〈番外面・末〉来ちゃった×2(?)→+3
今回も次回も会話パートばっかりです。でも、そここそに今章の番外面でやっておきたかった内容が含まれているのですよ。
ガチャ
ウェンディ「ふう~・・・、リアをベッドに寝かせてきたわ。とりあえず、あれで大丈夫でしょ。」
アシュリー「あっ、ありがとうございます~。」
ぽわわわわわわんっ・・・
史織「うぐぅ~。」
小冬「史織ぃ~、大丈夫ですのー?」
史織「動けそうで動けない~・・・。」
ソファーに寝かせた史織さんをアシュリーさんが魔力で治療してくれています。
どうですかね、もうちょっとですかね?
アシュリー「史織さんは、後もうちょっとで治りますかね~。小冬さんは本当に大丈夫ですか?」
小冬「えぇっ!?あっ、は、はい(焦り)。お構いなく、ですわ。」
こちらの方は、まだみたいですね(笑)。
アシュリー「そういえばお嬢様、サリアン様の容体はどうでしたか?」
ウェンディ「んー?まあ見た目は大したことない感じだったわよ。でも派手な魔法を使ったみたいだし、小冬のキッツい一撃を貰ってるみたいだし、身体の内側には響いてるかもねー。」
アシュリー「あー。じゃあやっぱり後で魔力治療して差し上げないといけないかな~。」
史織「小冬の『戦風』は、あの伊戸を打ち破るトンデモ技だからね!」
ウェンディ「ふふふ。あの伊戸、ねぇ・・・(笑)。」
アシュリー「頑丈さとタフさは誰にも負けない伊戸さんが、ですかぁ。凄いですね~。」
小冬「そう言われると、少し照れますわ・・・(照れ)。」
まあ確かに。あの時の出来事がきっかけとなって、小冬さんは怪異たちに知られるようになってしまいましたからね。
少しばかし、そんな会話をしていると・・・。
ウェンディ「まあ?普段ろくに外に出歩かない運動不足気味のリアからすれば、ちょっと過剰なダメージだっ・・・。」
突然、ウェンディさんの様子が一変します。
アシュリー「・・・お嬢様?」
史織「どうしたのよ?急に黙っちゃって。」
ウェンディ「・・・、途轍もなく強大で異様な大気の歪みを感じる・・・。何か・・・。」
と、その時。
ブオーン
千理「おや、ここは?」
八葉「知りませんよ、そんなこと。でも、ここで間違いありませんよ。」
史織さんたちがいた部屋の壁に、突如として『正義の門』が現れました。
門の向こう側では、千理さんと八葉さんがこちら側を窺っているようです。
史織「あれ?その光、見覚えあるわね。」
アシュリー「あっ!史織さん、あれですよ!あの時、五種族長の方が使っていた・・・。」
千理「・・・ふむ。どうやら八葉の言う通りみたいですね。助かりましたよ。」
八葉「全く・・・。私の能力は、人探しのために活用されるものではありませんからね。」
千理「す、すみません・・・。ですが、助かりましたよ。・・・せっかくですし、貴方も彼女に会ってみませんか?」
八葉「私は別に興味ないので。さっさ、その人間を連れて早く行ってください。」
千理「・・・そうですか。では八葉、改めてご助力ありがとうございま・・・。」
ぬぅっ
史織「アンタ、千理・・・だっけ?何してんの?」
なんと史織さん、門を通って千理さんたちのいる側に行ってしまいました。
小冬「ちょ、ちょっと史織~、置いてかないで・・・。」
アシュリー「ダ、ダメですよ史織さん。勝手に門の中に入っちゃ・・・。」
っと、小冬さんとアシュリーさんも門を抜けて来てしまいました。
あれ、これ抜けて来て大丈夫だったんですかね?
千理「あ、いや、あの、えっと・・・。」
八葉「ほらぁー、もう・・・。ぐずぐずしてるからですよ。」
千理「そ、そうは言いますがね・・・。まあ、いいですか。」
ブオーン・・・
そう言って、『正義の門』は閉じてしまいました。
・・・・・・
サリアンさんのアトリエ側では・・・。
ウェンディ「あら、閉じちゃった。・・・さっき感じた歪み、今のやつだったのね。すんごい力だったわね・・・。」
すると。
ガチャンッ!
勢いよく寝室の戸が開きました。
サリアン「ね゛え゛ちょっと!今、大きな魔力の歪みみたいなのを感じたんだけど・・・って、あれ?ディアだけ?」
ウェンディ「みーんな、その魔力の歪みみたいなやつの中に入って行ったわよ。」
サリアン「・・・ディアは行かなかったの?」
ウェンディ「私はリアの面倒を見なきゃだし。そうアシュリーに頼まれてるからね。」
サリアン「ディア・・・。」
ウェンディ「でも今のやつ、アシュリーが五種族長のー、とか何とか言ってたけど、リアが前に話してたやつだったかもね。」
サリアン「もしかして『正義の門』のこと?・・・ってぇぇぇ!?えっ、『だった』って何っ!?その門は今どこ!?」
ウェンディ「だーかーら、『だった』って言ったでしょ?もう閉じて消えちゃったわよ。」
サリアン「そ、そんなぁ・・・。」
ガクッ
ウェンディ「まあアシュリーも史織たちを追ってっちゃったから、アシュリーが帰って来る時にまたその『正義の門』とやらが開くんじゃない?」
サリアン「はっ!・・・それもそうね。その時のために、準備しておかなくっちゃ・・・。」
ウェンディ「っていうか、もう動けるようになったのね。よかったー。」
サリアン「・・・何を言ってるの?」
ウェンディ「?」
サリアン「ディア、もっかいベッドまで負ぶってぇぇ~・・・。」
どさっ
ウェンディ「うわっ!ちょっと・・・、もう~・・・。仕方ないわねぇ。ほら。」
ウェンディさんがその場に倒れ込んだサリアンさんを負ぶいます。
サリアン「た、助かる・・・わ・・・。」
ウェンディ「全く。動けない癖に無理して動こうとしないの!」
サリアン「ええ、分かったわ。・・・だから。」
ウェンディ「だから?」
サリアン「準備、手伝ってね?(にこにこ)」
ウェンディ「・・・ハメたわね?」
サリアン「あー、痛たたたー。身体の節々が痛くて動けないわー(棒)。」
ウェンディ「・・・この貸しは高く付くんだかんね!」
サリアン「ふふっ。何だかんだ言って、ちゃんと手伝ってくれるディア。私は好きよ。」
ウェンディ「ふ、ふんっ(照れ)!ほら、早くベッドまで行くわよ!」
サリアン「はいはい。」
一方、千理さんたち側の様子はというと・・・。
史織「って、あれ?・・・ここどこ?」
千理「ここはですね・・・。」
???「し、史織さん!」
おや、この声は・・・。
史織「え。彩羽!?ど、どうしてこんな所に・・・。」
そうそう。古屋図書館前で千理さんと出会い、そのまま一緒に行動していた彩羽さんです。
史織「っていうか、何で千理と一緒にいるのよ?」
彩羽「えっと、それは、いろいろあってですね・・・。」
千理「私も彩羽も、貴方に会いに行こうとしていたのですよ。」
史織「私に?」
千理「はい。ですが・・・。(チラッ)」
八葉「・・・。(じとーっ)」
怪訝な顔の八葉さんがこちらを見ていますね・・・。
千理「う~んと・・・。や、八葉?」
八葉「・・・何ですか。」
千理「このままここで話を続けても良いでしょうか?」
八葉「良いとでも思ってるんですか?」
千理「むむ・・・、ですよね~。」
八葉「さあさあ。この山へ、これ以上よそ者に足を踏み入れられるわけにはいきません。いくら千理様と言えど、これ以上は見過ごせませんよ?」
千理「わ、分かりました。では・・・、史織に彩羽。そして、そちらの二人も。」
史織「何?」
彩羽「は、はい。」
小冬「わ、私も?」
アシュリー「何ですか?」
千理「場所を変えます。私に付いて来て下さい。」
ブオーン
千理「さあ、一先ずこの中へ。」
史織「まあ・・・、いいけど。」
言われるがままに、史織さんたちは『正義の門』の中へと入っていきました。
千理「ふう、とりあえずこれで何とか・・・。」
八葉「ま、千理様本人に悪気がないのは分かってます。そういう方ですからね、貴方は。」
千理「すみませんね。手間を掛けさせてしまって。」
八葉「私は私の役目を全うするだけです。これまでも、これからも。」
千理「ありがとうございます。では、また。梓慧の相手も、偶にはしてあげて下さいね?」
八葉「・・・あのふらふらした性格が苦手でね。相性が合わないんですよ。ま、向こうは何も気にしてないみたいですがね。」
千理「梓慧はそういう性格ですから。」
八葉「だからこそ、千理様の補佐が務まるんだと思いますけどね。」
千理「ふふふ。ありがとうございます。それでは、失礼します。」
八葉「はい。お役目、頑張ってくださいな。」
千理「あっ!や、八葉、貴方・・・!」
ブオーン・・・
っと、千理さんが話し終える前に『正義の門』は閉じてしまいました。
八葉「ふっふっふ。千理様って、隠し事が下手くそなんですよ。私が気付いてないとでも思ってたんですかね~(笑)。」
千理「もう、八葉ったら・・・。気付いててあの態度だったんですか・・・。全く・・・。」
史織「ねーえー。千理ー?」
千理「あっ、は、はい。」
史織「ここ、どこ?」
千理さんが開いた『正義の門』の中の空間にいる史織さんたち。何だか不思議な空間です。
千理「ここは、普段私がいる場所です。」
小冬「普段・・・ここに?」
アシュリー「こんな何にもない場所に、ですか?」
千理「ええ。ここは私の空間。私がいるべき空間なのです。」
小冬・アシュリー「?」
史織「・・・。」
彩羽「(・・・あれ?)」
千理「まあ、ここのことは気にしなくても構いませんよ。」
ブオーン
千理「さあ、こちらに。案内します。」
千理さんに案内された先は・・・。
史織「あら。ここは・・・。」
小冬「史織の図書館ですわね。」
アシュリー「へえ~、ここがあの・・・。」
彩羽「(あっ。さっき来た時と様子は変わってなさそう。)」
帰って来ました。ここは古屋図書館ですね。
ブオーン・・・
千理「元々私はこの場所に来て、ここで史織と話をするつもりでした。それに、見知った場所の方が貴方達も落ち着けるでしょう?」
史織「まあ、そうね。」
千理「それでは私の話を・・・と言いたいところですが、まずは貴方達の話を聞きましょう。私に聞きたいことがあれば、遠慮せずに質問して下さい。」
史織「じゃあ・・・、アンタのここへ来た目的は何?」
千理「その件に関しては、最後に纏めて私からお話しますので。」
史織「えぇー。」
小冬「では・・・、貴方の素性を教えていただけませんか?どうやら、私以外の皆は貴方とお知り合いのようですし・・・。あっ、私は新風小冬といいますわ。」
千理「ああ、そうでしたね。これは失礼。では、皆に改めて自己紹介を。」
と言って、千理さんは一度構え直します。
千理「私は松正千理。怪異の者達の間では『五種族長』と呼ばれている者の一人です。史織とアシュリーはあの時振り。彩羽とは先程から共に行動していましたが、貴方とは初めてお会いしますね、小冬。」
小冬「は、はい。よ、よろしくお願い致しますわ。」
史織「何かアンタ、怪異の中でもすんごい偉いヤツらしいわね。梓慧とかサリアンが言ってたわよ。」
千理「偉いか偉くないかで言えば、別に偉くはありませんよ。梓慧を始めとする多くの怪異達は我々五種族長のことを特別視している傾向にあるのは確かですが、私もそこのアシュリーと同じ怪異であることに違いはありません。」
アシュリー「そ、そう言われると何だかちょっと畏れ多い気がしますぅ~。」
千理「ふふふ。まあアシュリーは兎も角、人間である史織、小冬、彩羽は私に対して特に身構える必要は全くありませんよ。」
小冬「そ、そうなんですの?」
史織「まあこう言ってるんだし、別にいいんじゃない?」
史織さんは誰が相手であっても、あまり態度を変えたりしませんよね・・・(笑)。
アシュリー「あのー・・・、さっきの方は誰だったんですか?」
史織「あ、そうそう。それにさっきの場所も。どこだったの?」
千理「先程の者は先程の場所、高天野山で守護役をしている金峯八葉。少し、彼女の力を借りるために門を使って彩羽と共に訪れていたのです。」
小冬「力を借りるために、ですか。」
彩羽「史織さんの居場所を探してもらっていた・・・んですよね?」
史織「え、私の?」
千理「私も彩羽も、最初は貴方に会うために古屋図書館を訪れたのです。ですが、貴方が留守だったので八葉に貴方の居場所を探してもらっていたのです。」
史織「へー、そうだったの。」
小冬「そう言えば、彩羽さんはどうして史織に会いに?」
彩羽「え、えっと・・・特に理由はなくって・・・。ようやく一人で里の外に出られるようになったので、思い切って史織さんに会いに行こうかな~、なーんて思ったので・・・えへへ(苦笑い)。」
小冬「あら(察し)。・・・うふふ。」
おっと。小冬さんは何かを察したようですね。
史織「わざわざ私に会うために人里からここまで来てくれたのは嬉しいけど・・・、あんまり危ない真似はしないでね?里からここまでの道中だって危ないんだから。」
彩羽「は・・・、はい!」
小冬「(もう~・・・、史織ったら。)」
史織さんって、こういうことについては少し鈍いですよねぇ。ふふふっ。
◎追加・公開版
(厳格な監視員)金峯 八葉 種族・金剛 能力・いとも容易く捕捉する能力
常に高天野山の秩序を一番に考えており、高天野山に侵入してくるよそ者を排除・監視する役目を負っている。よそ者に対して優しさを見せることはほぼない。高天野山の外のことに関してほとんど関心がないくらい、高天野山のことや仲間のことを大事に思っている。無意識状態であっても高天野山周辺・全域に張り巡らせている気によって、いついかなる時であっても侵入者を捕捉することができる。探知型能力の中でもかなり上位の能力であり、多少の情報さえあればどんなに遠距離であっても対象の居場所を捕捉することができる。
高天野山の守護役という立場にいる彼女であるが、こう見えて、なんと五種族長たち全員と顔馴染みという非常に稀な存在でもある。千理に対して歯に衣着せぬ物言いができる彼女は、他の五種族長たちに対しても同じ態度で接する。そんな真似ができる怪異は、恐らく存在しない(笑)。いや、絶対だな。
〈高天野山〉
人里や古屋図書館から離れた、どこか遠くの地にある山。もはや人間の気配など微塵もない、怪異と動物だけが暮らす山。この山への入山にはいついかなる時であっても八葉の認可が必要になっている。認可を得ていない者の侵入には、即座に八葉が対象を捕捉し、排除・迎撃に当たる。また、入山に際しては毎回毎回八葉の認可が必要になる。(めんどくせぇぇぇー。)千理などの顔馴染みであっても、それは例外ではない。『正義の門』などによるワープ手段での入山・下山・山内の移動も一切認められていない。必ず毎回八葉に認可してもらわないと、この高天野山での安全は保障されない。唯一の例外として、元々高天野山に暮らしている者だけは八葉の認可は不要となっている。さすがにね。
頂上には五種族長会議が開かれる場所へと繋がる転移門がある。このことを知っているのは五種族長たちとその側近たち、高天野山に暮らす者たちのみである。八葉の守護役としての役目にはこの存在を保護・秘匿する意味もある。それだけこの山は若鄙にとって重要な地である。
だが、どれだけここが重要な場所であることを説いても、それを知らない者からすれば、ただの山同然である。って言うか、知ってる者からしても、基本的にただの山である。