11.3~蓮の話~
一時話合いをやめた二人はラーメンへと箸を伸ばし、口に入れると互いに感想を言い合った。
「うっま~やっぱここのラーメンが一番だよな~!」
「わかる……」
「え、めっちゃ強く頷くじゃん。うける」
祐二が美味しそうに食べる一方で、蓮は久しぶりに食べたラーメンに感激するかのように食べていた。
(ほんっとにうまい……異世界にはラーメンがないからなぁ。これだけはマジで異世界の悪いところだわ)
蓮はラーメンを味わいながらそう思った。
なにせ、蓮の行っていた異世界にはラーメンが存在していなかったため余計にそう感じた。蓮にとってラーメンは好物に入るため、一度だけレオに「ラーメン食いてぇ~」と愚痴ったことがあった。きっと賛同を得られると思っていた蓮だが、レオは「らあめん?あめ玉の1種か?」という返答をしたため、「この世界にラーメンないのか……」とショックを受けたのだ。また、ラーメンの他にも蓮の好きな料理などは、異世界には存在していないのがほとんどだったため、食の楽しみが減っていた。そのおかで、今日食べたラーメンは蓮にとってまさに久しぶりに感じた至福のひとときであった。
祐二は感激しながら食べている蓮を見て少し「大げさすぎやせんか?」と言いたくなったが、ラーメンは蓮の好物であると知っていたため、そこを突っ込むのはやめた。ただ、突っ込む代わりにラーメンをひたすら口へ運んでいた。
ラーメンを黙々と食べ進めていた蓮だが、徐に箸を置くと、レンゲを手に取り半炒飯を口に運ぶ。
「……うめぇ」
「えっ、チャーハン噛みしめて食べるやつ初めて見たんだけど」
口に運んだ炒飯を噛みしめるように食べる蓮を見ると、祐二は思わずケラケラと笑う。(ちなみに蓮の行った異世界に炒飯は存在していない。炒飯っぽい何かはあるが。)
少し馬鹿にされてような気がした蓮は若干喧嘩腰になりそうだったが、炒飯のおいしさによってむしろ祐二にも早く食べてもらいたく、しみじみとこう言った。
「食ったらわかるよ。まじ早く食えって」
「めっちゃしみじみ言うじゃん~。や、ウマいのは知ってるし?」
蓮にそういうと祐二も口に炒飯を運ぶ。
「ん~やっぱりうま~!ラーメンとチャーハン、サイコ~!」
「それな」
もぐもぐと休む暇なく二人は食べすすめれば、あっという間に完食する。
「ごちそーさまでした」
「ごちそうさまでした」
二人はそう言うと一杯の水を飲み、伝票を持ってレジへと進む。
会計を済ませ「ごちそうさまでした」と店主とレジを担当した店員に伝えれば、親父さんからは「また来いよ」と店員からは「ありがとうございました!」と言われる。二人は軽く会釈をした後、店を出る。
外に出れば、街灯の明るさと車のライトのおかげで暗さは感じなかったが、上を見上げれば空は真っ暗だった。
そして、空を見た蓮はこう思った。
(……星は見えねぇんだなぁ……やっぱり、あっちとこっちは全然ちげぇや)
街灯などの明るさで星がほとんど見えない空に、蓮は異世界と比べながらしみじみと感じた。
異世界も決して文明が進んでないわけではない。むしろ、異世界の方が進んでいる部分もある。けれど、食や生活面の安全性などはやはり異世界よりは、こちらの方が断然優れていると感じる。
(やっぱこっちの方が俺にも生きやすい世界だよなぁ……)
蓮が異世界と比べながら少し考えていると、トントンっと肩を叩かれる。
「なーんか考え事?」
「あ、悪い。ちょっとな。何かあったか?」
「いや、別に何もねぇけど……?」
肩を叩いてきたのは不思議そうな顔をした祐二。
どうやらぼんやりとしていた蓮が心配になったようだ。
蓮のなんとも言えない返事を聞くと首をかしげた祐二だが、蓮が「……夜だなーって思っただけだ」と言えば渋々納得したように頷く。
しばしらくの間、二人の間には何とも言えない空気が流れていた。けれど、そんな空気を紛らわすように祐二が腹ポンポンっと叩きながら口を開く。
「はぁ~食った食った~ごちでーす」
「……ホントに払わせるとは」
「俺、嘘つかねぇもん♪」
会計の時に、一切財布を出す気配も見せなかった祐二に蓮は少しだけジトッとした目で見つめる。、
そんな蓮の視線に祐二は笑いながら「あざっした~」と言うと頭を下げる。そして、頭を上げると「そーだ!」と何かを思いついたように声を出す。
「甘いモン食いたくなったから、何か買いに行かね?」
「いきなりだな。てか、まだ食うのかよ……まぁ良いけど」
またしても食べ物の話に少し引いていた蓮だが、祐二にそう言われれば自分も食べたくなったのか、甘いものを買いに行くことに賛成する。
「何がいいかな~蓮は何食べたい?」
「……アイス?」
「えー!普通ー……いや、でもアイスもいいな」
「……祐二こそ、何かこれってもんないの?」
「うーん。甘いものってだけでなぁ……あ、ケーキはやだ」
二人でしばらく考えるが、特にこれといったものは出てこない。
「……とりあえず、甘いモンある方まで歩きながら決めね?」
「だな」
祐二の意見に賛同すると、二人はそのまま甘いものを取り扱っている店まで歩いて行くのだった。
一旦これで、次に時間あるときに細かな部分を直します。




