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03

主人公ばっかりです


 そして翌日。


 目が覚めると、子供達が学校に行く時間が過ぎた時間に起きてしまった。


「嘘、寝坊した!…………あっ……」

 

 慌てて飛び起きるが、子供達が昨日帰ってきてないことを思い出す。

 恐る恐るスマホを見るが、連絡は入っていない。

 

 ……無事に学校に行ってくれていればそれでいい。

 とにもかくにも、顔を洗うため洗面所に向かうと、タイミング良く固定電話の着信音が鳴り響く。


 慌ててリビングへ向かい、子機を手にして出る。


「はい、もしもし」

『あ、もしもし。彩葉さんのお母様でしょうか?』

「そうですが……」

『私、彩葉さんの担任の佐々木と申します』

「あ、先生!いつもお世話になっております。今日はいかがなさいましたか?」


 電話をかけてきたのは彩葉の担任、佐々木さんだった。もしや、娘に何かあったのだろうか。不安に思いながらも、先生の言葉を待つ。

 

『あぁ、いえ。彩葉さん、今日も学校に来られていないので何かあったのかと思い……』

「えっ?」

『昨日はお休みすると彩葉さんの友人から伝えられましたが、今日は特にご連絡がなかったので。お母様にお聞きしたくご連絡いたしました。今日も彩葉さんはお休みでしょうか?もしや風邪でもひかれましたか?………………お母様もお忙しいとは思いますが、お休みをする際はご連絡を頂けると幸いです。では、こちらで失礼いたしますね』


 彩葉の担任の先生はそう言うと、私の言葉を待たずに電話を切ってしまう。

 私は状況が飲み込めず、子機から耳を話す事ができない。

 無機質な音だけが私の耳に届く。


 彩葉が学校に行っていない。


 一体、どういうことだ。

 だって、彩葉は昨日ちゃんと制服を着ていたし、弁当も持って行っていた。それなにの、それなのに。


 もしかして――と、嫌な考えが巡り、冷や汗まで流れてくる。

 脳が理解を拒み、しばらく立ち尽くしていると、「ただいまー」と気の抜けた零の声が聞こえる。


「疲れたーって、あれ?みふゆ?」

「……れ、い」

「っ、どうしたの?顔真っ青だけど」


 零は私の様子が変だと気がつくと、身体を支えてくれる。

 

「みふゆ、大丈夫?話せる?」

「う、ん。……あのね」

「うん、なに?」


 優しく聞いてくる零に私はありのまま答える。

 「彩葉が昨日から学校に行っていない」そして、「子供達から連絡がきていない」と。


 零は私の言葉を聞くと、すぐさま状況を理解し、警察に連絡をしてくれる。

 私はそんな零をただ見ていることしか出来なかった。


 零は警察への連絡が終わると、私をソファに座らせる。


「みふゆ、僕は今から警察署の方に行ってくる」

「わ、私も……!」

「ううん。みふゆは少し休んでて」

「でも……!」


 思わず立ち上がろうとするが、零は手で静止してくる。


「ここは一旦僕に任せて、ね?」


 零はそう言うと、私の答えを待たずにジャケットを羽織って警察署へと向かってしまう。

 一人、ソファに取り残された私は静かに零の帰りを待つが、落ち着かない。思わずスマホを手に取り子供達へ電話をかけるが――繫がらない。


「どこに、行ったの……?」


 何もする気になれず、ぼうっとしていればやがて零が帰ってくる。


「ぁ、おかえりなさい」

「……うん、ただいま」


 零はそう答えると、私を優しく抱きしめてくれる。


「大丈夫。きっとすぐ帰ってくるよ」

「……うん」

「朝ごはんは食べた?」

「…………まだ」

「食欲はないかもしれないけど、とりあえず朝ごはんは食べよう。僕が用意するよ」

「……ありがとう」


 零はそっと私から離れると、キッチンの方へと向かう。

 私は動く気にもなれず、ただ目を瞑り、零から声をかけられるのを待っていた。


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 そして、子供たちが行方不明になって3ヶ月も経った。

 未だに子供たちの情報は何も得られていない。

 SNSやチラシを使って聞き込みをしても一切情報がなく、警察の方も子供達の行方がわかる手がかりは見つかっていない。


「どこに行ったの…………っ!」


 子供達が心配で、思わず手元にあるチラシをグッと握りしめれば、ジワリと視界が滲むのがわかる。

 すると、零が優しく手を重ねてくれる。

 

「みふゆ。心配なのはわかるけど、今は少しは休もう。体調、悪いでしょ?」

「……っ」


 心配してくれる零の言葉に、私は思わず泣いてしまう。


「で、でも……!私が、あの日のうちに警察に連絡していたら子供たちは見つかってたかもしれないじゃない!?それなのに、それなのに私は……っ!」

「……みふゆ」


 私の言葉に、零は悲しそうに答える。


「みふゆが悪いわけじゃない。あの時、僕が様子を見ようって言ったのが悪いんだ。だから、みふゆが悪いわけじゃないよ。悪いのは僕だ。ごめんね、みふゆ。あの時僕が……」

「ち、違う!私よ。私が悪いの……!子供たちと、ちゃんとした信頼関係を気づけてない私が悪「みふゆ」……な、なに?」


 零を責めてしまった。

 

 そう思った私は慌てて”零の所為じゃない”と伝えようとするが、その言葉を零は静止する。


「それ以上自分を責めないで。みふゆの所為でいなくなったわけじゃない。だから、今は子供たちが無事に帰ってくることを信じて待っていよう。ね?」

「…………うん」


 コクリと頷けば、零は優しく笑ってくれる。


「……ごめんなさい」

「謝らないで。むしろ、もっと頼ってよ」


 零は屈託なく笑うと「それじゃあ、僕は一旦仕事に行ってくるね」と言うと、ジャケットとカバンを持って玄関へと向かう。


「……今日もお仕事頑張ってね」

「うん。……何かあったらすぐ電話して?急いで帰るから」


 零の優しさに思わず微笑めば、零も優しく微笑んで「行ってきます」と手を振り仕事へと向かう。

 

 零を見送り、一人家にいる私は玄関の鍵を閉めようと動く。

 すると突然、家の2階からドンドンっと複数の何か重たいものが落ちる音が聞こえる。


「……えっ」


 一度も聞いたことのないような音に私は思わず怯えてしまう。

 家が揺れた訳でもないのに、一体何が落ちたのだろうか。

もう少しで子供達だせるはず……!

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