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イグナルス帝国


――――イグナルス帝国の帝国城に入ると、私たちはまず宿泊先の離宮に辿り着いた。

式典は明日だけど、今から準備しておかないと。

――――と、そう思っていれば、馬車から降りた瞬間明るい声が響いてくる。


「ようこそ、イグナルス帝国本土へ!待っていたよ、我が弟よ~~、そしてロゼちゃんもっ!」

にっこにこの笑顔で迎えてくださったのは皇太子殿下とその妃殿下である。


「ち……っ、うるせぇのが来たな」

ひぃっ!?フィーロったらなんてことを……っ!


しかしその瞬間、フィーロは妃殿下からパシンと頭を叩かれていた。


「し、失礼いたしましたっ!」

慌てて頭を下げれば、妃殿下がふふふと笑う。


「いいの、いいの。フィーロさんはいつもこうなんだから」

妃殿下は特に気にしていらっしゃらなさそう……?


「そうだねぇ。でも弟が冷たくてお兄さま悲しい。うっうっうっ。ロゼちゃんはかわいい義妹でいてねぇ……っ」

そして皇太子殿下はそれ、嘘泣きですか……?涙全く出てないどころか出す気のない嘘泣きである。


「まぁそれはそうと」

そして唐突に終わる嘘泣きタイムに妃殿下が呆れてるのだけど……っ。皇太子殿下って昔からこんなキャラだったかしら……?最初に会った時は私は緊張で泣いてしまったからよく覚えていないけど。外交の席にはもう何年も出ずに机仕事だけだったのよね……。


「まぁまぁ、どうぞ、離宮の中へ。滞在中は好きに使ってよ」

皇太子夫妻から直々に案内してもらえるとは。新参者としてはありがたい限りであるが、もちろん新参者全てに……と言うわけはないのだ。


離宮の応接間に落ち着けば、ひと息つけるようにと紅茶と菓子を出してもらえた。

レベッカたちにも交代で休むように指示し、私たちは暫し歓談と相成った。


「あの、皇太子殿下」


「うん?どうしたんだい?ロゼちゃん。帝国のことなら遠慮しないで何でも聞いておくれよ――――っ!」


「ええと……その、私が皇太子殿下と初めてお会いした時のことなんですが……」

「あぁ、あの時ねぇ。幼いロゼちゃん、すっごくかわいかったねぇ。ほっぺなんてぷにぷにで、お義兄さまはふにふにしたかったなぁ」

お……お義兄さま……!?いや、まぁ、フィーロと結婚した以上は確かに義理の兄ではあるのだけど。

ケラケラと笑う皇太子殿下のことをフィーロがギリと睨んだ気がするのは気のせいだろうか……?


「その、時のことで」

「うん?」


「あの……私、泣いてしまって……不快な思いをさせてしまい、ずっと謝りたくて……」

「……」

そのことを伝えると、皇太子殿下は少し口を閉じたあと、またにこりと微笑んだ。


「ロゼちゃんのせいじゃないさ。大人だらけのパーティーの場で恐くなってしまうのは仕方がないよ」

「皇太子殿下……」

やっぱりお優しい方だな。


「そうよ。泣かせたあなたが確実に悪いわ」

――――と、その時、皇太子妃殿下から容赦のないひと言が……っ。

「そうだそうだ。この冷血漢」

しかもフィーロまで……っ!?しかも……冷血漢って何だろうか……?全くイメージが湧かないのだが!?比喩か……それとも兄弟ならではの冗談のようなものなのだろうか……?


「酷いなぁ。あっははは」

皇太子殿下はまるで気にされていないようだけど。


「今は楽しそうにしていて何よりだよ」

「こ、こちらこそ……っ!ありがとうございます!」

「俺と結婚したんだから、当然だ」

そして当たり前のように腰を抱き寄せてくるフィーロに自然と笑みが漏れでた。



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