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井真成(いのまなり)

 海雀は(からのくに)から日本(ひのもと)へ一人の女を運ぶ仕事を引き受けた。ほぼ同じ頃、楊貴妃が処刑されるとの噂も伝わってきた。

 その日、自称情報通の水夫が喋りまくった。

「あの高力士だ。楊貴妃が死んだことにして何処かに隠すだろう。(ほとぼ)りが冷めたらきっと玄宗皇帝が呼び戻すに違いない。」

 翌日から水夫は来なくなった。

 水夫が居なくなる前日、海雀は仕事仲間に〈一人水夫が欲しい。〉と頼んでいた。

 童子は鬼の仕業だと震撼した。


 童子が鬼の術を偶然知ったのは、かなり前になる。

 吉備真備が鬼の術を使うと聞いた。〈凄い人だ。桃太郎の子孫だけのことはある。〉 そう信じていた若い頃だった。

 水夫の中に仕事もそこそこできて口達者な情報通の者がいた。水夫は九重 (きゅうちゅう)に至るまで自慢げに話していた。

 水夫は童子にも色々と話してくれた。

「吉備真備が使う三年殺しは妖術でも幻術でもない。技を仕掛けて三年たったら本当に殺すんだからな。只の脅しと殺しだよ。俺もお喋りだと三年前に三年殺しを掛けられた。だけどこの通り三年経ってもぴんぴんしてる。当たり前だ。真備は暫く宮中にいる。俺を殺しには来れない。失敗だ。」

 水夫がこの話をして童子と別れた後、突然倒れた。影が揺らめいていた。童子は影に見覚えがあった。江川魚によく似ていた。


 船に戻った童子は海雀(ちち)に呼び出された。


 時が過ぎ、阿倍仲麻呂・吉備真備・井真成(いのまなり)の三人が海雀に会いに来た。童子は真成を初めて見た。宮中で服飾にたずわっているだけに上品だ

 程なくして真成が死んだ。童子の脳裏に川魚の姿が浮かんだ。

 ある日、やたら宮中について知りたがる水夫が居なくなった。童子の目に映った影は江川魚ではなく井真成だった。

 童子は新しく水夫が入ると親しくなっても世間話で留めるようにした。

「一皮剥けたな。」

 海雀は穏やかに言った。

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