バイオレンスアンサー・夫 ⑥
ある日、仲睦まじいかは別として、一つの家族がバラエティ番組を見ていた。その番組内容はこうだった。
「ああっと、大変です! 雨が降って参りました。そこで皆さん、正しい傘の差し方を披露してください」
どうやら、傘の差し方によって大人力があるかどうか判断する……というものだった。
それを見ていた夫は、開口一番、こう言った。
「人の背中に向かってトスっと……」
妻はその答えを聞いた瞬間、両目から涙をつうっと流すと、面倒事を背負い込んだかの様に夫に問い返す。
「何……? 何なのよ……? それ……。何処をどうしたらそんな答えが出るのよ……」
だが、夫は妻の目の前で握りこぶしを作ると、そのまま話を続ける。
「いやいや、だからさ、こう……シュッ! と、風を斬るように」
満面の笑みで語る夫の態度に妻はいつも通り激昂し、勢いよく立ち上がるとテーブルを両手でバンバン叩き、夫を叱りつける。
「何いかにもな感じで両手を突き出してんのよ!? 誰が『差し方』じゃなくて『刺し方』を教えろって言ったのよ!? 本当、あなたの脳の構造はどうなっているの!? 娘も一緒に見てるんだから変な事を吹き込むなって、どれだけ言えば分かるのよ!?」
すると、夫は自分の両手をまじまじと見ながらこう言った。
「うーん、今回は神の一手だと思ったんだけどなぁ? 何がいけなかったんだろうなぁ?」
それに対して妻は一言
「あなたが思っているほど、周りは面白いとは思って無いからね……?」
「ところでさ、今の答え、大人力はどれぐらいだったかな?」
「何でそれで点数が貰えるとおもってんのよ!!」
因みに自分は正しい傘のさし方は分かりません。
……駄目じゃん。