第9話 駅前での変化
「マテマテマテ、なんでそうなる?」
「上からの命令なんです、あなた方をこっちへ取り入れ仲間にする」
『拘束ってなに?仲間にするんじゃないの?』
「だから君らが素直になればいいんだよ!」
「お前は喋んないでくれ」
『家で能力とか使うなよ』
そんな二人の言葉も聞かずにセイヤは手を前に出した
「とりあえず、君らは縛っておくよ〜」
セイヤはにこやかにシンリとユウを見た
すると手から草の蔓のようなものが飛び出す
「ユウ!!」
『ああ、わかってるよ!』
ユウの左目が白銀に変わり、シンリはユウを掴む
だが、セイヤの手から飛び出す蔓は二人の目の前まで迫ってきていた
「なにを・・・?」
キイイイィィン・・・
ユウが手を一振りすると二人は一瞬にして消えた
「えっ!?」
セイヤは急に消えた二人に驚く、一方リュナは辺りを見回す
そこには誰もいない居間が見えるだけであった
「瞬間移動[テレポート]ね・・・もうそこまで使いこなしている、この短期間でそんなことができるはずがない・・・」
「ほっんと、どういうことなんだろうね」
蔓をもう消したセイヤはため息をつく
「世界変動が起きてまだ二ヶ月ちょいしかたっていないはず、その期間もいれても成長しすぎだわ・・・」
リュナは小さい手をあごに当てながら考えこむ
するとハッとしたように天井を見た
「まさか・・・」
「ふう、危なかった」
『こりゃあ明日も寝坊だな』
二人はある町の路地裏に来ていた
「はあ、めんどくさいことになったな」
『そうだね・・・』
二人は深いため息をついた
「さて、これからどうするかユウ」
『う〜ん、そうだね〜』
ユウは手をアゴに当て、路地を抜けたところの道路を見る
『とりあえず、人ごみに混じっとく?』
「ああ、そうだな」
二人は路地を出た
ちょうど駅の近くだったのでシンリとユウは通勤や通学で動き回るサラリーマンや学生のなかに身を隠すことにしたのだ
=「ちょっとまじでぇ!?」===
==「あっ、はい今から会社に向かうところです!」===
===「ああ〜テストの結果超ワリィよ・・・」===
====「えっとこの案件は、知崎君に任せちゃっていいね?」===
「・・・」
『・・・』
人ごみの中、二人は駅のそばにあるベンチに座っていた
「やっかましいな・・」
『まあ、時間帯がそうだからね』
「しかし、奴らはなんなんだろうな?」
『わかんないな〜、でもあいつら“能力者”なんでしょ?』
「そうみたいだな、あのセイヤってやつは手から植物の蔓みたいのだしてたな」
『・・・ジョ○ョじゃないんだから・・・まあ、でもあいつはたいしたことはなさそうだね』
シンリはうなずく、二人が見た限りではそうだったのだ
「・・・だがあの小さい女の子、リュナだっけ?あんな小さいのにあの人格・・・おかしいな」
『うん、あれはどうみても幼稚園児の人格じゃないな〜しかもあの格好、真っ赤なドレスってすごいな』
キオスクで買ったジュースを飲みながら二人は行き行く人々をボーっと見つめていた
しばらく時間が経ち、朝の9時30分ぐらいになり人がまばらになってきた頃
ベンチに座る二人から2、3メートル離れたとこで話していたOLの一人がふと気がついたように遠くを見つめ、もう片方のOLに驚いたように話す
==「見て、あれ外国人?あ、あの子の格好かわいい〜まるでお人形さんみたいね」==
==「ウソウソ、どれ?あの男の子はお兄ちゃんかな?ちょっと濃いけどかっこいいカモ・・・」==
「!・・・あいつらか」
『・・・しつこいな』
二人はOLの視線の先を見た
金髪に明るい笑顔、背は普通の人よりは高い青年と
その隣にいるのは赤いドレスを着た、幼稚園児ぐらいの女の子だった
「クソ、逃げるぞ」
『りょーかい』
シンリとユウは立ち上がり、回れ右をして立ち去ろうとする
「逃がさないわ・・・」
リュナは右手を前に出した
その青い目の先にいるのはシンリとユウ
「なんだ?・・・これは」
『まさか俺と同じ・・・念動力[サイコキネシス]か?』
「これは消せないんだ・・・クソ、動けない」
二人は見えない鎖に縛れたようにその場で立ち尽くす
「ん〜、やっと捕まえた〜」
「あんまり世話を焼かせないでください、上に怒られるのは私なのだから・・・」
セイヤとリュナはシンリとユウの前まで来た
「どこかに連れていく気か?」
シンリは反抗的な目つきで二人を見る
リュナは自分が持つ手提げかばんの中から懐中時計を取り出す
「ちょうどいいあなた方がここらへんに逃げてくれてよかったの、ここで私たちの仕事を見てもらえるわ」
『・・・仕事?』
「そ、もうちょいで予定時刻だよ・・・あ、出てきた出てきた」
セイヤが駅の入り口を指差す
「?」
『?』
「・・・やめてくれ!違うんだ!」
「はいはい、言い訳は署で聞きますからね〜」
駅から出てきたのはスーツ姿に頭が円形状に禿げたいわゆるバーコードはげと言われる中年の男と
青い警官服を着て、その男を手錠で押さえている警官であった
「君は男だからわかるだろ?誘惑しているんだ!あの制服は!つい手が出てしまうのもおかしくない!!」
「うるさいなあ〜あなたがしたことは犯罪なの、電車の中で中年が女子高生のお尻に触れるのは自動的に警察行きなんだからあきらめて」
「それはひどい横暴だ!僕らは同じ人間じゃないか、人間が人間を触ってなにが悪い!?それに僕は仕事があるんだよ〜クビになっちゃうんだよ〜」
「・・・」
『・・・』
「ってこれただの痴漢したおっさんを連行してるだけじゃん」
『うん、ちょっとこれ十分おもしろいし携帯のムービーで撮りたいぐらいだけどこれになんの意味が?』
「まあ見てなって・・・」
セイヤはまるでこれから楽しいことでも起きるかのように警官とサラリーマンを見る
「もう・・・もうダメだぁ〜〜〜僕の人生終わりだよおおおう・・・」
連行される中年サラリーマンは座り込んでしまった
「こらこら・・・早く立って、もう〜なんなの泣き出したりして」
警官は軽い舌打ちする、あきらかにだるそうな顔して無理やり中年サラリーマンを立たそうとした
「あれを見なさい」
『?』
「・・・グルルルッ」
「え?なんだって?」
「ゥゥゥ・・・」
「はあ?」
いきなり不可解な声を出したので警官は中年男の顔を覗き込む
そこには先ほどの中年男の顔はなく、灰色の毛が顔中に生えていて顔が異常までに膨張し
その目に不気味な光放ちながら下を向く謎の生物がいた
バキッ!!!
「ぐあ!?」
警官はいきなり来た強い衝撃で吹っ飛んでしまう
「ウオーーーー!!」
バチン!
変貌した中年男は手錠を力ずくにひきちぎいた
「う、うわ!?なんだこいつ!」
「ククク、グルル・・・なんだか気分がいいな、人生とかどうでもよくなってくる・・・」
「あれが能力者よ」
「は?」
『まじで?』
この警官と中年男の姿を見ていた二人にリュナは言った
「う、うわあ!?」
「グルル・・・よくも捕まえてくれたな、これで僕の人生はめちゃくちゃだ」
中年男の体の全体に灰色の毛がありえないまで伸びていく
それと同時に背丈もしだいに巨大化していった
「なんなの、あれ?」
「意外と冷静ですね、慣れてるのですか?」
シンリはあきれた顔で言った
そのシンリの反応に驚くリュナもその容姿から予想もできないほど冷静だった
「日常がつまんないんだよ、この世界がね」
『同感』
「そうですか・・・まあ、あれの説明をしましょう。あれは能力の一つ[獣化]です、見たところタイプ【ウルフ】ですかね」
「心の暴走、つまり超パニック状態になると目覚めていない能力者でも覚醒するってわけ♪」
セイヤは笑顔で言った
「では、セイヤ・・・やってきてください」
「りょーかい♪」
セイヤは獣化していった中年男のほうへ向かう
そう、二人の人生はここから変わり始めるのだ
いや、むしろ【能力】に目覚めていてから変わっていたのかもしれない。
それは日常が日常ではなくなる前兆
シンリとユウ
この兄弟はこの世界にとって重要な鍵[キー]なのだから
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