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私を嫌った街

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

店主が出てくるバッドエンド。

古い物を愛する彼的に、やっぱり受け入れ難いものもあるんだと思います。

花咲く季節に花見に訪れると、華やぐ為に多くの人々が盛んになる。露店や蚤の市、大道芸なんかがいい例で、祭りに花を添える。

私はそんな露店で飲めるわらび餅なるものを啜っていた。下に沈んだ、とろけた餅の上に抹茶ミルク。力を込めて吸引すると、そのとろりとした食感に目を見張る。結構美味しい。

お天道様が陰り出すこの時間にカップを翳すと、底に沈んだ氷が輝いて、なんとも風情ある世界を描きだす。

そう、一人浸っていると、一人の青年が声を掛けてきた。

「待たせたね」

はんなりとした顔に丸眼鏡。今どき珍しい書生服であるが、この街に馴染んで溶け込んでいる。

さすが文芸が色濃く残る街。この様が、この服装が、全てを容認する。

私は目の前に佇む彼を見ながら、残りを全力で吸引すると、黙って立ち上がる。骨董品店の店主というのは、自身も人から愛でられる様でなくてはならないのか。

「古書の街に行くん?」

「いんや。爛れた夕陽の灯る街に戻るよ」

「あー......」

店主が拠点としているのは夕暮れの街。一昔前の風情ある下町をそのまま残した様な街。私も好き。とても好き。ただ街を行ったり来たりするだけでも満たされる。

でもあの街は私が嫌いなのだ。行くと必ず爪弾きにされる。それはどれだけ私が思っても、くつがえし様のない事実だった。

「行きたくないなら無理にとは言わないよ」

「いや、うーん......いく」

「そう」

何もしなければいいんだ。何か買ったり、飲み食いしたり、そういうの全般。そうすればきっと何も起きない。そう思って、私は彼の後を着いていく。戻ろう。店主が帰るべき場所へ。


久方振りに訪れた夕焼けの街は、相変わず私の心を擽って止まなかった。古くなった木造建築や、老舗の街が立ち並ぶのを見るだけでも満たされる。この懐かしさが好きだ。愛おしいと思う。けれどもこの街は私を嫌うから、出来うる限り刺激してはいけない。

彼の真横を歩く様にして、ふらふらと彷徨い歩くと、軒を並べた店の中に、ぼっこりと抜け落ちた穴を発見した。解体された後のようで更地になっていた。

「新しくなってる」

「そりゃ勿論。需要がなければ存続が難しい。それは店も物も同じだねぇ」

彼は飄々と言ってのける。その更地をあまり見たくない様で、頑なに目を逸らし続けている。なんなら、私を置いてその場を去ろうとしたぐらいだ。

今にも歩き出したそうな足を見て、私から歩みを進めた。そういや昔、たこ焼き屋があったっけ。ふわりん、ふわりんした生地に大きめのブツが入ってたあの店。

少しでも気を紛らわしたくて、口を開く。

「あのさ、此処のたこ焼き屋、何処にある?」

すると彼は身を強ばらせて固まった。あまり言いたくないと言うように、視線を泳がせた後、溜息を着いて口を開く。

「閉店しちゃった」

「え?」

「さっきの更地、見たでしょ? あれ、元々たこ焼き屋があった場所」

息を飲む。何故あの時、店主の反応から考察出来なかったのか。でも今私が出来るのは、ただ謝罪をする事だけだった。

「......ごめん......」

「気にしないで」

彼は来た道とは逆方向を頑なに見つめていた。現実を受け入れたくないと言う様に。だから、その表情はよく見えなかった。爛れた夕陽の灯る街。私が愛し、私を嫌った街。今日は、彼をも道連れにした。

どれだけ想っても、叶わない事は勿論あるもんで。

土地って、その点顕著ですからね。

人間の方がまだオブラートに包んでくれます。


街並みも雰囲気も好きだけど、行くと必ず何かに障る。

何もしなければ大丈夫だと思っていたけれど、そんな事はなかったという話。


暗い話ばかりなので、軽い話でも。

その街をぶらりんちょしていたら、店主の顔が浮かんだんですよ。

想像してみたら、親和性がえげつなかったです。

お前は此処から生まれただろ!!

という感想。


『君も見られる為にいるよねー』なんて話したら、

『いやいや〜?(ヾノ ̄▽ ̄) 僕よりもこの子達見ながら、肴にしてよ』と帰って来そうです。

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