不穏な間奏
モチベが続いています(何度か言ったことがあるような気がする)
風上さんに笑いかけられた時、僕の脳は瞬時に判断を下した。
「カノジョニ キヲツケロ」
そう、既視感にあふれるこの世界で唯一違和を生じる点…それが彼女の存在だ。彼女は…便宜上、僕にとっての昨日をA日とする。そのA日から僕にとっての今日、つまりB日に変化として現れたのは彼女なのだ。未だに同じ日が繰り返しているなど考えられない。でも、今日の今までの会話を聞いてしまうと、信じざるをえない気もする。
とにかく、まずは彼女と接触してみる必要があるだろう。その方法を考えなくては…そう思いつつ、午前の、昨日と全く同じ授業を受けた。
昼になり、下校の時間だ。だが、僕らは部活が待っている。
「一色、部活行こうぜ」
「そだね」
着替えを持って体育館に行こうとした時、不意に僕のことを呼ぶ声が聞こえた。
「ねえ、森一色くん」
「あ、えーと風上さん、何か用かな?」
「ちょっと話したいことがあるんだけど」
「んーでも今から部活なんだよな…」
「ほっほう…おい、一色行ってこいよ」
「え、でも部活が」
「いいから!先生には俺からなんか言っといてやるよ」
「え、でも」
「ありがとう、紺野宙太くん」
「いいってことよ!じゃな、一色」
宙太、あいつは絶対何か勘違いをしているな。でも、風上さんから話しかけてくれるなら都合がいい。何か情報を聞き出せるかもしれない。
「それで話って何かな、風上さん」
「そうね…ここだと話しづらいから、屋上にでも行かない?」
「いいよ」
そして、僕と風上さんは屋上へと移動する。春のうららかな風が吹く、穏やかな午後だった。
「で、話って?」
「知ってるくせに」
「やっぱり、同じ日を繰り返してることについて何か知ってるんだね?」
「ええ、まあね」
「だったら教えてよ、何で僕はこんな目に遭わなければいけないのさ」
「何も知らないって、お気楽なものね」
「どういうことだよ」
「そのままの意味よ、森一色くん」
「こんな非日常的なことについて知っていることの方が異常だと思うけど」
「…本当に何も知らないのね…いいわ、ヒントを教えてあげる」
「何?」
「平さんと紺野くん、この二人と昔話をしてみたら?」
「それはどういう…?」
「それ以上は言わないわ」
「何だそりゃ、そもそも何で風上さんはこのことについてこんなに知っているのさ」
「それは言えないわ…でも、すべてを知ったなら、多分思い出すよ、森くん」
それきり会話は終わってしまった。ただ、一つだけわかったことがあった。僕の昔の思い出に、そのヒントはあるのだと。それだけを覚え、僕は体育館に急いだ。
日々の練習を一通りこなし、下校時刻になったところで僕たちは校門を出た。のだが。
「あっやべえ」
「どうした一色?」
「いや、宿題教室に置いてきちゃった」
「それはいけませんね、すぐ取りに戻るべきです」
「やれやれ、平は堅いなあ」
「いや、取りに戻るよ」
「そうか?まあいいけど」
「宙太と奏は先に帰っててくれ」
「りょーかい、また明日な」
「さようなら、森くん」
「うん、じゃあね」
さてと、教室まで戻らなくちゃな。もうすっかり日は暮れ、あたりは暗闇に包まれていた。教室までは遠いけど、人を待たせているわけではないしゆっくり行こう。そう思い、ゆっくりと歩を進めた。
そうして、教室に着いた。
「たぶんここに…あったあった、よし帰ろう」
目的のものも見つけ、帰路につこうとしたその時。突如辺りに閃光が走った。
「なんだ…?」
そう思い、窓の外に目を向ける。そこには…注意してみてみると、人影があったように見えた。誰だろう、でも何にしてもこんな時間に人がいるなんて不気味だ。さっさと帰ろう、そう思って、僕は校門に向かって足早に歩を進めた。