何度と見飽きたプロローグ
流通においてトラックのもたらした恩恵はいかほどのものか。港を持つ都市では生活に彩りが届けられる。
かつて中世では北海と地中海において貿易ルートが開拓されたが、陸上での貿易ルートは古代よりローマ帝国が戦時利用にも使われるような道路を延ばしていたというのに、気付けば管理者がいなくなり荒れ果てたのだという。
道路が乱れれば交通が乱れるというのだから、何事も足場固めが大切なのだ。
我々が暮らす讃岐の地は、昔話で言うところの鬼ヶ島であり、かつて桃太郎が岡山から船で鬼退治へとやってきた。
しかしそれは四国全体の話ではなく、香川県高松市より北に点在する島々の一つという、非常に小規模にまとまっている。
鬼ヶ島こと女木島においては、かのバーチャルYouTuberである月ノ美兎が動画で紹介しているので割愛する。
ピーナッツくんやバキ童も訪れるんだから、嬉しいよね。
四国とは、本州から偉い人でも魑魅魍魎でもバーチャルYouTuberでも流れてくるという、流刑の最終地点であることをここに紹介したい。
閑話休題。
四国の中でもというか、日本全体で一番小さな県が香川県なわけだが、かつては愛媛と同じ県へと吸収合併した後に自治権を取り戻した実績だってある。
というか、両県を結ぶJRに揺られれば誰だって思う。間に森が挟まっていて、四国の東西の中でも愛媛が香川に歩み寄る気はまるでないだろとさえ思う。
今治から高松までの間隔離れすぎだろ問題である。そりゃ分離するだろっていうのは地理状況から見ても明白だった。
さて、そんな我らが讃岐の地においての道路交通網とは非常に整えられてる。
日本八天狗が一柱の白峰山相模坊に速さを魅せられた県民は、ひとたび車に乗れば我こそは天狗であると戯言を吹かして地を滑る。
天狗が走る地なのだから整えられてなくては無礼だということで血税は道路の整備へと使われた。
法律が許す限りの速度を追い求めてる県民性は、教習所で遅く走ることを許さないほどである。旅行に車で出向いた先で、お上品に走る車をバカにしていれば、事故率が全国でも下から数えられるくらいに悪い。
長い前振りになったが、そうして魑魅魍魎の流れ着く地で我々3人の男たちは、不滅の友情を誓ってトラックに跳ねられそうになった猫3匹の命と引き換えに挽肉と化した。
「やべ、俺は猫アレルギーだったこと忘れてた」
「それより、あの猫オスだったぞ。キャンタマ触っちまった」
「じゃあ奴の名前はオスカーだ」
遺言を戯言しか残せないやつらである。こうなることも必定だった。むしろ使命といって差し支えない。
犬でも猿でも雉でもない。ともすれば鬼の血を引く我らが、第二の猫島ともいえる鬼ヶ島から讃岐の地へと移り住もうとも、猫より大切に思う我が身など存在しないのである。
そのとき、不思議な声が響き渡った。
『はい、君たち異世界行きでーす』
流刑の地より、異世界へと渡る。