原っぱの魔法
うさぎのポポの毛並みはみんなとはちょっと違います。モコモコしています。
みんなはスッキリかっこいいのに…。
だからポポはいつもみんなに毛並みでからかわれます。
「なんだその毛は!
ちゃんとブラシしてるのかよ」
「してるよ!いつも早く起きて何度も何度も…」
「お前本当はうさぎじゃなくて羊なんじゃないのか」
「僕はうさぎだ!」
「やーいニセうさぎ!アハハ」
「僕も…みんなと同じうさぎだもん…」
いつもいつもこうやってからかわれます。
ポポは遊びに出たばかりなのに、もう家に向かってとぼとぼ歩いていました。
「ただいま…」
「おかえり、ポポ
ずいぶん早い帰りね?もっと遊んできていいのよ?」
「…家にいる方がいいよ」
「…ポポ、またからかわれたの?
ごめんね、モコモコに産んだママのせいよね
でもママはポポの毛並み大好…」
「やっぱりもう一度遊んでくる!」
最後の言葉も聞き終わらないうちにポポは家を飛び出しました。
最後までいたら泣き出してしまいそうだったから…。
僕が悲しんでるとママも悲しむ…。
ポポは何も考えずに一生懸命ぴょんぴょん飛びました。
少しでもここから遠くに行きたかったのです。
誰もポポのことを知らないところに行きたかったのです。
でもどこへ向かっているのか自分でも分かりません。
息が苦しくなり立ち止まりました。
そこは見たこともない原っぱ。
だいぶ遠くに来たようです。
「どうしよう…帰り道わかるかな」
不安な気持ちと、ここには自分を知る人がいない心地良さに心が揺れました。
「このままここにいようかな。
…でもまた同じように誰かにからかわれるんだろうな」
思い出してまた急に悲しい気持ちになりました。
誰かに投げつけられた言葉は、投げた人は忘れてしまっても、深く深く大きなトゲになってポポの心に刺さっているのです。
「ねえ!」
「わっ」
突然後ろから話しかけられてびっくりして飛び上がりました。
「君この辺にいない子だよね?どこから来たの?」
「僕…その…ずっと遠くからだと思う。たぶん…」
「もしかして迷子?」
「うん…いや、大丈夫。たぶん…」
突然現れたポポとは違うキレイな毛並みのうさぎに、またからかわれるのではないかとオドオドしてしまいます。
「ふふ、多分ばっかり!帰らなくてもいいならここに住んじゃえば?」
「ここにはいじめっ子いない?」
「君…いじめられたの?」
ポポはさっきからかわれたことを思い出して、今まで誰にもいえずガマンしていたものが溢れてぽろぽろ泣き出してしまいました。
「僕の毛並み、モコモコしててカッコ悪いでしょ?それでいつもからかわれるんだ、今日だって…」
「そう?カッコ悪くなんかないよ!
たんぽぽの綿毛みたいにふわふわでいいね!」
そう言ってフーっと一息で足元にあった綿毛を舞い上がらせました。
「きれい…」
「この原っぱ大好きなんだぁ!ほら!黄色いたんぽぽに白いふわふわ綿毛がキラキラしててキレイでしょ」
「うん…とってもキレイ」
とんで行く綿毛と共にポーのモヤモヤした気持ちもとんでいきます。
「僕ね、たんぽぽの綿毛大好きなの。風が吹くともっとキレイなんだよ。あ!ほら!」
その時、春風が2匹を包み込むように吹きました。
舞い上がる綿毛と一緒にポポの涙も飛んでいきます。
「ありがとう
君がたんぽぽの綿毛に似てて好きっていってくれるから自分のこと好きになれる気がする」
「僕は何もしてないよ!本当のこと言っただけ、こんなにふわふわでキレイなんだもの」
言葉は不思議。
誰かに言われた言葉に傷つくけれど、
誰かに言われた言葉で幸せにもなれる。
誰かに言われた言葉で悲しい気持ちになることもあるけど、
誰かに言われた言葉で優しい気持ちになることもある。
言葉ってまるで魔法みたい。
誰でも使える小さな小さな魔法なの。
「あ、名前聞いてないや。
僕ココアって言うの。茶色いからだって」
「僕ポポっていうの」
「ふふ、名前までたんぽぽみたいだね!もしかしてだからポポなのかな?素敵な名前つけてもらったんだね」
ポポは急にママに会いたくなりました。
悲しい顔をさせてしまったママに、早く今日の話をしたくて少しでも早く帰りたいと思いました。
「僕…やっぱり帰る」
「道わかるの?」
「大丈夫。なんとか帰れると思う!」
「じゃあ僕途中まで一緒に行ってあげるよ」
「ありがとう。また…遊びに来てもいい?」
「もちろん!」
今はモコモコな自分が誇らしくて嬉しくて、ポポはいつもより高くぴょんぴょんとんでしまいます。
「すごいね!僕だって高く飛べるぞ」
「僕なんてもっともっと飛べるぞ!アハハハハ」
キラキラ輝く原っぱを2匹のうさぎが楽しげにぴょんぴょん飛んでいくのでした。