バッドエンドへの前奏曲
モチベが上がったので初投稿です
「君は、この決断に後悔しているかい?」
「ああ」
「ならば今一度、やり直そう」
「君が望む未来を得られるまで、何度でも」
「さあ、戻ろうか」
目が覚める。いつもと変わらない朝。しばらくベッドにぼうっと座っていた。今日からは新しい学年だ。前のクラスの奴と一緒のクラスになれるのだろうか。新たな友達はできるかな。そう考えているうちに、朝食を食べねばいけない時間になっていた。
キッチンで朝食を作る。作る、と言ったのは家に両親がいないからだ。父親も母親も海外に赴任している。いつ帰ってくるのかも決まってはいない。でも、もうそんな生活には慣れてしまっていた。とにかくはまず学校に行くことだ。そう思い、朝食をかきこみバッグを持って外へ出た。
歩いて20分ほどの大学附属校に通うことになっている。名前を、東西大学附属高校という。長いので、普通は東西高というようだが。教室は、2年C組か。着いたのが遅かったので、教室は人で溢れていた。
「おっす!おはよう一色」
「おはようございます、森君」
「おはよう、宙太、奏」
今僕のことを一色、と呼んだのは幼馴染の紺野宙太だ。
そして、森、と呼んだのは中学校からの同級生だった平奏だ。
二人とも、同じ中学校に通っていて、偶然全員志望校が一緒だったということだった。
「それにしても今日は遅かったですね、どうかしたのですか?」
「いや、新学年のことについて考えていたら家を出る時間が遅くなっちゃってさ」
「いやいや、なんじゃそりゃ!」
そんな他愛のない会話を交わしていたら、チャイムがなった。みんながガヤガヤと席についていると、新たな担任が入ってきた。
「えーこのクラスの担任をすることになりましたー音無力也と言いますーどうぞよろしくー」
そんな間延びした挨拶とともに、出欠が確認される。一通り確認し終わった後に、音無先生が続けた。
「えー今日から編入生がこのクラスに来ましたーさあー挨拶をお願いしますー風上薫さんー」
そう言われると、廊下から女の子が入ってきた。
「風上薫です、よろしくお願いします!」
元気のいい挨拶をして、ぺこりと頭を下げた。
「んーよろしくねー席はー平の隣に座ってねー」
そうして、奏の隣の席に行く時。
ちらり、と僕の方を見た気がした。まあ、気のせいだろう。
そして授業が始まった。
今日も1日が過ぎた。放課後になり、僕と宙太と奏は部活に行く。僕たちはバレーボール部に所属しているため、帰りも遅くなる。奏はマネージャーだから、もっと大変そうだけど。日々の練習を一通りこなし、下校時刻になったところで僕たちは校門を出た。のだが。
「あっやべえ」
「どうした一色?」
「いや、宿題教室に置いてきちゃった」
「それはいけませんね、すぐ取りに戻るべきです」
「やれやれ、平は堅いなあ」
「いや、取りに戻るよ」
「そうか?まあいいけど」
「宙太と奏は先に帰っててくれ」
「りょーかい、また明日な」
「さようなら、森くん」
「うん、じゃあね」
さてと、教室まで戻らなくちゃな。もうすっかり日は暮れ、あたりは暗闇に包まれていた。教室までは遠いけど、人を待たせているわけではないしゆっくり行こう。そう思い、ゆっくりと歩を進めた。
そうして、教室に着いた。
「たぶんここに…あったあった、よし帰ろう」
目的のものも見つけ、帰路につこうとしたその時。突如辺りに閃光が走った。
「なんだ…?」
そう思い、窓の外に目を向ける。そこには…特に何もなかった。一体何が光ったのかすらもわからない。
「まあいいか、帰ろう」
そして、帰路に着いた。
次の日の朝。目が覚める。いつもと変わらない朝。しばらくベッドにぼうっと座っていた。今日からは新しい学年だ。前のクラスの奴と一緒のクラスになれるのだろうか。新たな友達はできるかな。そう考えているうちに、朝食を食べねばいけない時間になっていた。
待て。『新しい学年』?今日の日付を確認する。昨日…いや、前の日の日付のままだった。変わっていない。めくっていなかったのかな?そう思い、日めくりカレンダーを一枚剥がす。そこには同じ日付が書かれていた。半ば戦慄して、僕はカレンダーを手に取り、めくる。いくらめくっても、日付は同じままだった。それでも、脳は規則正しく生活を送れと命令してくる。何も食べる気が起きなかったが、僕はバナナを牛乳で流し込んで家を飛び出た。
「おっす!おはよう一色」
「おはようございます、森君」
「あ、ああ…おはよう」
どういうことなんだ。なぜか、前の日も同じ挨拶を聞いた気がする。
「どうかしたか?具合でも悪いのか」
「いや、なんでもない、なんでもないよ」
そうして、足早に学校へ向かった。
始業の鐘が鳴る。そして、
「えーこのクラスの担任をすることになりましたー音無力也と言いますーどうぞよろしくー」
そんな間延びした挨拶とともに、出欠が確認される。
そうして僕はこの既視感の中で、ある違いに気づいた。
『彼女がいる』
編入生のはずの風上さんが、奏の隣の席に座っている。
風上さんが、こっちを向いてニコっと笑いかけたような、そんな気がした。