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11.6~蓮の話~


 

 祐二が肩を組んできたことで強引に歩き進まされた蓮は、何とも言えない気持ちで祐二の隣を歩いていた。

 時折、祐二が話しかけてくるが蓮は反応を示さない。そんな蓮の様子に祐二は重心を蓮の方へと置き、意地でも反応させる。


「っ、重っ」

「俺が話しかけてるのにしかめっ面してるからだよ」


 案の定重みに耐えきれず反応した蓮に祐二はふて腐れたように言い放つ。

 流石の蓮も申し訳なさそうに答える。


「……悪い」

「いーよー、つっても俺が変なこと言ったのが原因だろ?むしろ悪かったな」

「……」

「……」


 二人の間に微妙な空気が流れ始める。居心地の悪さに祐二は少し落ち着きがなくなりいキョロキョロとしてしまう。

 けれど、そんな二人を助けるかのように甘いもののお店がちらほらと見え始める。


「お、ドーナッツ屋じゃん。……そういば、そろそろ何食べたいか決まった?」

「……まだ」

「え~?そろそろ決めないと甘いモンある店なくなるぜ?」

「……そういうお前こそ決まったのかよ」

「全然決まってない」

「即答で答えんなよ……」


 にっこりと笑って即答した祐二に蓮はため息をつく。

 先程まで祐二の言葉に悩んでいる蓮だったが、甘い食べモノの方に意識がいったのか険しい顔ではなくなった。そして、二人の間に流れていた微妙な空気もなくなる。

 いつも通りの雰囲気に戻ったことで、祐二はおちゃらけたように話しを続ける。


「つっても、決まってないならどうすっか……」

「……なんか、甘いモンだけ取り扱ってる見せでもあれば……」


 うーん、と二人は悩むが突然祐二が「あ!」と大きな声を出す。


「びっくりした。いきなりどうしたんだよ」

「いや、そういう店あるなって!」

「は?……あぁ!あそこか!」


 祐二の言葉に蓮も思い出す。

 幸い、この場所からも近い。


「……んじゃまあその店行こうぜ!んで、店を回りながら決めよーう!」

「おう。って、重心こっちにかけんな。あと、いい加減離れろ」


 そんなやりとりをしながら、二人は目的地の店へと向かう。


 _________


「いらっしゃいませー」


 二人が入店すれば店員がいつも通りの笑顔で出迎えてくれる。

 この店は最近できた”甘いもの”を専門としている店だ。

 アイスクリーム類はもちろん、洋菓子や和菓子など本当に幅広く扱っている。値段もそこまで高いわけでもなく、一般的な値段であると言えるだろう。そして味のほうだが――値段以上のおいしさだ。

 

 店が出来た当初は「いやいや、そんな店割とすぐ潰れるでしょ」と多くの人達が言っていたのに加え、祐二と蓮もそう思っていた。なにせ、幅広い商品を扱うということは、それだけ何かを極めているわけでないと考えていたからだ。

 初めは店自体に興味がなかった二人だが、SNSでその店が話題になっていると知ると、早々に話題性と面白さを求めて買いに行った。買い求めに来ている人が多く、正直あまり自分達の興味のないお菓子を買ったが、そのおいしさに二人は驚愕した。

 もう一度ぐらい買いに行こうと話していたが、中々甘いもの食べる気になることがなく先延ばしにしていた。

 けれど、今日は互いに甘いものを食べたいという意見が一致していたため、タイミングバッチリというわけだ。

 

 祐二と蓮は店に入ると早々に別々に動き、それぞれ食べたいものを物色する。

 祐二は和菓子のコーナー、蓮は洋菓子付近。

 洋菓子付近で適当に手土産になるような商品を蓮は眺める。


(……祐二ん家にはこのクッキーでいいか)


 手頃の値段のクッキーを手に取り、蓮は他にも何かないかと見て回る。

 すると、タイミングよくすぐ横に祐二がやってくる。手には大福を複数個持っていた。


「なになに、蓮はクッキー買うの?」

「おー……お前、そんな大福食うの?」

「食べられなかったら明日食べるてば~……って、そのクッキー美味しいやつじゃん!」


 「俺にも食べさせてー」と言い残すと、祐二は先にレジへと向かう。

 蓮も続けてレジに並ぶが、そこでショーケースに並んでいるプリンが目に入る。

 こんな時間まで残っているのは珍しいと思った蓮は、プリンも買おうと考えながら自分の会計まで待つ。

 

 少しまてば、右端のレジから「次の方どうぞ」と声がかかる。

 蓮はレジを担当してくれる店員にクッキーを「お願いします」と言って渡すと、続けて口を開く。


「すみません、プリンも二つお願いしてもいいですか?」

「かしこまりました、プリンお二つですね」


 店員が笑顔で答えると、ショーケースからプリンを二つ取り出してくれる。


「こちらでお間違えないでしょうか?」

「はい」

「では、こちらと合わせまして合計――」


 店員の言葉と、レジの横に表示されている料金を取り出して精算すれば、品物を渡される。


「ありがとうございます」

「ありがとうございました!またのお越しをお待ちしております」


 会釈をしながら品物を受け取り、店を出る。

 店の外には先に会計を終えた祐二が二つのアイスを持って待っていた。


「ほい」

「え、あ、ありがとう?」


 突然渡されたアイスに戸惑った蓮だが、「? 食べないと溶けるよ?」と祐二に言われ蓮も食べ始める。


「クッキー以外にもなんか買った?」

「プリン買った」

「えー!プリンあったの!?」

「おう。お前の分もあるよ」

「えっ、まじ?ありがと~!」


 蓮の言葉に祐二は嬉しそうに笑うと「じゃ、さっさと帰ろうぜー」と言われ祐二の後を蓮はついていく。


「あれ?そういえばお前着替えあんの?」

「あ、下着だけ買ってくわ。あと、来ないだ泊まってった時の服ってある?」

「おー!そう言えばあるわ!」


 二人は何気ない会話を楽しみながら、街を後にした。

 

 


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