないが、お前が治療したらどうだ?』と言われたんです、でも私は魔法は使えないのでそう伝えました」
「そうしたら『私が教えてやる、ただ死ぬほど辛い目にあうがどうする?』と聞いてきました、選択肢は一つでした『教えて下さい!』と」
「そして魔法陣の中に立つように言われ、回復魔法が使えるように今の詠唱を教えてもらいました」
リナはその話を聞いてピンときた、恐らくブライアに回復魔法を教えたのは師匠だ、でも何故適正がない獣人族に教えて回復魔法が使えるようになったのかは謎だ。
それとも隠された適性を見つけたのかわからないが確認するべき事項だと思った。
「私は教えられた回復魔法を使い、バットを治療しようとしました、最初は全身をのたうち回るような激しい激痛で何度も気絶しそうになりました、それでも必死に我慢して何日も掛けてバットを治療したんです」
「治療を始めて数日後にバットは意識を取り戻し、体の傷も殆ど癒せました、背中に傷跡は残りましたが普通に動けるようにまで回復したんです」
「バットはなぜ私が回復魔法が使えるようになったのか聞いてきましたが、ある人が教えてくれたと伝えました、そして回復魔法を覚えた私は前回の反省からこれからは、後衛としてバットを支えると約束しました」
「その後は、ヒーラーとしての強化魔法を覚えたりして私は完全に後衛として転向しました、これが私が回復魔法を使えるようになった顛末です」
リナは考えた、師匠は攻撃と防御魔法に特化してるので回復魔法が使えないのも合致する、何よりも魔法契約で魔法を体に覚え込ませられる人は数少ない、その点も一致している、だけど何も考えずに、獣人族に魔法を教えるものだろうか、…いや意外に適当なところもあるからなんとも言えないが、その尻拭いをさせられてる気分だった。
「わかった、ありがとう、ヒーラとしての仕事は自分で望んでのことなんだな?」
「はい、その通りです」
ブライアの決意の高さと信念を聞き、この問題を解決してやろうと考えたリナはこれからの事を伝えた。
「まず、マナを分散させて、マナが体を通る時の負荷を大きく減らす魔法のリングを作るつもりだ、それで体の負荷が減るので殆ど痛みはなくなるだろう」
「そんな事が出来るんですか!?」
「まかせろ、引き受けたからにはなんとかして見せる、ちょっと彫金師に制作の依頼をして作って貰うので日数はかかるがな、しばらくこの辺に滞在できるか?」
「バットと相談してみます、たぶん大丈夫です」
「わかった、じゃあ私は今から彫金ギルドに向かうから泊まる宿と今後の予定が決まったら教えてくれるか、アイリィに伝言でいいから」
「わかりました」
部屋を出ようとした時、ブライアがヒーラーとして立ち回る信念を聞き、現在の二人の関係に疑問が沸きブライアに問いかけた。
「どころで、バットのことは好きなのか?」
ブライアはその言葉を聞き、少し頬を赤らめながら恥ずかしそうにモジモジとする。
そして自身の想いをリナへと答えた。
「はい、バットが好きです…私は獣人族、彼は人なので結ばれる事はかないませんが…あの内緒にしておいてくださいね」
「わかった、ありがとう、また連絡するから今日は帰ってくれて大丈夫だ、また後日会おう」
「わかりました」
ブライアを入口まで見送り、リナはその足で彫金ギルドへと向かったのであった。




