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ヴェナトール公爵邸


――――ヴェナトール公爵邸。

そこはジルクとメアリィのものになってしまった。だけど……。

王城が完全制圧される裏で、こちらも手を打ってあったそうだ。

そしてたどり着いた公爵邸で出迎えて待っていたのは。


「ダリル……!」

その顔を見た瞬間、ついつい感極まって抱き付いてしまった。


「ご無事でなによりです、ロザリアさま」

「ダリルこそ……!みんなも……!」

下町で再会した顔もあるが、会えなかった顔もある。門下や親戚の貴族の元に身を寄せていたものたち、それからダリルを含めこの邸に囚われていたものたち。


「我々は無事です。そして……逆賊は追い詰めております」

逆賊……この状況では確実にジルクとメアリィね。


「でも大丈夫だったの……?ジルクが連れてきた近衛騎士やメアリィの聖騎士がいたはずだけど」

「帝国や門下の貴族の助力もあり……それから」

それから……?


「来てみれば分かる」

そう、フィーロが告げる。

来てみれば……とは?それにフィーロは公爵邸に初めて脚を踏み入れると言うのに、まるで方向が分かっているかのように進むのだ。


そうして案内されたのは、公爵邸のとある広間。お父さまが亡くなられてからはパーティーも茶会も開いていないから、ここは余計な調度品などは片付けていた。じゃないとメアリィが忍び込んで荒らすんだもの。


思えば毎日パーティーだの茶会は開かないのか、出席したいとほざいていたっけ。


平民のあなたがなぜパーティーや茶会に出席するの……?もし聖女としてだとしたら、それは神殿に頼めばいい。まぁ質素倹約、神のために仕えるべき場所が聖女をパーティー三昧したら確実に信徒たちから不満が出るけれど。


そしてそのパーティーホールの真ん中で縮こまるのはジルクとメアリィである。

彼らが連れてきたとされる近衛騎士やら聖騎士やら使用人は既に隅っこで拘束されて避けられている。

そしてそれらを取り囲むのはうちの騎士と、それに混じって……。


「あなたたち」

「ロザリアさま。その節は大変なご無礼を」

私の前に跪いた4人の騎士は神聖騎士の彼らである。


「ふーん……俺はまだ根に持っているが」

「こら、フィーロ」

ぺしりとフィーロを叩けば、神聖騎士たちが仰天したように私を見る。あ……一応皇子さまなのよね、フィーロって……!あ、でもそんなに気にしてなさそう?後ろでエレミアスが吹いていたけれど。


「ちょっと、どういうことよ!何でここにロザリアがいるの!ここは私のお屋敷のはずよ!」

そう叫んだのはメアリィだ。

「そ……そうだ……!ここはぼくの公爵家のはずだ……!」

ジルクも負けじと吠える。


「いいえ、ここは私のものです」

ジルクの吠える声に、いちいち脅えていたこともある。メアリィのヒステリーに脅えて何度ダリルに弱音を漏らしたことか。

本当に、この邸のみんながいなければ私は……。だけど今は違う。


「そして先ほどランゲルシア国王、王妃、王太子、宰相は処刑されました」

その言葉にさすがの2人もピタリと固まった。


「お……お前、謀反を企んだと言うのか!せっかくよくしてやったのに……この裏切り者め!」

「どこが!あなたは都合が悪くなると怒鳴りちらして、その上浮気して私を捨てただけじゃない!」

私の予想外の反撃に、ジルクが押し黙る。しかしすぐに口を開けて叫ぶ。


「ろ……ロザリアのくせに……生意気だ!」

そう言うあなたは一体何様なのだろうか。ここで大勢の騎士たちに囲まれて、刃を向けられているのに。


「ここまで言っても状況が分かっていないようだな」

「はぁ……?誰だ貴様は!」

王子のくせに、執務を当時婚約者だった私に丸投げであったジルクは知るはずもない。何せ今まで他国であったランゲルシア王国ではほとんど知られていない帝国の皇子。

外交にでも出ていたら、年が近いし知り合えたのかもしれないが。

私はそのような場に立たせてもらったこともなければ、皇太子殿下のまさに言うとおりで、外交で我が国を訪れるとしても皇太子殿下から第3皇子殿下までが妥当だったのだ。それから第1皇女殿下……。そしてフィーロが無知なジルクのために告げる。


「イグナルス帝国第11皇子フィーロ・イグナルス。これは謀反ではない。ランゲルシア王国はイグナルス帝国の属国となったのだからな」

確かにそれだと謀反にはならないわね。少し苦笑してしまった。しかし当のジルクはまだ状況を呑み込めていない様子であった。





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