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11.8~蓮の話※~

この話はほぼ読み飛ばして大丈夫です。

精神的にあまりよくない感じで書いてしまったので、苦手な方がいたら読み飛ばしてください。


ここの話は簡単に言うと、『うたた寝した蓮が見てる夢~夢から覚めた』といった話です。

三行でまとめるなら

『うたた寝した蓮は悪夢を見た』

『異世界の後悔やショッキングな出来事が押し寄せてきて、何だか精神的に危なくなってる』

『だけど、友人の祐二に起こされたのでなんとか大丈夫だったよ』

って感じです。




 目を開けると、そこは広々とした草原が目に映る。

 暗いのにも関わらず儚く淡い光りに照らされていることで幻想的な風景が目の前に。けれど、その風景に蓮はハッと気がつく。

 

(……これは、夢だ)


 と。

 なぜなら、蓮の目の前に映っている風景は蓮自身が後悔している、とある()()()()()()()()()()()村の憩いの場の草原だったからだ。

 この村が襲われていたあの時の蓮は、まだ戦力と言えるほどの力はなく、無力だった。だからこそ、蓮はもしもあの時、力があればこの村の憩いの場は今もあったかもしれないと、常々と考えていたのだ。

 そのため、夢とは言え蓮は二度と見る事ができない草原を見て後悔が溢れる。


(俺が、あの時……もう少し強ければ……力があれば……)

 

 蓮の気持ちがどうしようもなく落ち込んでいると突然、「おーい」と後ろから声がかけられる。

 「こんな草原で誰が俺を?」と考えた蓮だが、慌てて後ろを振り向けば、そこには――幼い子どもがいた。

 

「おにーちゃんどうしたの?何かあった?」

「は」


 ぱっちりとした目で、その子どもは不思議そうな顔で蓮を見ていた。けれど、蓮はその子どもの顔を見て思わず唖然としてしまう。


「え、なんで……君が……だって今、俺は草原に……!」


 焦りながら答える蓮だが、次の瞬間。草原だった光景が一瞬で変わる。

 綺麗なシャンデリアに、目を張るような豪華な食事。そして、楽しそうに城に集まった人達が蓮の前に現れる。

 その光景はまるで、蓮が元の世界に帰ると言った時に開かれたパーティーだった。パーティー特有の楽しそうな音楽と、人々の会話が聞こえてくる。そして気がつけば、ミラとレオが「ハス様、どうぞ真ん中へ」「ほら、今日はお前が主役だろ」と言って蓮の背中を押す。これには思わず蓮も言葉を失ってしまう。

 しかし、これは夢。蓮が動こうと考えていなくとも、蓮の意思とは関係なく”それ”は動き始める。


 子どもはにっこりと笑うと、蓮に一輪の花を差し出す。キラキラとした目で。愛らしい表情で。

 

「”おにーちゃん、ありがとう!”」


 その光景は蓮にとって、忘れたくても一生忘れることのできない出来事。

 思わず蓮はどうにかこの場から逃げようとするが、身体は思うように動かず、気がつけば()()()と同じように、子どもから花を受け取ろうと膝をついてしまう。


(嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!だめだ、やめろ!)


 「だめだ」「受け取ってはいけない」と、蓮の心は必死に反抗するが、所詮は夢。どれだけ否定したとしても身体は勝手に動いてしまう。

 

 そしてついに、蓮が花を受け取ろうと手を伸ばした瞬間。


 ――――ゴトン。

 

 鈍い音と、重たい衝撃が蓮の手にあたる。


「ぅ、あ」


 生暖かく、ぬるりとした液体が伝わる感覚。それにずっしりとした重さに、蓮は情けなく声が漏れた。

 そして、嫌でも理解してしまう。

 

 それが――子どもの頭だと。


「っ、!」

 

 蓮はすぐさま手を引っ込めるが、その反動で子どもの頭は床へと落ちていく。

 ゴジュっ、と鈍い音が響くと、落ちた頭は蓮と目を合わせる形となる。

 

 何が起きて子どもの()と目が合う状況になっているのか理解出来無かった蓮は、”落ちた頭”と数十秒見つめ合っていた。

 キラキラとした瞳が、全く動くことなく一心(いっしん)に見つめてくる状況に蓮の頭はついていかなかった。否、正確には拒んでいた。

 段々と濁っていく瞳に、酷く濃い――血のニオイ。

 蓮の頭が必死に理解を拒んでいると、次第に頭が真っ白になっていき、視界が白くなる。どうやら貧血を起こしているようだ。

 ぐらぐらと倒れそうになる蓮だが、咄嗟に誰かに支えられる。


「っ、ハス!しっかりしろ!」

「っ、ぁ」

「おい!」


 顔面蒼白になった蓮を支えたのは一緒に冒険をし、ミラの専属騎士であるレオだった。

 気の知れたレオの声をわずかに拾うと、蓮は視線をレオの方へと向ける。

 すると、ほっとしたレオの表情が見え蓮は口を開こうとするが、次の瞬間――。


「お前のせいだ」

「……ぇ」


 床から幼い声が聞こえる。

 本来聞こえるべきでない声が――床に()()()()から声が聞こえてしまう。

 恐る恐る視線を頭に移せば、頭がニヤリと笑いドロドロと溶け始め、魔物の姿へと変わる。


「っ、はは……はははは!貴様の行動など無意味!貴様も、貴様らも!この子どものように死ぬ!何せ魔王様が……初代魔王様がお戻りになられるのだから!」


 魔物はゲラゲラと蓮を馬鹿にするように笑う。

 様々なことが一度に起きてしまし、どうしようもない恐怖が蓮の身体に広がる。


「ぁ、ぁ……!」


 耐える様にハクハクと口を動かしていた蓮だが突然、「だから、お前の助けは初めっから無駄なんだ」と、耳元で、聞き慣れた声で言われる。


 今の蓮に、耳元で喋ることが出来る人物など一人しか居ない。

 気持ち悪いほど寒いはずなのに、蓮は大量の汗をかく。

 自分の不安を拭うためにも、自分の耳元で囁くことが出来た人物――レオの方に視線をやり恐る恐る問う。


「レ、オ?」

「……」


 けれど、レオの表情が伺えないのに加え、何も返事をしてこないため不安がのしかかる。

 

「っ、冗談はやめろよ……なぁ」

 

 茶化す用に、蓮は力の入らない手でレオに触れると――ポロポロと砂のように崩れる。


「は。え。ぁ?」


 次々とポロポロと崩れていくレオに蓮は頭が追いつかない。


「レオ?レオ!」


 叫ぶようにレオを呼ぶが、レオはついに答えることなくその場で砂になる。

 訳が分からず蓮は頭を抱える。けれど次の瞬間、色々な声で蓮を責める様な声が聞こえる。


「お前が助けてくれなかったから」

「なんで助けてくれないの」

「お前の所為(せい)で死んだ」

「見捨てたの?」

「自分だけ生き残るためか」

「それなら初めから助けるな」

「中途半端な希望を見せないで」


 男の人や女の人の声、若い人や老人の声が()わる()わる聞こえる。

 蓮はその声を聞きたくないと言わんばかりに叫ぶ。


「違う、違う!俺は、俺は!」


 目を瞑り、耳を塞ぐがそれでも声は聞こえ続ける。


 泣き叫ぶ声。


 蔑む声。


 非難する声。


 様々な声音で、様々な言葉で蓮を責め立てる。


(違う違う!……これは、夢。夢なんだ!)


 必死に目が覚めるように祈るが、一向に目が覚める感覚がない。

 すると段々蓮は、これは夢ではなく現実世界なのではないかと考え始めてしまう。


(だって……それじゃないと、こんな夢直ぐ覚めるはず、だから……)


 恐怖、焦り、罪悪感で憔悴しきった蓮の頭の中はぐるぐると靄がかかった状態になってしまう。すると、何者かが突如蓮に囁きはじめる。


「もうやめちゃおうよ」


 その声は優しく縋りたくなるような女性の声だった。

 蓮は一度も聞いたことがない声に「誰だ?」と思ったものの、頭に靄がかかった感覚で思考がまとまらない。そして、女性の声はまるで蓮に考える隙を与えないかのように言葉を続ける。

 

「諦めちゃお?もう、いいんだよ。貴方はよく頑張った。貴方が罪悪感を負う必要ないんだよ。私が全部赦してあげる。だから……もう楽になろう?」


 甘く、優しい言葉が蓮に渡される。

 蓮は自分を肯定してくれたからなのか、先程まで突然聞こえた女性の声に不信感を持っていたはずなのに一気に消え失せ、むしろその声を信用し従うかのように身体の力を抜いてしまう。

 

(そう、だ。俺は、もういいんだ。だって、この人が赦してくれる)


 頭に靄がかかったような感覚の蓮はそう考えると目を瞑り身を任せる。

 

 ――「これですべて終わる」と、蓮が考えたその時。

 

 突然、集中しないと気がつけないほど小さな音が蓮の耳に届く。すると不思議なことに、先程まで頭にかかっていたはずの靄が一瞬で消え失せ、蓮はその音にはじかれるように顔を上げ、辺りを見回す。


「――」

「だれ、だ?」

「――!」

「な、何言ってるんだよ!」

「――す!」


 女の声など忘れ、音がする方を必死に探せば大きな声で「――蓮!」と言われる。


「っ!」


 その声はよく知っている声――祐二の声だった。

 バッと蓮は視線を祐二の声がした方にやれば、心配そうな表情でのぞき込んでいる祐二の姿が映る。

 

「あ、やっと起きた」

「は、え?なんでお前……」

「? え?なんでってお前が泊まりに来たんじゃん?」

「……」


 戸惑う蓮だったが、祐二の言葉にやがて納得する。


(よかった、目が覚めた……夢だった……)

 

 ドッドッドッと、脈が速いが、蓮は大きくため息をつき安堵する。

 祐二はそんな蓮の横に座ると「すっげぇうなされてたけどだいじょーぶ?」と笑いながら両手に持っていたオレンジジュースの片方を差し出してくる。

 蓮は「ありがと」と言って受け取ると、祐二を安心させるように夢を見ていたことを伝える。

 

「……大丈夫だ。ちょっと嫌な夢を見てただけ」

「へー、お前が珍しいね~」

「だろ?うたた寝したのが悪かったかなぁ」


 蓮の言葉に祐二は「ふーん」といった反応を見せるとごくごくとオレンジシュースを飲み進める。

 蓮もそれにならうようにオレンジシュースを口に含む。


 ジュースの甘さと、オレンジ独特の酸味が口に広がり、蓮はやっと胸を落ち着ける。


 祐二はそんな蓮をみると、遠慮がちに口を開く――。

 

後ほど修正させていただきます。

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