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ランゲルシア王国の滅亡


――――その日、ランゲルシア王国城は包囲された。


私がフィーロとエレミアスと共に王都の門をくぐった時既に、多くの騎士たちが集い、武力を持たぬ一般の民衆はシェルターに避難、誘導を冒険者たちが担っていた。


「どういうこと……?」

まるで準備は全て終えていたと言わんばかりのあっさりとした落城である。


「多くの貴族が賛同したってことだ。まぁ、賛同しなかった貴族は今後間引くが」

しれっと恐いことを言ったフィーロだが、賛同しないと言うことはつまり今の国王陛下を推すと言うこと。それはさすがに看過できまい。


「帝国軍も紛れてたのね……」

「ロゼだって分かっていたろ?王国の弱体化を」

こんなにも帝国軍を率いれるほどに……。しかしそれなら……。


「うちの騎士団は……」

「王都は抜け穴ばかりだ。入り込もうとすれば入り込てる。俺みたいにな。だがヴェナトール公爵領は最大の難関。ここを突破するのが一番骨が折れた」

「でも、突破したのよね」

ほぼ、無傷で。


「でも、どうやって……?」

「ロゼを無事に連れ帰って来ることでだ」

それで……副団長はあの時……!


「そして前公爵の娘であるロゼが、王妃となるのならと、ヴェナトールは協力した。それからはヴェナトールの監視がなくなったから準備がしやすい上に、賛同する貴族も増やせた」

「でも、みんなこうもあっさりとランゲルシア王家をみ限ったのは、どうして?」

「前宰相が不慮の事故で亡くなった時から、恐らく皆の意思は決まってたのさ。あの事故には不可解な点が多かった」

それは私も分かっていた。しかし王家が問題なしとしたのなら、そう納得するしかない。しかしそれに納得しない……お父さまを信頼していた貴族たちが多かった。そしてお父さま亡き後に宰相に登り詰めた男は……まさに賄賂人事と言わんばかりの体たらく。


「そして前宰相の娘がこの国の王族として残るのならと納得した」

本当に……お父さまが遺してくださった功績と信頼のお陰で、私は今ここにある。あの時皇太子殿下の前で宣言したのは……間違いじゃない。


そして王城の門の前には……。


「トール!」

騎士団長のトールだ!


「良かった……無事で!」

「もちろんです。ほかのものたちも……公爵家に残ったものたちも、無事です。ダリルから報せが届いておりますよ」

「うん……っ」

私が頷けば、トールは次にフィーロを見上げる。


「あなたが……」

「あぁ。フィーロ・イグナルスだ」


「姫さまをお守りいただき、感謝にたえません」

「無論だ」


「ですが……」

トール……?


「泣かせたら承知しません」

そのトールの言葉に、エレミアスが本気で吹いていた。

エレミアスの頭をペシャリと叩いたフィーロは、トールに向き直る。


「泣かすわけねぇよ。毎日笑顔にしてやっから」

「……うん、フィーロ」

どうしてかフィーロとなら……と思えたのだ。

トールは少し驚いた顔をすると、一拍置き、真剣な面持ちに戻る。


「城内は大方制圧済みです。残りは王族や一部の高官たちが玉座の間に立て込もっておりまして。宰相もそちらに」

あの腹の肥えた宰相か……。ぶっちゃけ言って、苦手なタイプだ。お父さまが生きてらした頃は、庇ってくださったが……。いや、今はフィーロが一緒にいてくれる。恐れるものか。突き進め。


「さて、勝負の時だ」

「……うん、フィーロ」

一緒ならきっと、行けるから。




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