修行
(右、いや正面か!)
「残念、後ろだ!」
後ろから突如と現れた邪神に神経が焼ききれるほどの超反応で対応する。
「相変わらず出鱈目な反応だが、俺の言葉を信じ過ぎだ」
邪神はいつの間にか正面におり、手に持った剣で頭を小突いた。
後ろにいた邪神は残像だったようだ。
「まだ勝てないのか、俺は」
「まだ毛も生え揃ってないガキにやられるわけにはいかねぇよ」
そう、あれから三年が経ち、俺は言葉を流暢に話せるようになった。
あとついでに少し強くなっていた。
「今日の訓練は終わりだ。体を冷やすなよ」
「わかった。晩御飯だが、バジリスクで良いか?」
「しれっと中隊級を狩ろうとするお前の教育をどこで間違えたのか悔いるよ」
「? ドラゴンみたいに飛ばないから倒しやすいだろう」
「あぁ、いいから! もう行ってこい」
しっしっと手を降る邪神。
それを見て幼児が森へと消えた。
(しかし、まさかこれほどとは)
邪神が強いのは当たり前だ。
何しろ年期が違う。
何千何万年と言う時間が彼の経験値なのだから。
(だからって、あれは異常だろ)
三年だ。
たった三年で、この終焉の森で生き残れるほどになった。
勇者や魔王と呼ばれる連中でも徒党を組まないと生き残れない森。
それが終焉の森である。
そう、あったはずである。
(教えた言語、文化、歴史、魔法、武術。その全てにおいて尋常ならざる理解を示す。唯一、常識がないがそれも些末なことか)
邪神は考えることをやめた。
とりあえず近い将来。
あいつは俺を殺すだろう。
その事実だけを邪神は確信していた。