のんびり死体は、魚釣りが好きだ。
吸い込まれそうな青い空と、何処までも続く海。
今日はいい天気。
海って、海ってだけで、海だ。
最高だ。
何処かで魚の跳ねる音が聞こえる。
大物の予感がする。
波止で、荷物を下ろしながら思う。
ドキドキとワクワクで、手がせわしなく動く。
さぁ、魚釣りを始めよう。
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僕が本格的に魚釣りをするようになったのは、ここ数年のことだ。
中学生くらいの頃にブラックバスを釣るのが流行った時以来、ずっと釣り竿を握ることは無かった。
職場に偶然釣り好きの人がいて、なんとなく話を聞いていたんだけどね。
そんなに面白いものなのかなぁと、そのくらいで聞き流していた。
それなりに道具も揃えないといけないだろうと思っていたので、お金がかかるのであればと敬遠していた部分もある。
「サビキ」であれば、3000円も出せば十分だよと言われても、半信半疑だった。
まぁ、それは本当だったのだけれど、でも先々は嘘でもあったりする。
この辺はおいおい説明しよう。
まずは、サビキって何かを説明したい。
サビキっていうのは、子供でもたくさん釣ることが出来たりする、ものすごく画期的な釣り方だ。
針に小さなピンクの布が付いていて、エビに似せてある。
それを水中でひらひら動かすだけで、魚が釣れる。
一種のルアーのようなものだ。
嘘でしょっておもうかもしれないけれど、そんなものだけで本当に釣れる。
めちゃめちゃ簡単に釣れる。
嘘でしょってくらい釣れる。
ただ、釣れる場所と釣れる時間があるらしく、その辺はネットとかで確認しないと、一匹も釣れないこともあるので要注意。
たくさん釣りたいなら、魚を集めるために餌を使う。
ちいさなプラスチックの籠に、アミエビと呼ばれる細かなエビをたくさん詰めこむ。
その籠をサビキの針が付いた下のほうにぶら下げて、一緒に海に投げ込む。
ひらひらと海中にエビが舞って、小さなアジやサバが寄ってくる。
そして、間違ってサビキの針を齧る。
そしてぐいぐいと釣針をひっぱるのだ。
海の魚は力が強い。
手元にびくびくと魚の動きが伝わってくる。
竿先がきゅっと引っ張られる。
緊張で、心臓がキュンとする。
リールを巻いて引き上げる。
一度に何匹ものアジが吊り上がる。
これが、キラッキラしとる。
キラッキラやで。ほんま。
どんな怖そうな顔のおっさんでも、退屈で拗ねたクソガキでも、行き遅れの女の子でも、魚が釣れると笑顔になる。
これ、マジだから。
僕が初めてサビキをした時の話をしよう。
誰かが興味を持ってくれたらうれしい。
道具は釣り具屋で、1980円のセットを購入。
1.5Mほどの短い竿に、おもちゃのようなリールが付いている。
仕掛けと呼ばれる、針や籠もセットになっていた。
それに250円分のアミエビを餌として購入。
釣り具屋で買ったセットの裏に、説明書きが書いてある。
とりあえずリールの糸を竿に通して、サビキの仕掛けをつける。
餌をかごにほりこんで、わくわくしながら投げ入れる。
入れた瞬間、竿がぐいぐいと引っ張られる。
慌ててリールを回すと、20CMほどのアジが3匹ほどつりあがる。
慌てて、魚を外し、とりあえず入れ物を探す間、海に仕掛けを落としておこうとする。
その間に魚がかかって、竿をぐいぐいと引っ張られる。
足元には鯵が何匹もぴちぴちしている状態で、どんどんと釣れる。
とりあえず、飲み物を買ってきたときのビニール袋に魚をほりこんで、次々に釣りあげる。
1時間もしないうちに、袋はパンパンになる。
興奮も冷めないうちに、魚が痛むことを恐れて家に帰る。
釣った魚は食べれると聞いてはいたけれど、正直店で売っているものでないと少し心配になる。
不安に思いながら、網で塩焼きにして齧ってみる。
自分で魚を焼くなんて久しぶりだなぁと思いながらも、ドキドキしながら手を伸ばす。
「めっちゃうまいんですけどー。」
いや、本当に美味い。
塩をかけて焼くだけで美味過ぎマンボーである。
いや釣ってきたのは鯵で、マンボウではないのだけど。
スーパーで買った魚も不味くはないけれど、自分で釣った魚はその3500倍は美味い。
※当社比です。
満腹になると、思ったより疲れていたのだろう。
すぐに眠気がやってくる。
慌てて風呂に入り、体についた、海と魚のにおいを落とす。
そして、湯舟につかりながら思う。
次の休みも、絶対行こうって。