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08




 しばらくの間、挙動不審な蓮の姿を眺めていたが、思いっきりため息をついたあと、私に「ちょっと母さんこっち」と言われ、リビングの外の方へと連れ去られる。


「ちょっ!?お客さんいるってば!」

「いいから!」

「えー……」


 蓮の言葉にお客様であるミラとレオの方へ視線をやるが「どうぞ」と目配せをしてくれるため、頭を下げ私は蓮に黙って従うことにした。

 リビング――ともいい、ミラ達から離れた途端、蓮は私を思いっきり睨み付ける。


「な、何よ」


 私も負けじとにらみ返すが、蓮は一切怯えた様子もなく私に人差し指を向けると、強気な声でありながらも小さな声で話し始める。


「いいか、母さん。母さんが思ってるような話じゃねぇんだよ、さっきの!」

「……さっきから濁した言い方だけど、何が?貴方が異世界で、あのミラさんってことけっ「だから!それが違う!」え?」

「それが違うんだよ!」

「えー……?でも、あの言葉ってそういうことにしか読み取れないんだけど……?」

「それでもだ!……いいか?母さんが考えているようなことじゃねぇの!絶対!」

「えー……」


 蓮の言葉に私はミラ達が先程言っていた言葉を思い出すが、やはりそれにしか聞こえない。

 それでも、蓮は何度も「違うんだって!」と言ってくるため、そろそろ面倒くさくなり適当に「わかったわかった」と頷く。

 蓮は私が適当に頷いているのがわかっていただろうが、ミラ達を待たせるのは悪いと思ったのか、「……信じるからな」と言いリビングの方へ戻るため踵を返した。


 ……どうやら話は終わったようだ。


 私も慌てて蓮を追いかけるようにリビングの方へと戻れば、ミラはのんびりとお茶を楽しんでおり、レオはほんの少しだけ何かを気にしているようだった。

 すると、蓮はそんな二人に声をかける。

 

「悪い、待たせたな」

「! いいえいいえ!お母様との久しぶりの再会ですもの、お気になさらないでください。……では、えっと、お話を再会しても?」


 私達が戻ってきたことにミラは気がつくと私の方に視線を寄越す。その視線に答えるように私はコクリと頷く。


「では、話の再会を」


 コホンっと一つ咳払いをするとミラは話を再開する。


「……先程、ハス様と深くお付き合いしていくことにご理解いただけた限りで、私共は嬉しい限りです。……本当はお別れする前の時間を長く過ごしていただきたいのですが、我が国も危機的状況。つきましては、明後日、こちらの時刻で言う14時頃に、ハス様をお迎えに上がります」

「……ん?」

「? いかがなされましたか?」


 ミラの言葉に違和感を覚えた私は思わず首をかしげてしまう。


「いや、魔王退治終わったのに危機的状況って……?あと、お別れの時間って?それにお迎えにくる……?」

「……」


 私が何となく思ったことを口にすると、ミラは目を閉じて黙ってしまった。

 まさか、聞いてはいけないことだったのだろうか。いや、そんなはずはない……はずだ。

 黙ってミラの方を見ていると数十秒後、何かを決意したように私を真っ直ぐ見つめ口を開く。


「ハス様には……これからやってくる“初代魔王”を倒していただきたく――我が国に永住していただこうと考えております」

「は?……何、言っているんですか?」

 

 突拍子もない発言に思わず声が低くなる。


「いや、いやいや。何をおっしゃるんですか!永住って、それじゃあ、私達は二度と蓮に会えないってことですか!?」

「……二度と、と言うわけではありませんが……会える保障は現時点ではなんとも言えません」

「な、なんとも言えませんって……!それに、魔王は倒したんですよね?それなのに、なんしたっけ?初代魔王?はっ、そんなの言っていたらキリがないじゃないですか!あと、魔王退治って危険は無いんですか?私の中で、魔王退治って命を落とす危険性があると思っているのですが、どうなんです!?まさか、うちの息子を死地に送るわけじゃありませんよね?」

「……それ、は……」


 私の言葉に、ミラは苦悶の表情を見せ俯いてしまった。けれど、無言ということはつまり――。


「魔王退治は、危険が伴うんですね?」

「は、い……」


 ミラはきゅっとテーブルで手を握りしめた。

 何だか私が悪者のように感じるが、それどころではない。


「でしたら、ちらは断固として許可できません。どうぞお引き取りください」

「! お、お待ちください! 勇者様のお母様のご不安は計り知れないと思います。ですが、我々もハス様を最大限安心して過ごして頂けるよう、しっかりとバックアップしていく所存です。それに魔王退治の時も、必ずハス様が少しでも戦いやすいように全面的に協力するつもりです!」

「へぇ?」


 ミラは必死に私を説得してくれているが、私はどうしても納得がいかなかった。それにずっと引っかかっていたことがあるのだ。


「では、それだけしていただけるということは、蓮は絶対に死ぬことはないんですね?」

「っ、あ、の……それは……」


 私がそう問いかければ、ミラは黙ってしまった。

 息子が死ぬ可能性がある以上、私としては異世界に行くこと、ましてや永住なんて認めることは出来ない。

 ミラとレオにお帰り頂いただこうと口を開こうとした瞬間、それより先に今まで黙っていた蓮が席を立つ。


「……蓮?」

「母さん。悪いけど少し黙って」

「は?あんた何言って……!」


 蓮の態度にお客様がいるのにも関わらずいつものように声をかけてしまうが、蓮は私の言葉を遮るように、少し強い口調で声を出す。

 

「レオ、そろそろ時間だろ?後は俺に任せて」

「……一人で大丈夫なのか、ハス」

「ん。任せろって。ミラも悪いな、こんな役割押しつけちゃって。あとはなんとかするから、早く城に戻って他の人達を安心させてやってくれ」

「ハス様、ですが……!」

「大丈夫。だから、ほら」


 蓮がそういうと、二人を立たせてリビングを後にしようとしている。


「ちょ、蓮!?何を勝手に……!?」

「母さん!」

「な、何」


 慌てて蓮の行動を咎めようとすると、蓮が一際大きな声を出して私を威圧する。


「二人共、帰る時間だから見送ってくる。その後で話の続きしよう。……じゃ、レオ、ミラこっち」

「ちょっと!?」


 二人を元の世界に帰そうとする蓮の姿に声をかけるが、蓮は私の声を無視してリビングを後にした。


 ――一人残った私は、ただ蓮が戻ってくるまで黙って待っていた。


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