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後ほど手直しする可能性あります。
子供達が一度帰ってきてから三日も過ぎたが、あれから子供達は帰ってきていない。
子供達と会えたその日。
私はすぐに零と相談し子供達の捜索願を取り下げた。子供達の言葉を信じ、すぐに帰ってくると思ったからだ。けれど、子供達の言葉は嘘だったのか、特に帰ってくる気配もなく三日も過ぎてしまった。流石の私もこの状況に、心配のあまり子供達の幻覚を見てしまったのではないかと自分を疑っている。自分自身の疑いが拭えず、零に「もう一度捜索願を出した方が……」と打診したことがあったが、私の不安を取り除くように「大丈夫。我が家に今までなかったモノ、蓮から貰った宝石のようなモノが子供達が一度家に帰ってきてくれた証拠だよ」と言ってくれた。零の優しさに心が救われるもの、どこまで自分を信じていいのかは、いまいちどよく考えなくてはならない。
兎にも角にも、未だ子供達は帰らない。本当に異世界とやらに行ってしまったのだろうか。それともあの日見た子供達は幻覚だったのだろうか。
不安を抱えながらも、あえていつも通り零を見送り家で過ごす。
朝ご飯を食べ、一人リビングで掃除をしながらもぼんやりとしていると、2階の蓮の部屋から「ガツンッ」と何か落ちる音が聞こえた。前回の音とは違い、何か金属のモノが落ちたような音だ。何の音だろうと不思議に思っていれば、次第に蓮の声がぼそぼそと聞こえ始める。
その瞬間、私ははじかれたように蓮の部屋へと向かう。
あまりにも慌てていたせいで階段で転びそうになったものの、なんとか階段を登り切り蓮の部屋の部屋の前にたどり着く。先程よりも蓮の声が鮮明に聞こえる。元気そうでなによりだ。
一度、深呼吸をしてから蓮の部屋を勢いよく開ける。
「っ、蓮!いままでどこ…………え!?」
「げっ……!」
「あら?どちら様ですの?」
「お嬢様、お下がりください」
蓮の無事をいち早く確認するためにもノックもせずに部屋を開ければ、そこにいたのは蓮だけではなかった。蓮の他に二名、一度も見たことのない人達がいた。一人は銀色の髪を持つお姫様のような格好をしている綺麗な女性、もう一人はその女性を守るように剣を抜く蓮と同い年ぐらいの男性だ。剣を抜いた男性は、一歩前に出るとその剣先を私の方へと向ける。突然の出来事に思わず「誰!?お友達!?え、剣!?」と蓮の方を見れば、慌てた様子で口を開く。
「なっ、ちょ!?おい、やめろレオ!」
「……」
「無視するなって……!」
蓮に”レオ”と呼ばれた男性は一向に剣を下ろすことはなく、緊迫した空気が流れる。
見知らぬ人に剣を向けられている状況に何も出来ないでいれば、銀髪の女性が止めに入ってくれた。
「レオ。おやめなさい」
「っ、ですが!」
「レオ」
ぴしゃりと女性が言えばレオと呼ばれた男性は剣を下ろし、渋々……といった様子で女性の側へと戻る。
女性は私の方へ視線をやれば、ふわりとスカートの裾を持ち上げる。それはさながら、童話に出てくるようなお姫様なようだった。
「従者が失礼な態度を取ってしまい申し訳ありません。ご挨拶が遅れました。私チレイレッツ国の第一王女、ミラ・コートリエと申します。こちらは私専属の騎士レオです。……失礼ながらハス様のお母様でいらっしゃいますでしょうか?」
「……あっ、えっご丁寧にありがとうございます。えっと、はい。私が蓮の母です」
「ハス様にはいつもお世話になっておりますのよ」
綺麗な所作に思わず見とれて言葉が遅れてしまったが、「ふふっ」と人当たりがよさそうにミラが微笑んでくれたため、私もつられて笑みを浮かべる。
緊迫した空気から和やかな空気が流れ始めたモノの、私は先程のミラの言葉に疑問があった。それは、先程ミラが言っていた出身国らしき名前、チレイなんちゃらについてだ。正直、地理や世界史はあまり得意な方ではないが、そんな国は一度も聞いたことがない。いや、別に授業中寝ていたとかそういうことではなくて。
思わずチラリと蓮のほうに「どういうこと?どこの国?」と視線を向ければバツが悪そうに逸らされる。いや、逸らすんじゃなくて何か言って欲しいのだけれども。
しばし和やかな空気だったが、突然レオが怒ったような声音で私を呼びかける。
「……おい!」
「な、なんでしょうか?」
「……」
若干上ずったモノの、レオの声に答えればなぜか睨まれる。
……訳が分からない、なぜ睨まれているのだろうか。
助けを求めるように二人のほうを見ればミラはと頭が痛そうに額に手を添え、蓮は頭を抱えていた。
その反応から、レオが普段二人を悩ませているのがうかがえてしまう。
思わず苦笑してしまうが、レオはそんな私の態度が気に入らないのだろう。眉間の皺が深くなる。
しばらくすると、頭を抱えていた蓮がゆっくりと口を開く。
「母さん。……悪いんだけど、リビングで話しても良い?」
「……エッ!?今!?」
「うん」
予想していなかった言葉に思わずたじろいでしまう。
別に彼女たちをリビングに案内したくない訳ではない。リビングの掃除はしてあるし、いつでもお客様が呼べる状態ではある。
けれど、なんとなく。なんとなく、彼女たちをリビングに通してしまったら、何かが良くない方向に変わってしまう気がして素直に頷けなかったのだ。
しばらく無言が続いてしまったものの断ってしまえば感じが悪いと思い、ゆっくりと頷く。
「…………じゃあお母さん。先にリビングで飲み物とか用意してくるね」
私がそういえば、蓮は「ん」と頷いてくれる。部屋にいる二人にもぺこりとお辞儀をして部屋を後にすればミラは手を振って見送ってくれた。
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