三月、茜色のキーホルダーと夜半の流れ星
雲雀が空を気持ち良さそうに泳ぐ晴れの日、委員会の定期会合終わりの俺は、心地よい陽光の中、疲れる体にムチ打ちながら、高校生らしく部活動へと向かっていた。
鞄につけているキーホルダーの『和歌丸くん』も、心なしか憂鬱そうである。
「それでね、凄いんだよ最近のVR! 画面から手が伸びてきたと思ったら、空に飛んじゃって」
隣で楽しそうに目を輝かせるのは、同じ天文部に所属するミナミ。女みたいな名前で、遠目から見ると女にしか見えない奴ではあるが、れっきとした男である。
コイツも委員会終わりに部室に向かっていた所で、先程偶然出会ったので一緒に行くことになったのだ。
「とにかく、ラテランドのVRプラネタリウムすっごく楽しかったからさ、今度みんなで遊びに行こうよ!」
「んー、確かに面白そうではあるが、なんだか酔いそうだから俺は別にいいかな」
「大丈夫だよ。セイが酔うのは自分にだけでしょ?」
「よし、喧嘩だな買おうじゃないか」
餅は餅屋、鍵は鍵屋と相場は決まっているが、しかし天文部が天文かと言われると、答えは今も昔も決まってノーである。
かつての天文部は掲げた名前と裏腹に「部活面倒、しかし帰宅部は格好がつかない」なんてワガママな奴らの溜まり場だった。
かくいう俺だって、気楽に放課後のんびりできると思って天文部に入部したのだ。なのに……。
ヒドく生産性のないくだらない事を言いあったり、頭の中でグルグル考えたりしている内に、気がつけば部室に着いてしまっていた。
職員室の鍵受けに部室の鍵はなかったから、十中八九、あの女は既に中にいるのだろう。
小さく、もはや習慣となったため息を一つついて、年季が入って古ぼけたブラウンの木製ドアを、音を立てないようゆっくり押し開ける。
中に目を向けると俺たちの気配を察知したのか、振り返ってニヤリと笑った女子生徒と目があった。
「遅い! 待ちくたびれたじゃない!」
「悪いな、アズマ。委員会が長引いた」
アズマはそれには応えずに仁王立ちのまま腰に手を当てる。
肩のあたりで切りそろえられた艶やかな黒髪。印象的な大きな目は、端の方がキリリと吊り上っていて少々威圧感を出している。体は決して大きくない、むしろ小柄な方だろうに、放たれるオーラは不思議と大きく感じられる。
明眸皓歯というに相応しい彼女は、俺たち二人を順に眺めると意気軒昂に手を一つ打った。
「それじゃあさっさと、席につけ!!」
鞄にぶら下がる和歌丸くんは、困った顔をしてるように見えた。
アズマという女の入部は、結果的に天文部に大きな変化をもたらした。
『この腑抜けた部活を、超面白い部活に変える!』との第一声を残した彼女は、持ち前の奇天烈な活動力によって形だけの抜け殻部活を得体のしれない不可触部活にしてしまったのだ。
簡単にその業績を述べるなら、放送室をジャックして昼の落語拝聴会を開催、学校中の延長コードをかき集めて中庭に電灯魔方陣形成、文化祭にてフラッシュモブならぬフラッシュサスペンス劇場を実行、エトセトラエトセトラ。
おかげで、かつて十余人を持て余していた天文部に所属しているのは、今日ではアズマ本人と物好きのミナミ、抜けるタイミングを失った俺の三人になっている。
しかも辞めていった元部員に対して当の元凶は『根性がなかったのよ』でバッサリだ。実に無慈悲なことか。
そんな悪魔の皮を被った変態のアズマが、
「今日は何の日かわかる?」
六人がけのテーブルに腰を落ち着けた俺たちに、ホワイトボードをコツコツ叩いてたずねてきた。
どうでもいいけど六人がけでまだまだ席は空いてるのに、なんでミナミは俺の横に座るの?
「何かの記念日だったか? 桃の節句は先週だったろ」
「アレじゃないかな、流星群。最近テレビでよく言ってるでしょ」
「さっすがミナミ君! 部長として鼻が高いわ! それに比べてセイは……」
アズマはどうしようもないと諦めたように肩をすくめる。おい、残念なものを見る目で俺を見るんじゃない。
「いや、俺だってそれくらい知ってたさ。ただ、アレ今日だったっけか? てっきり週末あたりとばかり思っていたが」
「今日よ。とぼけちゃって。本当は忘れてたんでしょう? 天文部としての自覚が足りないんじゃないかしら」
自覚なんて高尚な代物、適当な志望で入部した俺には始めからない。
今列島の注目はラテラテ流星群に集まっていた。
ラテラテ流星群が日本で見れるには実に多くの条件が必要な為、千年に一度しか現れない非常に珍しいものなのだという。
連日テレビのニュースでは、どこのチャンネルを見てみてもアイドルコメンテーターが満面の喜色を浮かべて『こんな珍しいものがある時代に生まれて幸せです』と代わり映えしないコメントを繰り返している。
この千年に一度の珍事は、はたして当初の予想よりも俺たちの生活に大きく影響しているようだった。
なんと言っても天文部ではあるが天体に関して微塵も興味がない俺が、頭の片隅の『その他』のフォルダに分けて記憶できているのだから驚きだ。
アズマは嬉しそうに、今度はさっきよりも強くホワイトボードを叩いて、
「で、当然私たち天文部がこんな滅多にない超チャンスを逃すわけにはいかないわ! そこで!」
キュッキュッと素早くペンを走らせると、
「天文部は今夜、流星群観測会を開催します!!」
流麗な字で『流星群観測会!!』と大きく目立つように書いた。
「待て、待て待て待て。流星群観測会だ?」
「なによ。なんか、文句でもあるの?」
「大ありに決まってる。なんでわざわざ夜集まって、星を見るだけなんて面白くない事をせにゃならんのだ」
流星群が見られるのは、当然ながら夜だ。夜は俺のプライベートタイム。部屋でゴロゴロゲームしてる方が有意義なのに。
「面白くないとはなによ。私たちは天文部なんだから、天体イベントを積極的に行うのは当然のことじゃない。むしろ、流星群を見ないで天文部は名乗れないわ」
「それぞれの家で、各々自由に見れるだろ」
「みんなで見ることに意義があるのよ。一人ぼっちでどうしてたかが星なんか見なきゃいけないの?」
お前こそ『たかが星』とか言っちゃっていいんですかぁ?
「時間は? こんなこと言い出すんだ、知らないわけじゃないだろ。流星群は夜中に来るんだぜ」
「そんなの些細な事よ。夜中だろうと朝だろうと、星を見るのに時間なんて関係ないわ。ま、夜が更けたら狼にでも変身しちゃうってことなら、考えなきゃかもだけど」
仮初にも男女が夜中に会うなんて、普通の女の子ならむしろ嫌がって然るべき状況、お前はなんでこんなにノリノリなんだよ。
と、それまで俺とアズマのやり取りをお菓子をつまみながら静観していたミナミが、申し訳なさそうに手を挙げた。
「ちょっといいかな。その、観測会をやるとして開催地はどこなの? ここら辺は町中だから、人気のない場所が見やすいとは思うんだけど」
女子に向かって『人気のない場所』を提案するなんて、普通の一般男性ならどうしたって下心が見え隠れする物だというのに、この男は表情ひとつ変えずに述べてしまう。
都合が良かったのでミナミの意見に乗っかることにした。
「そうだ場所だ! 悪いが俺んちは無理だぜ。立地が悪い」
「僕もダメかなー。夜は姉さんや妹が組の集会やってるし」
何の組の集会なのか気になるけど、聞かぬが仏だろう。少なくとも一年一組、なんて温いものではなさそうだ。
「私も無理よ」
「お前もかよ! ともかく、場所がないなら出来ないじゃないか! 残念ながら計画は頓挫って事だな」
場所がないのに開催できる道理はない。おそらく中止になるだろう。普通ならば。
しかし、観測会を発起したのは他でもないアズマである。
アズマの事を、深くよくとまでは言わないまでも、赤の他人よりは知っていると思う俺にしてみれば、彼女が簡単に引き下がるとは到底言えなかった。
現代のはみ出し者にして、永遠の夢追い少女。深い知的好奇心と、貪欲な探求力と恐ろしいほどの実行力を兼ね備えた、子供。
そんなアズマが、この程度の問題で引き下がるわけがない。
案の定、ペンを置いた彼女は何かありそうな顔でニヤリと笑うと、チッチッチと指を左右に振ってきた。
「セイ、アンタも気が早いわね。私は、家がダメって言っただけ。場所がないなんて一言も言ってないわ」
「『私も無理よ』は、全否定に近いと思うんだが」
「知らない」
「おい」
「とにかく! 安心して、場所はもう準備してあるの! 別に変なところじゃないわ。みんなもよく知ってる場所よ」
みんなもよく知る場所、ねぇ……。
「もったいぶらずに教えてよ」
「ふふん、ミナミ君もせっかちね。聞いて驚きなさいな。きっと意外すぎて私の素晴らしさに惚れるわよ」
「「それだけはない」
「あれえっ!?」
「で、どこなの?」
意外と興味があるのか、体を机に乗り出して目を爛々と輝かせるミナミを見て気分が良くなったアズマは、したり顔で地面を指差し、堂々と言い放った。
「ここよ、学校の屋上」
……………………。
「いやいやいや、待てよ。俺の聞き間違いでなかったら、お前今『学校』って言ったか?」
「安心なさい。ちゃんと『学校』で合ってるわよ」
「はぁ?」
この女いっつも滅茶苦茶だが、今日はいつにも増して破茶滅茶考えてるぞ。
「ないないない。それはないだろ」
「何がないのよ。一番アリでしょ? 山奥で騒いでも怒られない、街灯も少なくて星空も綺麗、みんなが知ってて、周囲も静か。これ以上どこが適切だってぐらい条件ジャストね!」
「なーにが『条件ジャストね!』だ。だいたい許可は出たのか?」
「全然」
「じゃあダメじゃないか。こう言うのって事前に許可がないと使用できんだろ」
地域によって高校のあり方は千差万別だが、どこを見回しても夜の学校に許可なしで集まってよし、なんてイカれたルールを採用している所はない。
「それに、流星群がくるのは夜中なんだぜ? 屋上に鍵もかかってると思うんだが?」
「いちいち細かいこと気にするわねー。そんなもん壊せば良いのよ、壊せば」
「ダメに決まってんだろ!」
って言うかその口ぶり、鍵壊せるのかよ!
「ま、とは言ってもセイの心配もわかるわよ。もしも忍び込んでる所を誰かに見られたら、そのクールさにファンクラブが出来てしまって困っちゃうものね」
警備員さんにこってり絞られて、教師陣に目をつけられるんだよ。
ファンクラブが出来るなんて妄想は、間違いなく間違いだ。
「そこで二人には、もし万が一見つかっても大丈夫なように、コレをつけてもらうから」
言うとアズマは、物がパンパンに詰まった通学鞄の中から板切れを二枚出し俺たちに投げ渡した。
「何だこれは?」
「見て分からない? 仮面よ仮面。盗賊といえば、クールな仮面……よね!」
「盗賊つってんじゃねぇか!!」
というか、この仮面(?)はどう見ても板を適当に切った代物以上には見えない。まさか自分で作ったんじゃないのだろうか。
とりあえず仮面は鞄の中にしまっておこう。
和歌丸くんが呆れてるようだった。
「顔が隠れててもさ、結局捕まっちゃったら意味ないよね」
「そ、そうだよ! 捕まっちまったら、顔隠してても元も子もねーじゃん!」
だが、アズマの余裕は崩れない。
「ふっふっふ。二人ならそう心配すると思って、作ってきましたスライム玉!」
次に得意げに鞄の中から青っぽいボールを取り出して、今度は慎重に俺たちの前に並べる。
俺はそれをおもむろに取って、
「何だよスライム玉って」
「文字通り、衝撃を加えたらスライムが飛び出る仕組みなの。やっぱりビックリアイテムでスライムの右に出るものはないわよね」
「なんて凶悪なもんつくってんだ!!」
悪魔の魔道具じみた嫌がらせ兵器を、俺は静かに和歌丸くんの横に置いた。
和歌丸くんは隣に置かれたスライム玉に、怯えているのだろうか。
すると、隣でプルプル震えていたミナミが、我慢の限界がきてしまったのか、机を強く叩いて立ち上がった。
「アズマさん……、これはいけないよ。こんなの、こんなの……」
「そうだミナミ! このわからず屋に一言ガツンと言ってやれ!」
「…………こんなの、面白すぎるじゃないか!」
「そうだそうだ! こんなの面白すぎってえぇ!?」
「そうでしょそうでしょ。やっぱり私は素晴らしいって事なのよね」
「でも、せっかくの観測会なんだからお菓子の一つでもあった方がいいと思うな」
「ん、それもそうね。準備万端かと思ったけど、そうでもないのかも」
「安心して。お菓子は僕が準備するよ。親戚のおばさんから青森土産のりんごクッキー貰ったんだ。みんなで食べよう!」
ミナミはこちら側だと思ってたのに、なんだか裏切られた気分だった。
「というか、まだ俺は行くとも言ってないんだが」
「あ、そうだ!」
「聞けよ!」
「忍び込む時に警備員さんに見つかったら厄介だけど、それはどうするの? 流石に適当に勘を頼るのは不安だな」
「なんで忍び込む事前提なんだよ」
この二人思考の方向がドンドン悪に染まっていってる。
不安げに眉をひそめたミナミの肩に優しく手を置いて、アズマは反対の手でサムズアップした。
「ソレに関してはアイデアがあるわ。セイ!」
「ん?」
「あんた————————」
「はぁ!? ————————!?」
「そ、————————、って事でよろしくね!」
「おい、いくらなんでもソレは……」
「それじゃあ、今日の夜十一時に校門前集合。各自一旦帰宅して、準備に取り掛かるわよ!」
「おー!!」
元気よく声を揃えると、二人はサッサと荷物をまとめて一目散に帰っていった。
部室に一人残される。誰に聞かせるわけでもなく、ただ確認するように呟いた。
「…………なんてこった」
侮ってた。十分に警戒し過大評価と思えるぐらいに頭おかしい認定していたが、まさかここまでとは。
気がつけば西の空が茜色に染まって、夕焼け小焼けのメロディーが街に響いていた。
和歌丸くんの仕方ないような顔が赤く染まっている。
時刻は午後五時を回ったところだった。
良い子は眠り良い夢を見る、午後十時半の少し前。
家を出るところで居間で寝転ぶ母親に声をかけられた。
「あら、征治。こんな時間にどっか行くの?」
「ん? まあな。ほら、今日流星群があるだろ? アレを見に行くだけだよ」
「あー、そういえばそんなものもあったね。車には気をつけてね」
テレビに釘付けの母を背にして、一人月夜へと繰り出した。
もうすぐ四月だというのに、相変わらず外の空気は冷え込んでいて、吐く息が白いモヤを作って宙に漂っていく。
幸いというか不幸にもというか、今夜は気持ちいいほど晴れていた。
見上げると満天の星が宝石箱のようで、思わず顔がほころぶ。
うちから学校までは歩いて二十分ほどかかるので、十分前にはなんとか着けそうだ。
和歌丸くんは家に置いてきた。
放課後の電撃告知からまだ六時間ほどしか経っていない。本来ならこんな時間に出歩く事もなかったのに、なぜ俺は黙々と学校目指して歩いているのか。
考えてみれば、いや、わざわざ考えなくてもアズマにはいつも振り回されてきた。
時には誰もが驚き呆れ、時には誰をも魅了する摩訶不思議な魅力を持った女の子。
陽気で、想像外で、疲れるけど楽しくて、危なっかしくて、目を離さずにはいられない。
迷惑で、でもかけがえのない、世界で一番の友達。
ダメだ。夜はいけない。考えなくてもいい事まで表に出てしまう。
そう、何だかんだ言いながら、俺はやはりアズマを気に入っているのだった。
校門前にはすでに二人が揃っていた。腕時計を見るとまだ予定時刻まで五分ある。
少々遅くなったとはいえ、まだ遅刻ではないか。
「あ、セイ遅い! 待ちくたびれたわ!」
「まだ遅れじゃねぇだろ」
「セイくん、こんばんは」
「おう、ミナミも早いのな」
「僕もさっきついたところだよ。アズマさん、一時間前から待ってたんだってさ」
「一時間って、冷えるだろ」
「そのくらい平気よ」
プイとそっぽを向かれた。心配するのがバカらしくなる。
「それじゃあ全員揃った事だし、そろそろ行きましょうか」
アズマを先頭にして、一列に校舎裏へと回り込んだ。
うちの高校は、セキュリティが緩い代わりに周りを古ぼけたフェンスが囲み不審者が入り込めないようにしている。
アズマが先導してくれたのは、そこの一部がちぎれて人一人分通れるほどの穴が空いている場所だった。
「これじゃあ不審者も入り放題だな」
「二人とも、ここから侵入するわよ。私についてきてね。あ、フェンスのそこ、ちぎれて尖ってて危ないから気をつけなさいよ」
「はーい、了解です隊長!」
「もっと安全な場所はないのか」
くぐり抜ける時、尖ったフェンスの先が着てきた上着に刺さりかかった。危ない。
「よしっ、第一障壁突破ね! じゃあセイ、私とミナミくんは西トイレに向かうから、手筈通りしっかり頼んだわよ」
「ゴメンね、変な役目押し付けて」
そう思うのなら代わってほしい。
俺の返事を待つ間も無く、二人はそそくさとトイレの方に向かって行った。
西男子トイレの窓は鍵が壊れていて閉まらないらしく、どうやらそこから入るつもりらしい。
俺は二人の背中が曲がり角で見えなくなるのを確認して、ぽりぽりと頭をかいた。
「仕方ない……。やるか」
嫌々だが、もう諦めて子供らしく仕事に取り掛かろう。
アズマの考えた作戦はこうだ。
まず俺が大声を出して警備員の気をひき、その隙に二人が校舎に忍び込む。
その後適当なタイミングで俺も合流する。
大声を出さない組にとっては、非常に素晴らしい作戦だろう。
が、正直負担が重すぎる。俺だけバレて捕まる可能性が段違いだ。
やりたくない、非常に気がすすまない。
しかし、その反面、この状況を楽しいと思う俺がいるのも事実だった。
実に不思議ではあるが、納得できないものではなかった。
それがなぜか、今の俺ではわからない。
きっと十年後ぐらいにわかってくるものなのだろう。
「…………そろそろかな」
叫ぶタイミングは二人と別れて十分が目安だ。
スマホを取り出して時間を確認する。
ジャスト午後十一時十分。いい具合だな。
「こういうのこそ、条件ジャストっつーんだよ……」
万人を魅力する綺麗な月夜に、俺は校舎の前に立って拳を強く握りしめる。
そしてトイレの前で息を潜めているであろう二人に聞こえるように、大きく息を吸い込んで、叫んだ。