第7話1ヶ月後…
シンリとユウ
彼らがいる国、日本
シンリとユウがファミレス強盗に巻き込まれてから1ヶ月が経とうとしていた。
2人はその強盗が来たファミレスにいる
その1ヶ月前の日と同じ席に座って…
「なあユウ」
シンリはミックスジュースを啜りながらユウに喋りかける
『何?』
ユウはパフェを食べてる所だった
「あの時のさぁ、強盗どうなったと思う?」
『あの強盗?』
ユウはまるで何も知らないように聞き返した
「ほら、ちょうど1ヶ月ぐらい前にいたじゃん」
『なんだっけ?』
ユウは本当に知らないようだった
それを聞いたシンリは少し呆れてしまう
「まあそうだよな、お前は覚えてないよな…」
シンリはユウのその記憶力のなさをあらためて感じた
『そう言われると思い出したくなる』
ユウは必死に思い出そうと頭を抱える
「じゃあ、俺がドリンクバーから帰ってくるまで思い出して」
シンリはコップを持ってドリンクバーのほうへ行ってしまった
2人は学校の下校途中で小腹がすいたので駅前のファミレスに寄った
もう夕方の6時すぎで、日は沈み始めている
5月中旬の季節はとても中途半端で、暑いような日が続くと思えば夜には毛布が手放せないこともある
ユウはまだ頭を抱えながら考え込んでいる
『強盗?いつ?そんな奴いたか?もしかしてシンリの悪質な冗談じゃないのか?』
どうしても思い出せない
負けず嫌いのユウはそれが許せなかった
ふとシンリが妙に帰ってくるのが遅いことに気づく
『なにしてんの?あいつ』
ユウはドリンクバーのほうへ顔を向ける
まず、ドリンクバーのほうを見るがだれもいない
『あれ?』
ドリンクバーに行ったはずのシンリがいない
それと店内の空気が妙に張りつめていることに気付く
さっきまでひたすら話していた中年のおばさん達は話すのをやめ、ひたすら下にうつむいている
『あれれ?』
ユウはレジカウンターのほうへ向く
まず視界に入ったのは、両手を上げているシンリ
いかついナイフを持ったサングラスの男
店員はガタガタ震えながらレジの中身を取り出している
『…あ!なるほど思い出したよ!』
つい声が出てしまう
「誰だ!今喋ったやつは!!!」
サングラスをかけた男が大声を張り上げる
ユウは慌てて身を隠す
「おい!そこの席の奴!!そこだよ!64番だよ!!」
席まで名指しされるとさすがに出てこないわけにはいかない
『は、はい?』
ユウは席から立ち上がった
「こっちへ来い!」
『え?』
「こっちへ来るんだ!!!」
ユウは逆らえなかった
なぜなら今は人目が多すぎたのだ
つまり〈能力〉は使えない
この状況はシンリも一緒だった
シンリとユウは眼で会話する
゛どうすんの?゛
゛知るか!゛
シンリはガムテープで手を縛られている
ユウも手を後ろに回されて縛られようとしてる
「こ…これで全部です…」
店員は震えながら札束をサングラスの男に渡す
「お、けっこう儲かっているじゃねえか」
サングラスの男は一万円札の束をポケットに入れる
「さて、そろそろとんずらするか」
サングラスの男はドアノブに手を掛ける
バン!
ドアが勢いよく開く
「何をしてるんですか!?」
外から金髪の背が高い青年が入ってきた
「邪魔だよ」
サングラスの男はナイフを振り回す
「おっと!」
青年は後ろに下がる
「あなたは間違いを犯してますよ!今からでも遅くない、自首してください!」
サングラスの男が後ずさりする
この光景をシンリとユウは遠い目で見ていた
「なあユウ」
『何?』
「変なの来たけど…」
『あいつ、すごくめんどくさそう』
「眼が輝いているもんな」
『正義の味方って面だよ』
「あ〜あ、もうちょいで人質解放だったのにまだ人質続けなければならないのか…」
シンリはガムテープを取ろうと頑張っている
「どけぇぇぇ!!」
サングラスの男はブンブンと音を立ててナイフを振り上げる
「はっ!ほっ!」
青年は声を上げながらそれを避ける
サングラスの男はナイフを突き立てる、これはさすがの青年もよけられない心臓へ向いていた
「死んだな」
『かわいそうに』
2人は特に興味なさそうに言った
ガッ!!
青年とサングラスの男の死闘を見守っていた客や店員は目をつぶる
ところが血は床に滴らない
シンリとユウは不思議そうにナイフを見る
青年の指から植物の蔓のようなものが出てナイフに絡みついている
「ハアッ!!」
青年が声を張り上げると蔓はサングラスの男の手に絡みついたと思うと男の体が宙に浮く
「うわぁぁ!!」
サングラスの男は投げ飛ばされひっくり返る
「確保!!」
シュルシュルと音を立てながら手首に巻きつく
「何だ何だ?」
男はなにが起こっているのか理解できていない
青年はシンリとユウを見る
「あ、こっち見た」
『目を合わせないように…』
そう思ったユウの顔に青年は急接近した
『うわ!!』
「大丈夫かい!?」
青年は輝くような笑顔で聞く
『ま、まあね…』
「それはよかった」
青年はほっとした顔をすると今度はシンリのほうへ向く
「大丈夫かい!?」
「あ…ああ大丈夫だよ!そんな顔近ずけなくてもいいから」
「大丈夫じゃない!」
「へ?」
「君、手を縛られているじゃないか」
「だ、大丈夫だよ!自分で取れる!」
「ダメだ!肩を外したらどうする?あ、君も縛られている!」
『いや!いい!自分でなんとかするから!』
「ああ、大丈夫だよ!優しくするから!」
『やめろぉぉ!!!』