〈後日談〉一通りを終えて
前回の投稿から一か月とは・・・、我ながら空きすぎちゃいましたね(謝罪)。ただ言い訳をするなら、滞り続けているキャラ原案や改案作成に力を注いでいたと言いますか・・・。まあ、それはその内ということで。今回にて『第四章』は終了となります。今章にて、思い描いていたキャラを粗方登場させることができたため(一人残ってはいますが)、次章からは少し雰囲気の違った感じの回が多くなるかと思われます。引き続き、贔屓にして下さっている方には感謝をしつつ、またの次章をお待ち頂けると嬉しい限りでございます。
あれから数日後・・・。
ずずーっ
史織「ふう~。今日は静かでいい気持ちね~。」
母屋の縁側で、大好きなゆったり時空を満喫している史織さん。
史織「何だか久し振りにこうやってのんびりできてる気がするわ。この時間こそ、至高の時間よねぇ~。」
ずずーっ
パキッ、ぼりぼりぼり
緑茶を飲みながら煎餅を頬張る史織さん。
史織「ふはぁぁ~~(恍惚)。」
何とも緩み切った笑顔ですこと(笑)。
・・・・・・
しゅおんっ
リミュー「しーおりっ!」
あれ?・・・えっと、史織さんの背後にリミューさんが現れました。
史織「あら、リミュー。どうし・・・え、リミュー!?」
リミュー「うふふっ。リアの言った通りだわ。」
史織「急に、アンタ、後ろに、ど、どうやって・・・?」
リミュー「んー・・・。わたしもよく分かんないんだけど、私に任せなさいーってリアが言ってたよ?」
史織「・・・アイツが?」
リミュー「それよりも、ねえ史織ー。館に遊びに来ない?史織に見てほしいものがあるの!」
史織「見てほしいもの、ねぇ~。・・・ま、別にいいわよ。」
リミュー「やったー!うふふっ、嬉しいわ。」
史織「じゃ、行きましょうか。」
というわけで、流れるようにしてお二人はクロマリーヌの館へ向かいます。
・・・ってーか史織さん、何かリミューさんに弱いっていうか甘くありませんかね(笑)?
堅くな鉱山に入ってからしばらく、遠くにクロマリーヌの館が見えてきました。
リミュー「もうすぐよ、史織ー。」
史織「やっぱり家からここまでは遠いわねぇ。」
リミュー「・・・あれ?」
史織「ん、どしたの?」
リミュー「伊戸がお外にいない。もしかして・・・。」
・・・ちゅぼぉぉぉん!!!!!
史織「・・・え?」
なんとその時、館の一室が爆発したのが見えました。同時に窓から大量の蒸気が溢れ出てきています。
・・・そして、すぐに黒い煙も出てき始めました。
リミュー「あぁっ!お、おねえさまのお部屋が!?」
史織「え。あの部屋、ウェンディの部屋なの?」
リミュー「おねえさまぁぁ!!」
大急ぎでリミューさんは館へと向かって行きます。
史織「・・・。何か、深刻さに駆られないわね。何だろう・・・、すっごい大丈夫な気がする。・・・勘だけど。」
全く焦ることなく、ゆっくりと館に向かって行く史織さん。
・・・ほ、本当に大丈夫なんですかねぇ?
史織「ーっと。もしもしー?」
とりあえず、門前に到着しました。伊戸さんを呼びかける史織さんですが、姿が見えません。
史織「あー・・・。ま、別に勝手に入ってもいいわよね?リミューに呼ばれてやって来てるんだし。」
いつもは必ず門前で来訪者の対応をする伊戸さんですが、今は館の中にいるんでしょうか。
すると。
???「ひやあぁぁぁぁ~~!!!お、お嬢様ぁぁぁぁ~~!!!!」
史織「・・・今の声、伊予?」
伊予さんっぽい悲鳴が聞こえてきました。
史織「あっちの方かしら。」
声のした方へ進んでいきます。
・・・・・・
そして、がやがやしている部屋までやって来た史織さん。
史織「ちょっとアンタたちー?一体何して・・・。」
部屋の中を覗くと・・・?
ウェンディ「うぼぼぼぼ・・・・・・。」
伊予「お嬢様ぁぁぁ!!!お気を確かにぃぃぃ!!!」
サリアン「ふむ・・・。やはりまだ研究の余地がありそうね・・・。」
史織「・・・。控えめに言って、大惨事ね。」
部屋の中がぐちゃぐちゃ、ウェンディさんが泡を吹いて倒れている、伊予さんが激しく狼狽中、冷静なサリアンさん、等々何だかしっちゃかめっちゃかみたいです(笑)。
あら。伊戸さんも部屋の壁に寄りかかってますね。何だか様子はおかしいですが・・・。
アシュリー「あ、史織さん。こんにちはー。」
史織「アンタとサリアンだけ落ち着いてるのね。まるで、こうなることが分かってたみたいに。」
アシュリー「そんなことないですよー。ただ、慣れているだけですよ。」
史織「ふっ。そういうこと、ね。」
リミュー「おねえさまー、大丈夫~?」
サリアン「大丈夫よ、リミュー。予想してたよりもマシだったから。」
リミュー「そーなの?」
ウェンディ「ダ、ダメよ・・・リ、リミュー・・・。こ、こんな法螺吹き悪魔の言うことなんて信じちゃ・・・。」
サリアン「まあ、法螺吹きだなんて心外ね。ふふふっ。」
リミュー「リアー、おねえさまに何したの?」
サリアン「なーに。『花火が見たい!』ってディアが言うもんだから、今研究中の高等魔術を応用した、本物の『劇的水中花火』を披露してあげただけよ。」
史織「・・・何よそれ?」
サリアン「ディアに水の塊の中に入ってもらって、目の前で水中を花火が駆け巡る、まさに迫力満点の花火よ。」
リミュー「水の中に入って?おねえさま、リアみたいに水の中でも元気に動けないよ?わたしもだけど・・・。」
サリアン「その点は大丈夫。私の発明品『水みずマンテル』を着れば、水の中でも自在に活動できるの。水本来が持つ性質による危険因子を全て取り払える、まさに絶体安全が売りの外套よ!ディアにも全く同じ説明をしたわ。」
ウェンディ「な、何が絶対安全の『水みずマンテル』よ・・・!法螺吹きも大概にするのね・・・。私はリアの言葉を信じて・・・!」
史織「・・・ねえ、さっきの爆発から考えるとウェンディがこうなった直接の原因って・・・水じゃなくて花火よね?」
リミュー「それじゃあ、『水みずマンテル』を着てても花火が危ないのは変わらないね。」
ウェンディ「え・・・?」
史織「『え・・・?』ってアンタ、まさか・・・気付いてなかったの?」
ウェンディ「だ、だって、リアが『絶対安全だ』って・・・。」
リミュー「水からは安全ってことでしょ?花火からは危ないままだよね。」
サリアン「『劇的水中花火』の花火成分は一応、まさに劇的だーって説明したわよね。」
ウェンディ「・・・・・・そんなぁ。」
ガクッ
伊予「ああああぁぁぁ!!!お嬢様ああぁぁぁぁ!!!!!」
史織「あぁっ!もう喧しいわね。ちょっと伊戸!何とかしなさいよ!」
伊戸「・・・・・・。」
反応がありませんね。
史織「ねえちょっと、聞いてるの!?・・・すんすん、あれ?何か、焦げ臭い・・・。」
伊戸さんの頭、ちょっと焦げてません?
アシュリー「ああ。伊戸さんなら、しばらくは目覚めないかと。」
史織「・・・はい?」
サリアン「『劇的水中花火』を始める前、空気中で花火の火種の火加減を確認するために、伊戸に実験台になってもらったのよ。」
アシュリー「私は止めたんですけど、伊戸さんは自信満々って感じで引き受けちゃって・・・もう!サリアン様が煽ったりするからですよ!」
サリアン「翡翠って火に弱いんだっけ?って聞いただけじゃないの。伊戸は自ら進んで人柱になったのよ・・・(儚げ)。・・・ふふふっ(笑)。」
リミュー「あー!リアったら、笑ってるー!もう!だめだよ!」
サリアン「ふふっ、ごめんなさいって。まあ何にしても『劇的水中花火』の火種操作を上手く制御し切れなかったのは私のせいだわ。おかげでディア共々部屋が爆発。伊戸はその前から爆発。伊予はポンコツになっちゃったわね。」
伊予「およよよよよよぉぉぉ~~~!!!」
ウェンディ「うごごごぉぉ・・・。」
伊戸「・・・ぐう。」
史織「(伊戸、寝てない・・・?)」
アシュリー「サリアン様、どうなさるんですか?」
サリアン「ここはもうリミューに任せるしかないわね。お願いできる?」
リミュー「もうー、分かったよ~。後で、ちゃんとみんなにごめんなさいしてね?」
サリアン「約束するわ。」
すると、リミューさんが構えます。
リミュー「みんな、ちょっとだけ休んでてね。」
ぽわぽわぽわわあぁぁぁぁぁ・・・!
伊予「およよよぉぉ~~・・・・・・、すぅっ・・・。」
ウェンディ「リ、リミュー・・・、ぐうぅぅ・・・。」
伊戸「・・・ぐうぅぅー。すぴー。」
というわけで、三人ともお休みになりました。
サリアン「アシュリー?三人を介抱してあげてくれるかしら。」
アシュリー「お任せください!」
リミュー「ふゅぅ~。上手にできたわ。」
史織「リミューったら、もうすっかり能力を使いこなせるようになったのね。安心したわ。」
リミュー「うん!だってわたしは、おねえさまの妹だもん!」
サリアン「うふふっ。そうよね~。リミューはいい子だもんね~。」
なでなで
リミュー「えへへ~。」
史織「そういうこと・・・なのかしら?」
まあまあ。そこで疑問を投げかけるのはよろしくないですよ、史織さん?
史織「あー。ところで、リミューが言ってた私に見せたいものって何?(わくわく)」
リミュー「あっ、そうだったわ!ちょっと待っててね?お部屋から持ってくるからー。」
と言うと、リミューさんは自分の部屋へと向かいました。
サリアン「それにしても、上手くいったみたいで良かったわ。」
史織「何が?」
サリアン「リミュー、さっき貴女の家にいきなり現れたでしょう?」
史織「あ、そうそう。何の気配もなしに急に後ろにいたのよ。アンタの仕業だって聞いたけど?」
サリアン「この前貴女に渡した探知機、あれを頼りにした移動術よ。あの探知機には私の魔力が込めてあって、私が魔力と魔力を繋げることによって探知機のある場所まで対象を移動させることができるの。」
史織「あー?あれはそれのためだったってのー!?」
サリアン「あの五種族長の特殊な移動術から着想を得たのよ。もっとも、探知機がないと魔力を繋げられないから、あの五種族長の程の万能性はないけど。私側から探知機側への一方通行だけだし。」
史織「そーゆーヤツ、前にアシュリーが持ってなかった?」
サリアン「『ライズリング』も原理は似たようなものよ。」
史織「その辺のことは、よく分かんないわ。」
サリアン「人間が知れたことじゃないわよ。それにしても、リミューが見せたいものって一体何かしら。気になるわね。」
史織「アンタも知らないの?」
サリアン「ええ。私にも見せてーって言ったんだけど、『史織と一緒に見せてあげるから待ってて?』って言うもんだから、リミューを貴女の所へ送ってあげたのよ。」
史織「そうだったんだ。何を見せてくれるのかしらね~。」
リミュー「しーおりー!リア―!見て見てー!」
そう言いながらリミューさんは腕に何か白い大きなものを抱えて走って来ました。
史織「・・・え?」
サリアン「それって・・・。」
史織・サリアン「「霊魂?ってゆーかそれ、デカすぎない・・・!?」」
リミュー「えへへ~。」
どうやらとんでもないものを拾ってきていたリミューさん。純真無垢なリミューさんだからこそ、見つけられたのかもしれませんね。
今日のクロマリーヌの館も平和そのもの。(本当にか(笑)?)
この有閑さが、若鄙に彩りをもたらしていくことでしょう・・・。
〈劇的水中花火〉
サリアン考案、本当に水の中で花火が舞うという、正真正銘の水中花火。サリアンの水魔法で大きな水の塊を作り出し、その中に火の魔法で花火を作り出す。花火自体は水中からでないとよく見えないため、見たい者は水の中に入らないといけない。花火の火力もかなり高く危険度も高いが、その分花火の質は素晴らしいものだという。水の中に火を存在させなければならないため、火の成分値はかなり高めで制御を誤ると大爆発となる程の高火力。サリアンでもまだまだ制御が難しい程の高等魔術である。水中とはいえ大爆発に巻き込まれたウェンディと空気中で火加減の実験台になった伊戸の二人をほぼ一撃で気絶させられる程の危険な魔術でもある(笑)。
〈水みずマンテル〉
サリアン発明の一品。これを着用すれば、水からもたらされる全ての危険を無効化することができる絶対安全の外套。着用者は地上と同じ感覚で水中を動き回ることができ、尚且つ、水圧や水温など水中での環境の変化の影響を一切受けずにいられる。若鄙に海は無いものの例として挙げると、これを着ていれば深海での過酷な環境でも全く問題なく活動ができる。まさに絶対安全である。ただし、絶対安全なのは説明通り水からだけであり、水以外からの危険にはまるで効果なし。史織とリミューはサリアンからの説明で理解していたが、ウェンディはそこまで理解が回っていなかった。・・・でも、ウェンディもそこまで責められる筋合いはない気がする。親友から『大丈夫よ』って言われたから、それを信じただけだもんね。この件に関しては、ウェンディもサリアンも同じくらい悪くはない、と語り主は見ている(笑)。