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14


 不意に身体が重くなったように感じて、私はゆっくりと目を開く。すると、暗かった部屋が、カーテンの隙間から出てくる光で明るく感じる。


 どうやら朝が来たようだ。

 前日に泣いた所為もあってか、少し瞼が重く感じ朝の光りが眩しく感じる。けれど、幾分か目覚めの良い朝だった。

 もぞもぞと布団から出ようとしたその時、自分の他に誰かがいる暖かさが隣から感じられた。

 慌てて隣を見れば、私のお腹に腕を巻き付けるに寝ている零がいた。


「……」


 こいつ、また布団に入って来やがった。

 なんて、意地の悪いことを考えながらも、私は起こさないように零の腕から抜け出し、スマホを持って部屋から出た。

 階段を降りながらスマホを見れば、時刻は午前10時30分だと表示される。


「おっと……?」

 

 思ったよりも寝過ごしてしまったようだ。といっても、今日は休日。零も休みだし私が遅く起きたところで問題は無いだろう。


 リビングに行き、炊飯器のスタートボタンを押してから私は顔を洗いに行く。

 のろのろと顔を洗い、寝間着から普段着に着替えたりと、朝の支度をしていればう、るさかったのか零が起きてくる。


「早いね、おはよう……ふわぁ」

「おはよ……いや、もう十一時近いからこんにちは?」


 眠たそうにあくびする零にそう言えば「えっ……ほんとだ」とスマホを見て驚きつつも眠たそうにリビングの方へと歩いて行く。私はその後を追いかけながら零の背中に声をかける。


「私もさっき起きたばっかりで……ご飯炊けるまであと20分ぐらいかかるんだけど……コンビニで何か買ってこようか?」

「……んー」


 零はリビングに入ると一直線にソファへと向かい、寝転びながら適当に返事をする。

 

「零?」

「……んー?」

「二階でもう少し寝てなよ」

「んー……」


 眠たそうに返事をしてくるので、ちょいちょいっと、零の腕を突つくが、間延びした返事だけが返ってくる。

 

 ……仕方がない、しばらく放置しよう。


 私は零を放置し、朝は何食べようかと考える。

 昨日の夜作ったカレーでもいいが、ご飯がまだ炊き上がらないし、蓮もいない。かといって、今から朝ご飯を作っても、直ぐにお昼になってしまう。いっそのこと、朝ご飯はなしにしたほうがいいだろうか。

 うーん、と頭を悩ましていれば零が小さな声で「食パン……」と呟いた。


「食パン……?冷凍でいいならあるけど……買ってくる?」

「うん……待ってね……今起きるから……一緒に行こう……」


 零が一生懸命睡魔と戦って起きようとしているのは伝わるが、これは勝つまで後三十分は掛かるだろう。

 私は零に「大丈夫、すぐそこだから。待っててね」と言って、パーカーを着てスマホと財布を持って玄関に行く。徒歩五分もしないで着く距離だから運転する必要はない。

 私が玄関の扉に手を伸ばした瞬間「ごめんね……いってらっしゃい、気をつけて」と零の声が聞こえたため、「いってきます」と返す。


 外に出れば、眩しい太陽と少しひんやりした風が吹いていた。

 肌寒くなってきたなっと思いながらのんびりと歩いていれば、すぐに目的地であるコンビニに着く。

 お客さんも少なく、食パンは直ぐに買えた。目当てのものを買って、家へと帰れば、我が家の玄関の前に蓮の姿が見えた。


「!」


 無事に家出から帰ってきてくれた、という安心感から思わずほっと胸をなで下ろす。正直、返ってくるのは夕方だと思っていたから。

 嬉しさなのか、ホッとしたからなのか、私は蓮に声をかけようと手を上げるが、そこでハッと気がつく。そう言えば、喧嘩していたな、っと。

 行き場のない手をそっと下げて、私は静かに家の玄関へと向かう。蓮は私が外出しているとは思ってもいないのだろう。特に後ろを気にする様子もない。

 私は玄関近くまで行くと、蓮の後ろ姿に声をかける。


「……おかえり」

「っ!」


 蓮は私の声にびっくりしたのだろう。肩をビクつかせるとバッと後ろを振りむいた。声の正体が私だと気がつくと、視線を逸らして小さな声で「……ただいま」と答えた。けれど、それ以上蓮は動こうとしない。


「……入らないの」

「…………はい、る」


 お互いに気まずい空気が流れているもののいつまでも外に居るわけにもいかず、私が蓮に問いかければ、蓮はゆっくりと玄関を開けて、家の中へと入る。


 私も蓮の後に続くように家の中へと入り、家の鍵を閉めれば、音で気付いたであろう零が「おかえりー」と言ってくれる。

 その声に「ただいま」と私は答え、蓮も「……ただいま」と答える。


 すると、零がリビングから顔を覗かせる。


「あれ、蓮も帰ってきたんだ」

「……うん」

「お友達は元気だったかい?」

「……まぁ」

「よかったね。ほら、いつまでも玄関で立っていないで、早く手洗っておいで」


 零がごく自然にそう言えば蓮も靴を脱いで、手を洗いに行く。私は蓮が視界から見えなくなるまで蓮の方へ視線をやっていると零が口を開く。


「みふゆ。表情硬いよ」

「……」

「喧嘩して気まずいのはわかるけど、そんな状態だとずっと気まずいままだよ」

「うっ」


 零に痛い所を疲れて思わず声が漏れる。それでも零は「まぁ、僕も頑張るから、みふゆも普段通りにしなよ」と言ってくれたため少し気持ちが楽になる。零に「ありがとう」と伝えれば「どういたしまして」と返ってくる。

 

 私は、心を入れ替えるために深呼吸をして、普段取りに接せるように意気込むのだった。

 

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