白哉の夢
また、同じ夢を見た。
僕が明里と過ごした夢を。
彼女は夢で僕に微笑んでくれていた。
幸せな夢…。
目覚めると僕は一筋の涙を拭った。
そこは、ひとりぼっちの小さな部屋。
シングルベットから立ち上がり、身支度を始めた。
何も無い日常。何もない毎日。
繰り返す間に忘れていく君との思い出。
失いたくないと思いつつ、否応無く薄れていく現実。
君を失った痛みごと、愛して生きていきたいのに…。
そう思いながら、眠る前に君に会いたいと願う。
そんなある夜だった。
いつも通りに君は僕と2人で歩いていた。
僕の手を握って、僕の隣で。
「ねぇ、白哉は私といて、悲しくないの」
そんなことあるものか、君と会える時間が一番の幸せだもの
「そっか。嬉しいなぁ。でも…」
でも?
「それじゃダメだよ。」
なんで?
「だって私、白哉と一緒に歳をとれないでしょ。」
彼女は続けた。
「私ね。2人で結婚して、子供を育てて。子供が独り立ちして。貴方がお仕事引退して。2人しておばあちゃんとおじいちゃんになってね。こうやって手を繋いで、しわくちゃになった顔、もっとしわくちゃにして、一緒に散歩するのが夢だったんだ。」
いいねぇ、それ。
「でもね、私。もう叶えられないから。」
うん…
「白哉だけでも、私の夢、叶えてほしいんだ。」
でも、俺は…
「私からのお願いでも…ダメ?」
ズルイよ…それは…。
「そうだね、私はズルイ女よ。でも、白哉には幸せになって欲しいの。私を思うなら…。ね。」
わ、わかったよ。努力してみるよ。
「よろしい。」
明里は僕の手を離し、数歩先で振り返った。
久しぶりにみる明里の鮮明な笑顔だった。
「約束だよ。」
僕は頷いた。
「だから、今日でお別れ。」
えっ?
「さよならは寂しいから…。またね、白哉」
そう言って、明里は光になって消えていった…
「明里…。」
僕はいつもと違う夢を見た。
本当の明里と話したみたいだった。
僕はいつもより濡れた顔を拭って、2回頬を叩いた。
わかったよ。明里が嫉妬するくらい、幸せになってやる。
約束だ。
頬を強く叩きすぎたかな?涙が止まらない…。
僕の短い昔話はこれでおしまい。
これが僕です。
今は君が一番好きです。
別の女の子との約束もひっくるめて、君を幸せにしたいんだ。
えっ?その子が一番なんじゃないのかって?
いや、これはもう僕の一部で、彼女は大切な思い出だよ。
僕の1番はあくまで君だ。
結婚してくれないか?
その夜、久しぶりに明里の夢を見た気がした。
膨れっ面で、僕を睨みつけ、そのあと笑って
「ありがとう。」
そう言ってた気がする。
朝起きると、隣に君がいた。
君の頬を少し撫でた
何も無い日常、何もない毎日。
それを嬉しいと思える。
きっとそれを幸せって呼ぶんだね
無理やりこじつけてやってみましたが、もしたのしんでいただければ、幸いです。
お遊びなので、何卒お許しを。(笑)