第二話ハンバーグセット
シンリとユウが向かっている所は駅前のファミレスで、昼間は混んでとても入れないが深夜は人は少なく、さらに夜学生が来ても入れてくれる優しいファミレスなのだ
ヴィーン
「いらしゃっいませ〜」
明らかにやる気のなさそうな店員だった
「さて、何食べようか」
『もう俺は決まったよ』
ユウはすかさず呼び出しボタンを押した
ピンポーン
「何になさいますか?」
『ハンバーグセットで』
「食べるねー」
『リッチですから』
ユウはフッと笑い、せかすように机をトンッと叩いた
「イタリアンハンバーグセットであと、ドリンクバー」
シンリはこれでいいですと店員を戻した
『リッチだね』
「一応兄貴ですからね」
『金あんの?』
「ん……まあ一応兄ですから、それともトランプで決めるか?」
ユウがもう勘弁だ、という顔をした
「冗談、ドリンクバー取ってくる」
シンリはカウンターのほうへ向かった
ユウは頬杖をつき、外を見た
夜の街はとても静かで昼間の活気はなく道路には泥酒した中年男が寝てるぐらいだ
ユウはフウッとため息をつく
(飯の作る奴を決めるだけで一時間以上トランプをやり、挙げ句の果てに一緒にファミレスに行く兄弟なんていんのか?仲良すぎだろ)
と心の中で思いドリンクバーのほうを向いた
『あれ?』
ドリンクバーを取りに行ったはずのシンリがレジカウンターの前にいる
そしてなぜかドアの前に黒いサングラスを掛けた男がいる
その手にはナイフと拳銃が握りしめてあった
『うわ、なんてベタな…』
シンリが両手を上げてユウのほうを向く
それはもう兄弟同士のテレパシーとしてつながっていたかのように二人は目で会話する
「(なんか来たんだけど…)」
シンリはこれ以上ないくらいめんどくさそうな顔をしている
「おい!誰かいんのか!?」
強盗らしき男はこっちを見た
ユウは慌て身を隠した
『(め・ん・ど・く・せぇ〜なにあれなんなの?やべ〜)』
ユウはもう一度見た
シンリは強盗に手を縛られながらこっちをチラッと見る
その眼はいつもの兄ではない命令的な眼をしていた
その瞬間ユウは即座に感じとった
『(マジで?)』
「(やれ)」
ユウはもう一度身を隠す
『あー、あーゴホン』
『よし』
バッ
ユウは席から身を出した
『す・いませーん』
「誰だ!」
『お客様で一す』
サングラスをかけた男はユウの姿を見るとにんまり笑う
「いい度胸だなわざわざ捕まりにくるとは、だが正義ごっこはやめといたほうがいいぞ」
『こんな深夜にファミレス襲うほうがよっぽど度胸あると思いまーす』
「なんだと」
サングラスをかけた男の顔がピクッとひきつった
『てゆうか、ハンバーグセット食ってね〜タイミングが悪すぎる』
「ああん!!?俺を怒らせたいのか?」
『そう、正解!伊達に鉄砲持ってるわけじゃないでしょ』
「このガキ!」
キレたサングラス男が発砲した
弾はユウをかすめ、奥の窓に当たる
『フフッ…へ・た・く・そ』
「このガキ死んじまえ!!」
男は三、四発連続で発砲した
弾丸はユウへ一直線に向かう、その弾丸は横にも逸れず外れたわけでもなかった。
『それだけか?』
「な・に?」
男が発砲した弾は空中で静止している、ユウは男を見据えた
左目の瞳が白く変色し、その眼は男のすべてを否定するような眼だった
「く、来るな」
男は撃ち続ける
だが撃った弾すべてが時が止まったように空中で静止する
「なんだ?お前はなんなんだ!」
『ん〜そーだなーあえて言うなら〈新人類〉かな』
「ク、クソ!」
男はナイフを振りかざしシンリに突きつけた
「こいつがどうなってもいいのか?これ以上来るな!」
「どうなるんだ?」
男が持っているナイフをシンリの手が掴んだ
「お、お前は縛ったはず」
「消したよ」
「!」
シンリが掴んだナイフは端から消えていく
「な!?」
男が唖然としている
次にシンリは銃を掴む、
それもまた端からまるで水が蒸発するように消えていった
「ヒ、ヒイ」
男が逃げようとする
たがシンリはそれを逃がさない
「あと、サングラス似合わないぞ♪」
シンリがサングラスにソッと触れた
するとサングラスは消えていった
男はヘタッと倒れこむ
「脅かしすぎたかな」
『怖かったー』
ユウがやれやれという手振りをした
シンリはキッチンのほうを見た
奥のほうで店員が震えている
「あ、あーハンバーグセットとイタリアンハンバーグセットお願いね」
シンリは男を見た、もはや腰を抜かして放心状態であった
「よし運ぼう」
『手伝うよ』
シンリは強盗男の首をチョップで叩く
すると男は気を失い倒れた
『ヨイショッ重いな』
ユウとシンリは男を担ぎ外に出す
「さて、どこに置く?交番に置いとく?」
『シンリが凶器消したからこいつはただのおっさんだよ』
「あ、そうか」
『じゃああそこに置いとこうか』
ユウが指を指した所に泥酒した中年男がいる
それを見たシンリはニヤッとして言う
「なるほど、優しいなユウは」
まだまだ長い話なんで気長に読んでってください