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再開

「おっ、はっ、よう★ お兄ちゃん」


 静寂な朝ほど、危険に満ちている。津波がおきる前兆の様だ。俺はけっして油断せずに、臨戦態勢で寝ていた。

 

 そこには踊り子のような、薄絹で装備されている寝間着姿の女がいる。俺の妹とやらが忍び寄る。俺の寝室へと暗殺しにきたようだ。このような刺客には何度も経験している。女を武器とする女豹は何度も退けたことがあるが、相変わらず恐ろしいエロさだ。

 

「悪いがその手にはのらないぞ」

 

「そうかしら。この間合いを許すなんて、お兄ちゃんは不用心☆」

 

 そう言うと、俺の妹らしい娘は寝室へと去った。しかし、ふしだらな姿だな。女豹、勇者を誘惑する敵は何度でもいたから俺には通用しなかった。だが、並みの男ならどうだろうか? しかし、思い出してしまう。エロいな、あの恰好。そう思うと俺は頭を壁に叩きつけた。俺は何を考えているんだ!

 

「行ってきます」

 

 どうやら、妹は別の学校に行っているらしい。俺とは一つ違いの年らしい女子高生。この危険思想極まりない妹とは、一時的に離れることに安堵する。代わりではないが彼女が家の前で待っていてくれた。

 

「おうはよーす。(ひかる)っち。一日ぶりじゃね」

 

「いや、十一時間ぶりかな? プリンシ」

 

「キモッ。時間を数えるなし。あと、私はプリンシじゃなくて、春美咲(はる みさき)忘れたの?」

 

「ああ、そうだったな」

 

 しかし、俺は美咲をプリンシと思えるのは間違いないと思う。早く、転生前の記憶を取り戻して欲しい。だが無理強いはしない。俺は美咲としてプリンシも好きだ。それに、かなり世話にもなっている。有難いことだ。

 

 俺はじっとプリンシではなく美咲を見つめる。

 

「なっ、なんだし。そういう目で見られると、照れるつうの」

 

 ザクッ! 家の塀に何かが刺さる音がする。ほ、包丁か。

 

「春さん。お兄ちゃんに、もしものことがおきたら私、正常じゃいられなくなりますからね」

 

「サ、サイコな妹も元気そうだね。光っちの面倒はみてやるからさ、安心しなよ」

 

「もしものことが」

 

 ニコニコ顔であるが禍々し微笑で美咲を威圧する妹。怖い。すまん、美咲。

 

「あっ、もしもね。ないない、私達付き合って一日だからね。好きっていうよりかは親切心で動いているからね」

 

「もしものことが。お兄ちゃんが飢えてきたら、貴方に……」

 

「俺は無節操か」

 

「こんなことなら、貞操帯でも」


貞操帯とは男女が……いや、説明はよそう。イケないことを防止するアレだが、逆にそういうプレイになっている感もある危険な物だ。良い子は調べてはいけない。

 

「言っとくが、お前に俺は操をたてたわけじゃないぞ。だからといて不純異性交遊とかそういうのはしないからな」

 

「心配だな~」

 

 うん、心配なのはお前の方だけだがな。俺は妹を説得して学校へと向かった。

 

 歩いている途中で重要なことに気付く。

 

「あっ!」

 

「どしたの? 光っち」

 

「妹の名前を聞いていなかった」

 

 美咲は変なものを食したような顔で、不味そうに言った。

 

「光っち。やっぱ変だわ~。妹の名前知らないの」

 

「忘れてしまったんだ」

 

「普通忘れる? 妹さんはなんだか可哀想だね」

 

 これについては正論だ。帰ってきたら聞くか。なんだか妹に名前を聞いたら、妹が口実的に興奮して、また迫ってきそうな気もするが。


 そうこうしているうちに俺たちは学校へと辿り着く。今日は朝から全校集会があるようだ。ここで、ある程度人物を覚えておくのもいいだろう。

 

 体育館で教師や生徒がスピーチをする。俺は観察をするが、これといって現世の記憶に役立つ刺激がおきない。さほど、俺との関わり合いがないようだ。生徒会長のあいさつが回ってきた。これも、どうこう思わない。しかし……。

 

 キラッ! 音こそしないが、そんな光が放たれたのかもしれない。どこからだ?

 

「あ~あ。普段は全校集会でも寝ている光っちが急に辺りを熱心に警戒するから気付かれちゃったかもね。あいつに」

 

「あいつ?」

 

「そのうちわかるよ」

 

 気付かれた? どういうことだ? もしや、転生者がいるということか?

 

 

 

 

「それは、ありえませんよ。私と君以外にピースランドの転生者はいません。いまの所はね」

 

「そうか。残念だな」

 

 俺は化学準備室にはいり副担任こと、竜ケ崎(りゅうがさき)先生に尋ねに行っていた。虚弱で貧困そうだが、もと獣王と名乗ったほどの男だ。

 

「獣王」

 

「ここでは、竜ケ崎先生です」

 

「俺たちしかいないんだ。別にいいだろ?」

 

「そうでもありませんよ。私達はこの世界の異物だということを忘れないでください」

 

「どうしてだ?」

 

「この世界が変わってしまうかも、しれませんからです。この世界のあるべき姿を壊すとある存在が現れるのです」

 

「竜ちゃーん☆ 会いに来たよ」

 

 ここで突然女子生徒が突然に化学準備室に入ってきた。雑に引き戸をあけて物凄く元気でうるさい声で騒ぐ。

 

「あー! 竜ちゃんに友達が出来たんだ」

 

白崎(しらさき)さん、生徒と教師ですよ。勘違いしないように」

 

 白崎という女か、元気ではつらつしていて、どことなくプリンシじゃなく、美咲のように感じる。ちなみに美咲は、獣王と話がしたいので席を外してもらっている。獣王にこの世界の情報を教えてもらいに来たのだが、美咲は外せとのことだ。美咲をプリンシの転生者とは認めてないようだ。

 

「勘違い? ツンデレ? 腐った関係?」

 

「あなたは、そういう馬鹿な考えをすぐに持ち出す」

 

「獣……竜ケ崎先生、彼女は何者ですか?」

 

「竜ちゃんの愛人でーす」

 

「違いますよ。なつかれた、だけです。やれやれ、冴えない教師の何を気に入ったんだか」

 

 獣王は困った顔をする。女子生徒相手だというのになにも嬉しそうな様子をみせない。それにしても、かつてのピースワールドで地上の魔王とも呼ばれた男が腑抜けたものである。しかし、俺自身も右も左もわからない状態で情けない状況だが。

 

「ね? 君は誰?」

 

 俺に興味があるのか? どうでもいいが名乗るとするか。

 

井草野(いくさの)君、言動には注意してくださいね」

 

 獣王に念押しをされる。解っている。俺は勇者ヒカルということを隠さねばならない。言ったところで解ってくれないだろうから問題がないような気もするが……。

 

「俺は」

 

 ガラ! 再び部屋の引き戸を乱暴に開ける音がする。黒縁眼鏡とおとなしそうな感じでとはいかなく、これまた、元気溌剌とした女生徒があらわれる。

 

「彼は私の最愛の恋人、勇者ヒカルよ」

 

 は?

 

 俺はなぜか獣王に顔をむける。獣王はぼそりと教える。

 

「彼女はこちらの世界においての能力者かもしれないんですよ」

 

 そんな、バカな……。

 

「私はプリンシ=エスト=アムモルス! 勇者ヒカルの恋人よ!」

 

 そんな、バカな……。

 

 プリンシは美咲では……。しかし、彼女はプリンシと名乗る何者なのか。獣王に再び顔を向ける。頼む、答えてくれ!

 

 しかし、獣王はやれやれと疲れ切った表情しかみせなかった。獣王すらも難儀するこの女は本当にプリンシなのだろうか? 

 

 俺は戸惑いながら次の台詞を待った。


キャラが増えました。


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