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フィーロの願うもの


大神殿での女神さまとの対話を終え、今後の大神殿のことを含め大神殿の中を視察をして城に帰って来た頃には。バルコニーからうっすらと西陽が射し込んでいる。


そう言えば……フィーロと出会ったのも夕暮れの時間だった。夕暮れはヴィータの象徴。

もしかしてだけど……見守っていてくださったのかしら。

動くことのできない女神さまの……代わりに、この地上を。


「フィーロ、ヴィータは今までどこにいたのかしら」

「ん……?気になるのか?」


「……うん、昔、ヴィータの伝説を聞いて、ずっとどこにいらしたのだろうって」

女神さまの弟、しかしその半分が人間であり、地上に根付く神。

だがその身に宿す力は破壊の力。それを恐れた地上の人間たちによって追いやられてしまった。

本当は女神さまのために力を奮ってくださるほど、優しいのに。


「ヴィータの人間の方の血族や支持するものたちが、秘密裏に隠して祀っていたんだ」

そうか……半分人だから……人間の方の血族はいるわよね。


「もしかして……」

「俺の母親がその末裔だ」

そう言うことだったのか。ヴィータもひとりじゃなかったのね。


「これからは……きっと女神さまとも一緒にいられるわね」

「かもなぁ」

何せ女神さまを救ってくれたのだ。大神殿としても神話の片隅にいたヴィータを追いやるような極端な思想のものはいなさそうである。

そしてそれらにはフィーロもどこか嬉しそうだ。フィーロとしても身体を貸す以上ヴィータには愛着……みたいなのがあるのかしらね。


「……そう言えば、フィーロの手に入れたかったものも、ちゃんと手に入った?」

「……」

あれは結局どうなったのだろう……?


「フィーロ?」

フィーロの顔が近い……?


「その、フィーロ……?」

「あぁ、ちゃんとここに」

そう言うと、フィーロの唇が重なってくる。


「あの……、どう言うこと……?」

「お前は天然か」

「え゛……っ」


「俺はずっと、ロゼが欲しかったんだ」

「……でも……政略的な……」

「それはより確実なものとするための口実」

そんな……その……ほ、本当に……っ。


「ロゼ、顔が真っ赤だ」

「それは……っ」

フィーロがあんなこと……言うから……っ。


「何で……私、だったの……?」

「覚えてないか?まだ先々代の宰相が生きていた時にさ。俺もこっそり兄貴たちについてってさ……兄貴たちの勧めで、旧王家のやつらへの挨拶は遠慮したけど」

挨拶しないことを勧められるとか、やっぱりあいつら相当よね。ジルクたちがフィーロを知らないのも無理はなかったわけだ。

だってむしろ会わないようにしていたんだもの。


「兄貴が当時の宰相の娘を泣かせなから、俺があやせって兄貴に無理強いされたの」

「それって……その……皇太子殿下とお会いした時の……っ」

皇太子殿下が恐い……とかではなく、大きなパーティーで、緊張して泣いてしまったのだ。でもお父さまもずっと側についているわけにはいかなくて……そして、同い年くらいの子が一緒にいて……。


「あれ、フィーロ!?」


「何だ、やっと分かったか?それから、ヴィータが気になると言うからこの国を探ってたら、またロゼを見付けた。だから……この国でのロゼの立ち位置も知ったから、それなら俺がロゼを幸せにしたいと思った」


「ん……んもぅ……っ、教えてくれれば……」

フィーロはやはりずっと私を……。あの追放された時だって……!


「気付いてくれるのも楽しみにしていた」

そう、フィーロがからかうように笑う。


「い……いじわるっ」

「わ、悪かったって。怒るとは……」


「ご、ごめんなさい……っ!そう言う意味じゃなくて……その……びっくりしたけど、でも……フィーロと出会えて、結婚できて……私、幸せよ」

「ロゼ……うん、俺もだ」

フィーロが優しく抱き締めてくれる。

うん。ここが私の、一番安心できる場所だ。


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