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10.『案件3』獣人族の娘と人族の冒険者の依頼

この作品はカクヨム先行で公開している作品です。

カクヨムのページはこちらです。

https://kakuyomu.jp/works/822139839209446983

頂点を示した太陽の陽が夕方に近づく頃、魔法屋タリスマンの扉が開き二人の来客が現れた、そのうちの一人は人間の大柄な戦士で全身を覆う使い込まれた鋼鉄鎧は、歴戦の汚れを刻み、背中には巨大な両手剣が下げられていた。

威圧的な存在だが茶髪で短髪の爽やかな感じの男性である。


もう一人は、黒いローブに長めのロッドを右手に持ち魔法使いの様な出で立ちをして体つきから女性だというのが解る、だが肌は少し濃いめで頭のローブは普通の魔術師より巨大で違和感があった。

アイリィは、二人の来客にいつも通りに挨拶をして迎える。


「いらっしゃいませ!」


戦士の男はお店に入ってくるなりカウンターに近づいて、文字通り”ドン”と音を立て手を付き店員の女性に声をかけた。


「ここで魔法の相談を受けてるってのはアンタかい?」


来訪した相手の目的が魔法相談だと聞きアイリィは店長を呼びに行くため、その場で待ってもらうように戦士へと促した。


「魔法相談ですね、店長を呼んできますので少々お待ち下さい」


「おう、頼むよ」


アイリィは、奥で新しいスクロールの開発をしていたリナを呼び出しに行き、魔法の相談が来てる事を伝えて、二人で店頭に戻ってきた。

リナは眼の前にいる戦士が依頼主だと理解し、単刀直入に相談内容を問いかけた。


「魔法の相談だって、どんな悩みだい?」


戦士の男は目的の人物と聞いてやって来たリナへ改めて確認を行う。


「あんたが店長さんかい?」


「ああ、そうだ」


「俺は戦士の『バット』、もう一人が『ブライア』だよろしくな」


「私がこのタリスマンの店長、リナリア・フローリアスだ、リナと呼んでくれていい呼称は不要だ、先程の店員はアイリィだ」


「よろしくなリナ、実は相談というのは相方のブライアの事なんだ、見てのとおりこの娘は獣人族なんだが、なんと回復魔法が使えるヒーラーなんだ!」


リナは初めて見る存在について少し驚きを持ってもう一度確認した。


「獣人族のヒーラーだって…?」


「ああ、そうだ珍しいだろ?ブライア見せてやってくれ」


そう言われるとフードをめくりブライアの顔が現れた、オレンジ色の髪と頭頂部にある獣の耳から獣人族だと言うのがハッキリとわかる、獣人族は険しい顔立ちが多いがどちらかと言えば優しそうな顔立ちで、耳意外は人と変わらない容姿であった。


現在、この世界に存在している獣人族は容姿こそ人間に似ているが違う部分も多い、特徴として頭部にあるケモミミ、それと尻尾があり、肉体の構造は人よりも遥かに筋肉密度が高く力が強い、学習という教育の土台がないため大体の獣人族は知能が低くどちらかといえば体を動かす物理戦闘に特化した種族だ。


そのため地域によっては肉体労働を主体とした奴隷として使われたり、冒険者に参加してもほぼ確実に前衛であるのが殆どである。


リナは考えた。

自分も結構生きているが、魔法が使える獣人族なんてものは聞いたことがない。

しかも、魔法職の中でもヒーラーは学習に加えかなりの適性が必要となる。

そんな人物が眼の前に来ていると聞いて少し驚きを隠せなかった。


「それで相談というのはどういう内容だ?」


バットは待ってましたと言わんばかりにリナに相談内容を語りだす。


「実はブライアが回復魔法を使う時になんだか辛そうなんだ、だからその原因と出来れば治してやりたいんだ」


その言葉を聞いて後ろに立っていたブライアがバットの服を引き止めようとする。


「バット、だからいいって私は大丈夫だから…」


しかしバットは聞く耳も持たず更に話を続けてくる。


「大事な仲間が辛そうなのを見てるとなんかこうモヤモヤするんだ!だから助けてやって欲しい!」


バットは深々と頭を下げて相方のために依頼を願ってきた。

リナは相手の話を聞き、まず自分の目で確かめようとした。


「バット、そこの血印用の針で指先をちょっと刺してくれ」


「ん、なんでだ?」


「ちょっと回復魔法使ってみて欲しくてな、ちょっとだけ傷を作ってくれ」


「わかったこれでいいか?」


バットは迷いなく血印用の針で指先に小さな傷を作り僅かに血が垂れる。

それを見てリナはブライアに回復魔法を使うように促す。


「ブライアと言ったか、ちょっと治療してもらっていいか?」


リナからの要求にたいして素直に応じるブライア。

杖を構えて呪文の詠唱を始める。


「『大地と水の精霊よ…その息吹をもって彼の者の肉体の調和を取り戻し、新たなる活力を結べ!ボディ・マナヒール!』」


リナは魔法を見て直ぐに精霊系の回復魔法を行使している事に気付いた。

だが相手の体のマナの流れを見て異変に気付く、ブライアの表情は平静を装っているのが感じられるが概ね理解した。


傷も浅かったので回復は直ぐに済んだが、今の魔法を見てどうすればよいか考えた。

リナは頭の中で大まかな費用を算出してバットへと伝える。


「だいたいの原因はわかった、もし治すならかなりの費用がかかるがいいか?」


バットはその言葉を聞き詰め寄ってくる。


「原因が解ったのか!?いったいなんだ!教えてくれ!」


「それを教えるにはまずブライアとの話し合いが必要だ、この問題に対処するためにかかる費用はおおよそ金貨二十枚だ」


「金貨二十枚だと!?なんでそんな費用がかかるんだ!?何か大きな病気なのか?」


「病気とかではない、簡単に説明するとこの問題を解決するため、オーダーメイドの装備が必要になる、だから費用もかかり、後はうちの手数料も含めての金額だ、どうだその費用を出す覚悟はあるか?」


バットは悩んでる、それもそうだ冒険者二人なら二ヶ月分の生活費に近い、大金を払ってまで相棒に対して費用を払うべきか、だが意外にも彼は即決した。


「よし!わかった頼む!」


リナはあっさりと承諾したバットを見て、相手が大事な仲間だと言うのがよく解る。

その心意気を見てこの問題をなんとか解決しようと思った。


「じゃあ、契約成立だな、とりあえず前金で出してくれ」


「ちょっとまってくれ、ブライア出してくれるか?」


「バットが決めたなら、わかった…」


ブライアは懐に忍ばせた袋から金貨二十枚を取り出しカウンターに置いた。


「アイリィ数えてくれ」


「…はい、確かに受領書は必要ですか?」


バットは自分たちにはそんな者不要という感じに断ってきた。


「いやいらないよ」


問題解決の契約が決まったところでリナはバットにこれからの予定を確認する。


「ところで今日の宿は決まってるのか?」


「いや、まだだが?」


「ちょっと話が長くなりそうだから、街をぶらつきながら宿でも決めてお店に宿泊先を伝えに来て欲しい、ブライアはちょっと残ってくれ」


「おう、解ったぜ!じゃあ、ちょっと行ってくるわ!」


「わかりました」


その言葉を聞いてバットは勢いよく表に出て行った。

残されたブライアは静かにその場に佇んでいる。


「じゃあ、バットに戻ってこられると色々面倒だから裏に来てもらえるか?」


「はい」


「アイリィ、店番そのまま頼むな」


「はい、わかりました」


店の裏側にブライアを連れてきたリナは椅子に座るように促す。


「まあ、リラックスして座ってくれ」


ブライアは自分の杖を左肩に乗せながら椅子にゆっくりと座る。

リナも同じく対面の椅子に座りブライアと正面を見据え面談をするような形になる。

そのまま相手を見据えて問いかけた。


「回復魔法使う時、体に相当痛みがあるだろ」


その言葉を聞いてブライアはハッとした表情でリナの顔を見る。

たったの少し回復魔法を使っただけで自身の問題に気づいて全てを見抜かれて驚きを隠せなかった。ブライアは問いかけに対して静かに答えた。


「気づかれたんですね…」


リナは更に畳み掛けるように獣人族と魔法について説明を始める。


「獣人族の肉体は筋肉密度が高いから魔法使いには向かない、強靭な肉体のせいで魔法を使う時のマナが体内を流れにくいからな」


「でもブライアの魔法の流れをみて解った、体の中でマナが窮屈な筋肉の中を這うような感じで押し出されてる感じだった、しかも回復魔法は自身の肉体を媒介として相手の体を癒やすから更に肉体に負荷がかかるはず」


「ということは体に相当な痛みを伴ってると思うがどうなんだ?」


ブライアはその言葉を聞き笑顔を見せながら気丈に振る舞う。


「もう慣れました」


リナは考えた、慣れたというのは確かにそうだろう、だが今でも相当な痛みが伴ってるはずだ、なぜ魔法を使うのか自身の中に生まれた疑問を更に問いただす。


「どうしてそうまでして回復魔法を使う?いや、何故回復魔法を使えるようになったのかそれも聞きたい」


リナの疑問に対して自身の中で考えるブライア。

そして、回復魔法を使う理由について語りだした。


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