終わりの始まり
天から一線の雷が地に落ちる時、世界を終焉へと誘う者現れる。
古い書物に記載されたその一文はあまりにも有名な言葉であった。
その本のタイトルが何なのか。
それを知るものはもうほとんどいなくなった。
だが、そのあまりにも有名な一説だけは確実に受け継がれていた。
この日、世界は未曾有の天変地異に見舞われた。
いくつもの雷が地に落ち、予言通りではないと学者達は喚き散らした。
一線ではなく、一千だったのだろうと冗談を口にする者もいた。
時間が経てば真実は薄れていく。
それは今も昔も変わらなかった。
ーーーーーー
「この気配は……」
「気付いたか、らいで(ry?」
「はいはい、地球のネタはそこまでにしなさい」
「わかるのは私達転生者くらいですよ」
「お前ら、もっと真面目にだなぁ」
四人は同じパーティに所属する冒険者だ。
会話からもわかる通り転生者でもある。
しかし、その顔に会話のような余裕はない。
「神か悪魔か」
「おっ、第一話」
「どっちでも良いわよ、私達にとって悪くなければ」
「早く街に戻りましょう、外は危険です」
この日、Sランクの冒険者が初めて依頼を達成出来なかった。
今までの功績もあり、天災に見舞われたということで依頼の延長が認められたのだが。
その事実を知る者は当事者である四人とギルドマスターだけだった。
ーーーーーー
空に浮かんだ白と黒が交錯する。
「ちっ、これはてめぇの仕業か!」
「そちらの悪巧みではなくて?」
つばぜり合いから互いに距離を取る。
見れば、周りにいる黒い翼と白い翼を持つ者達も動きを止めていた。
悪魔と天使と呼ばれる者達だ。
彼らは一様にプライドが高く、御するのは容易ではない。
だが、異常な状況が互いに剣を引かせた。
「とりあえず、こんな喧嘩をしてる場合じゃねぇな」
「珍しく気が合いましたね。嬉しくないですが」
「抜かせ!」
黒と白の軍勢が別れていく。
それはさながらモーセが通った後のように。
ーーーーーー
「覚えてろよ!俺が死んでも第二第三の俺が貴様らを討つ!」
「神の半数が討たれるとは……なんという奴だ」
「あれが一人だったから良かったものの、複数であったなら我々は……」
「えぇい、忌々しい! それよりもこれはなんだ! 下界のシステムに異常でも起きたのか?!」
天界でも魔界でも、もちろん人間界でもない。
それよりも上位の世界が荒れに荒れていた。
この日、力あるものは未来を憂いた。
世界の終焉を迎える日は決して遠くはないのだと。