新たな出会い
俺は家に帰ってきたが、誰もいなかった。と、思ったが一人いた。
「お兄ちゃーん! 心配したんだよ」
俺は誰だか判らなかったが、自宅でいる人間で俺を兄と呼ぶ、そして、女の子だ。多分、妹だろう。妹がいたのか。そういえば、転生前のピースワールドでも妹がいる。あいつは元気にしているだろうか?
「ああ、ああ妹よ、心配かけたようだな。すまない」
本当はよく判らなかったが、兄として振る舞いをしなければならない。そのうちに俺の記憶も戻るだろう。ピースワールドの妹とダブって見えないが、同様の扱いをする。
「本当に心配したんだよ。お父さん達が出張して私達で家を守らないといけないというのに。こんな時間まで、どうしてたの? しかも、体中痣だらけじゃん」
「あ? ちょっと、揉め事に首を突っ込んでな。しかし、父と母がいないとは挨拶をしたかったが……」
妹とやらが、キョトンと不思議そうな面持ちをする。まあ、無理もない。俺は異世界から現世に帰ってきたが、現世の記憶があまりない。情報が欲しい。
「大丈夫? お兄ちゃん、私が介抱しよっか?」
年の差は俺とさほどかわらない。俺には淫乱サキュバス賢者教師と同じ匂いを、こいつから発しているのに気づく。こいつは本当に俺の妹か? 俺は戦慄した。
「え? なんだか私を恐れている様に感じるけど大丈夫お兄ちゃん。安心して何もしないから」
いや、介抱するっていったのでは。なんだかサイコ感が半端ない。
「もう、家にあがりなよ。お父さんもお母さんもいないんだしさ……フフフ」
やっぱり、サイコ感半端ないな。俺はもしもの為に援護を頼んでおいてよかった。
「美咲頼む」
そう、言うと一人の軽薄そうな女が出現した。
「今晩はーす。うわ、修羅場だね、君たち、近親相姦鬼畜上等の関係なんだね。怖いわー」
「違うぞ。俺にもよく分からん。美咲よ、助けてくれ」
「お兄ちゃん、ちょっと待っててね」
俺はゾッとした。妹のオーラから負の感情があふれ出ている。もしや、妹の皮を被る魔物か?
「あ? ああ」
俺は圧倒されてしまった。妹とやらは家の奥に入りしばらくして包丁をもちだして現れる。
「誰よ! その女は!」
鬼女の形相で、妹は殺意むき出しで俺たちに問い詰める。
「か、彼女だ」
「まあ、友達から始めているんだけどね」
「なによ! セ〇レなの?」
「なあ? 美咲。セフ〇ってなんだ?」
「君たちは兄妹って感じがするよ。失礼極まりない」
「すまん。まあ、いやらしい意味くらい想像できるぞ。だが、妹よ、本当にお前は妹なのか?」
「妹じゃなければ、私達に縛られた鎖は解き放たれるね」
言葉、ひと言、ひと言に言霊を感じる。こいつ、もしや魔女なのでは? は? あいつか!
「お前はもしやアレルスタイルにいた、身売りの魔女か?」
「え? アレルスタイル? どこの国?」
美咲が興味津々でもなく、キョトンと素朴に聞いてくる。今は、そういう事を説明している時ではないというのに。
「アレルスタイルはピースワールドのアピス大陸にある最大商業都市で……」
「うわ、わっけわかんね。つまんねー」
「聞くなよ」
そんなやりとりを妹の皮を被る魔女は邪視で俺たちを見ていた。そして、邪悪な微笑みをかける。しかし、手に持った包丁はプルプルと震えさせている。その、包丁は聖剣ライトニングブリンカーと匹敵するほどの存在感があった。ああ、戻ってきてくれライトニングブリンカー。俺を助けてくれ。
「仲がいいんだね」
「まあ、今頼れるのは美咲ではなくプリンシだからな」
「ちょっと、アタシはいまだにプリンシ扱いなの? 昔の女っしょ? 忘れなよ」
そう、忘れられることはできない。美咲はプリンシだった時の記憶がないだけなのだ。
「お兄ちゃん!」
ビクッ。俺は緊張が走った。
「情けないよ。そういう、性倒錯は妹だけにしなさいよ。私は身売りの魔女? うん、受け入れるから、その女捨ててこっちに来なさい」
「いや、身売りの魔女は改心して、今は普通の乙女をしているはずなのだが……」
「光っち。改心したビッチを妹に充てつけている自体で話がややこしくなっているよ」
「黙って! ビッチは貴方よ」
「別にそう呼んでもいいよ。だけど、光っちが心配だよ」
「むっ?」
俺としては今の状況が心配でしょうがないのだが。話は最後まで聞いておこう。
「こいつはね、いつも授業中は寝ているわ、中二病拗らせているわ、自宅の帰り道がわからなくなるわで大変なんだよ」
「そんな、お兄ちゃん。私に言ってくれれば世話をしたのに」
「まあ、今日知ったことだしな。すまない心配かけたな。で、お前はアレルスタイルの魔女ではないんだな?」
「違うよ」
「俺の妹なんだな?」
「そうだよ」
「俺の貞操は守られるんだよな?」
「ちょっと、自信がないな」
これだ。ぶれないな。ピースワールドでも現世でも誰しも貞操観念は同じだと思うのに、この妹は危険すぎる。
「なあ、美咲よ。ここに泊まるか、君の家に泊まらせてくれないか?」
「えー? 嫌だよ」
ガスッ! 包丁が廊下の床に突き刺さる。魔女じゃない、こいつは鬼女だな。鬼女で知っている女はいたっけな。
「お兄ちゃん。何考えているの? お兄ちゃんは私とこの家で泊りなさい」
「は、はい」
いまの、俺は非力だ。力を蓄え反撃できるまでおとなしく従うしかないな。
「ま、まあ、光っち。妹さんも愛が強すぎるだけだと思うよ。ちゃんと分別はあるはずだよ」
「そ、そうだよな」
「私はノーリーズン」
頼むから、身の安全を保障してくれ。これは、野宿もありだな。
「お兄ちゃん、逃げても無駄だからね」
「俺にはプリンシという最愛のひとがいるんだ」
「プリンシ? 外人? 今日のお兄ちゃんは疲れているようだから。何もしないから、ご飯食べて寝てね」
と、いうことで、今日の所は身の安全は約束されたようだ。現世に戻って一日で、俺は大分つかれてしまったのかすぐに寝ついてしまった。
「まだまだ、機会がいっぱいあるからね。じっくり楽しみましょ。フフフ」
なにやら、恐ろしげな言葉を聞こえるが聞かなかったことにする。ああ、美咲よ、早いところプリンシの記憶に戻ってきてくれないだろうか。
二人の愛を目にして、妹とやらも正気に目覚めるかもしれない。俺はこういう戦いもあるものだと知った。そして、もと勇者とは思えない情けない希望にすがった。平穏とは大切であると改めて実感した。ピースランドも平和が続いているだろうか?
俺は一日目で、ホームシックのような気持ちでいた。明日も激動だな。頑張るか。
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