表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/28

下町での出会い


――――フィーロの隠れ家にお世話になって、2日が経った。フィーロは日中はどこかへ仕事へ出掛ける。その間私はフィーロにお願いして、繕い物をさせてもらった。刺繍くらいは……貴族令嬢のたしなみだもの。

でもフィーロはあまり持ち物を持たないようで、すぐに終わってしまった。


「脚は……だいぶ良くなった……から」

公爵家のみんながどうなったかだけでも……確かめに行きたいけど。


「フィーロに相談を……」

ここの場所が王都のどこら辺かも知りたいもの。


「……ロゼ?ただいま」

「お、お帰りなさい!」

するとタイミングよく、フィーロが帰宅したようである。


「なぁ、今日は飯屋に行こうぜ」

「ご……ご飯屋さん?」


「俺の飯よりも飛びっきり旨いからさ」

「フィーロのご飯も……美味しい」


「ははは。ありがとな。まぁ、でも。食ってみるのもいいんじゃねぇの?金の心配はすんなよ」

「でも……」

お世話になりっぱなしで、私はろくにお礼も返せていない。

「じゃぁ……繕いもんの礼ってのは?」

「全部……終わらせて……しまって……」


「じゃ、その礼ってことで」

「……っ」

ここは……お言葉に甘えてもいいのだろうか。フィーロに差し出された手をそっと取れば、フィーロが人懐こく微笑んでくれる。


「ついてきな」

「う……うん」

まるで下町出身の騎士たちのようなしゃべり方。でも嫌じゃないのは……彼らと交流して馴れていると言うよりも、多分……フィーロだからなのだろう。


そうしてフィーロと訪れた飯屋は、路地の先にあり、隠れ家と程近い場所にあった。周りも飯屋が多く、人通りも多い。だが所々に見える路地は、まだ私ひとりでは迷ってしまうかも。


「今日は2人、お任せで頼むよ」

フィーロに付いて来店すれば、フィーロの言葉に店の給仕が席を用意してくれる。


「奥座んな」

「うん」

相席が前提の大テーブルだからか、フィーロが壁側を勧めてくれる。

使用人たちが使うダイニングの大テーブルとも違う、本当に下町の飯屋。内装から家具、雰囲気まで……まるで違う。


やがて私たちの席に料理が運ばれて来る。


「お待たせしましたぁーっ!本日のお任せセットです!」

その声と共に、席に皿が置かれるのかと思えば、次の瞬間思っても見ない言葉を聞いた。


「ロザリアさま!?」

「……えっ」

私の……名前……?


「あ……いや、別人ですよね。つい最近まで勤めていたお屋敷の主に似ていたもので」

そう笑うオレンジ色の髪の彼女は……どこか見覚えが……。


「ディアナ」

確か、そうだったはず。

下町出身のメイドがいたはずだ。うちの門下の男爵家で経験を積んだからって、男爵家のお嬢さまの行儀見習いと共にやって来たはずよ。


「え……ほんとに……っ!その、取り敢えず料理を!」

ディアナは素早く皿を並べると、急いで厨房からもうひとりの赤毛の少女を連れてきた。


「ロザリアさま!」

泣きそうになりながら駆けて来たのは、ディアナの元々の主人のレベッカである。


「レベッカ……!あなたまでどうしてここに……っ!?」


「それが……っ」

レベッカとディアナが顔を見合わせる。


「ま、とにかく。お前らも座れば?店長だって少しくらいは大目に見るだろ」

そうフィーロが言うと、ディアナが渋そうな表情をする。


「ロザリアさまがあなたと一緒にいるのが一番不穏なんだけど」

ディアナもフィーロのことを知っているのかしら。でもフィーロと一緒にいると……不穏……?

むしろここ数日、穏やかすぎるくらいだったと言うのに。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ