〈番外面・後〉悪魔の誘い(後編)
久し振りの決闘回。しかし実際の描写シーンは少ない(笑)。そして文字だけじゃ全然分からない(笑)。悲しいなぁ・・・。作者の頭の中では完璧な決闘シーンが描かれているのに、それを文字だけで伝える技術がないというね・・・。今回は特に、しっかり出来てんだけどなぁ~・・・。頭ん中ではね(涙)。
てなわけで、細かい説明は後書きの方で・・・。
午後二時頃、所変わって古屋図書館には一人の来訪者が。
彩羽「こ、こーんにちはー・・・。史織さーん・・・?」
これはこれは彩羽さん、お久し振りです。
今はですね史織さん、留守なんですよ。
彩羽「・・・もしかして、いない?柊大佐から、史織さんは基本的に母屋の縁側でゆったりしてるからーって聞いてたんだけど、今日はたまたまお出かけしてるのかな?」
まあ、基本的に柊さんの言う通りですね。ゆったり時空を満喫するのが史織さんの至福ですから。
彩羽「う~ん・・・。ようやく一人で里の外に出られるようになったんだし、せっかくだからーってここまで来ちゃったんだけど・・・。いきなり来ても迷惑だったかな・・・?・・・史織さんが帰って来るの、待ってようかな。」
むむむ・・・。しばらく史織さんは帰って来そうにないんですが、どうしたものやら・・・。
彩羽「っていうか図書館の入り口、開きっぱなしなのはアレなのかな?換気でもしてるのかな?史織さんがお出かけしてるんじゃちょっと不用心だし、私が番をしてようかなー。」
ああ・・・。入り口が開きっぱなしなのは、ただただ史織さんが面倒なので開け閉めの管理をしてないだけなんですよ・・・。
ってこと、彩羽さんには内緒にしておくことにしましょう。
・・・・・・
彩羽「ふにゃあぁぁぁ~・・・。今日もいい天気だな~。」
図書館入り口の受付前に座っている彩羽さん。
と、その時!
ブオーン、・・・ブオーン
千理「・・・。あら?」
彩羽「ひゃぁぁっっ!?」
彩羽さんの目の前に、千理さんが現れました。
千理「貴方はあの時の・・・。」
彩羽「ええぇぇっ!?ええ、えとえとえとと・・・(焦り)。」
そう。あの時、千理さんは彩羽さんのことを認識していましたが、彩羽さんは千理さんのことを直接は知らないんですよね。彩羽さんが目を覚ました時にはもう千理さんはあの場にいませんでしたから。
それにしても彩羽さん、かなり動揺していますね。これは・・・。
千理「ごほんっ。落ち着きなさい。」
彩羽「は、はひぃっ!」
千理「私は別に貴方に危害を加えるつもりはありません。安心しなさい。」
彩羽「は、はい・・・(安堵)。」
千理「私は史織に用があってここへ来たのですが、貴方もですか?」
彩羽「は、はい。でも今はいなくて・・・。だから史織さんが帰って来るまでここで待ってようと思って・・・。」
千理「ふむ・・・。まあ、私がいれば危険はないですかね(ぼそっ)。」
彩羽「えっ?」
千理「い、いえ。・・・ここでずっと史織の帰りを待つのも暇でしょう。どうです?私と一緒に史織の所へ直接向かいませんか?」
彩羽「は、はい・・・。・・・えっ?」
千理「それでは行きましょうか。」
ブオーン
彩羽「えっ、えええぇぇぇっ!?」
・・・ブオーン
そう言って、二人は『正義の門』の中へと消えていきました。
・・・・・・
一方、堅くな鉱山外れでは・・・。
史織「せやあぁぁぁぁっ!!」
シュバババババッ
サリアン「ふんっ!」
ポフポフーーン
サリアン「っ!?」
キラーンッ・・・、ズバァッッ!!
サリアン「っと、危ないじゃない。」
小冬「くっ・・・。(避けられた・・・!?)」
ズザザァー
史織「はぁ・・・はぁ・・・。」
小冬「し、史織・・・?はぁ・・・はぁ・・・。」
史織「え、ええ・・・。まだ大丈夫よ・・・。」
サリアン「あらあら、どうしたの?最初の威勢はどこへ行ったのかしら?」
史織さんと小冬さんを同時に相手して、まだ余裕のあるサリアンさん。さすが、というべきでしょうか。
サリアン「まあ?確かに人間にしてはなかなかの力を持ってるみたいだけど・・・。」
と言いつつ、史織さんの方を見つめるサリアンさん。
史織「な、何よ?」
サリアン「・・・ま、いいわ。貴女たちの力は大体分かったから、そろそろ決めさせてもらおうかしら。」
すると、サリアンさんが目を瞑り、長文の魔法詠唱を始めました。
小冬「い、今が好機ですわっ!ここは私が・・・。」
と、小冬さんが攻撃の構えを取ります。
しかし。
史織「待って!!小冬。」
小冬「えっ?」
史織「今は、アイツの詠唱が終わるのを待ちましょう。」
小冬「ど、どうしてですの?魔法の詠唱中なら、ほぼ無防備も同然ですわ。この好機を逃せば・・・。」
史織「・・・ふっふっふ。」
史織さんが不敵に笑います。
小冬「・・・史織?」
史織「ねえ、知ってる?小冬。・・・私ね、こーゆー展開には慣れてるのよ。」
小冬「?」
史織「だーいじょーぶ。私を信じて?」
小冬「・・・ふふっ、分かりましたわ。この決闘の命運、史織に託しましたわよ。」
史織「任せなさいって!」
すぱぱっ・・・
・・・・・・
サリアン「~~~・・・。あら、意外ね?長文の詠唱中は邪魔したり攻撃してくるものだと思ってたんだけど。無い魔力でも振り絞って、今からの戦いに備えてたのかしら?」
史織さん、いつも以上に身体に魔力を集中させているようです。
史織「あら、やっぱり分かる?私は魔力、無いわけじゃあないんだけどね。まあ、詠唱の邪魔してもよかったんだけど何か罠の可能性もあるって考えたからね。大人しくしてたわ。」
サリアン「へえー、ちゃんと考えてるのね。でも残念。別に罠も何もなかったわよ?単純に大きい魔法を使うための長文詠唱だったんだから。」
史織「・・・え?」
小冬「ちょ、ちょっと史織ぃぃ!!」
史織「え、いや、だって、あんなあからさまに無防備な状態を晒すなんて怪しいって思うじゃないの!」
・・・あれ、これ、マズくないですかね?
サリアン「・・・はあ、どうやら貴女たちのことを買いかぶっていたようね。」
ぼわんぼわんぼわんぼわんっ
史織・小冬「「っ!?」」
サリアン「こんな大掛かりな魔法まで使う必要はなかったみたいだけど、もう発動させちゃったし・・・。・・・ま、精々死なない程度に生きなさい?」
史織「っ!?(マ、マズいっ!!)」
サリアン「『ウィルベルヒドロゲン』。」
ずぶずぶずぶずぶ・・・
史織「うぷっ・・・!?(なっ、何これっ!?)」
小冬「ごぽごぽっ・・・!?(きゅ、急に水が・・・!?)」
さっきまで荒野だったはずの周囲全域があっと言う間に水の中に飲み込まれてしまいました。
もちろん、それに史織さんと小冬さんも巻き込まれてしまいました。
陸地であるにも関わらず、まるで巨大な湖中にでも閉じ込められてしまったかのようです。
サリアン「これは、これだけは越えられない種族の壁。人間は、水の中では自由に動くこともできない。逆に、水の中にいるほど力が増す私のような水魔・・・。」
史織「うぐごぼぽっ・・・。(マズ・・・い、このままだと・・・、い、息が・・・。)」
サリアン「分かったかしら?これが格の違い、というやつよ。人間と魔族では、持って生まれた魔力の差が違いすぎるの。」
小冬「むぐー・・・。(し、史織ぃ・・・。)」
サリアン「さっ、そろそろ仕上げよ。悪くは思わないでね?これが私のとっておき・・・、安らかに眠りなさい。」
水の中で、もがき苦しむ史織さんと小冬さん。
サリアン「・・・『クーニヒトルジオン』。」
ずぶおぉぉぉぉ・・・!!!!
サリアンさんの奥義が放たれ、もはやこれまでか・・・と思われたその時。
史織「(にやっ)」
ぱああぁぁぁんっっ!!!!!
サリアン「はっ!!!???えっ、なっ、何っ!!!???」
突如として、史織さんたちを飲み込んでいた水が一瞬にして四散しました。
飛び散った水が静寂な時間をより一層演出しています。
まるで周囲の時間がゆっくりと流れているかのように。
そして、飛び散った水がサリアンさんの頬を優しく伝っていきます。
一瞬の静寂の中に吹く、そよ風と共に。
サリアン「ど、どうして私の術が・・・。はっ!あ、あの二人は!?」
慌てて周囲の状況を確認するサリアンさん。その視線の先には、力なく落下していく史織さんの姿が。
史織「げふっ・・・。せ、せめて、一矢報いて・・・。」
シュパンッ
史織さんが最後の力を振り絞って、一発の光弾を放ちます。
サリアン「ふんっ。こんな力も籠ってない光弾如きで・・・。」
パシッ!
しかし、何の苦労もなく史織さんの光弾は弾き飛ばされてしまいました。
史織「・・・くっ。」
どさっ
地面に仰向けに倒れ込んでしまった史織さん。
・・・あれ?でも、何だか史織さん・・・、
史織「あぁー、悔しい。もう力が出せないわ・・・・・・。」
笑ってません?
ッッッゥゥズザン・・・!!!!!
サリアン「っっっ・・・!!!???」
その一瞬一撃で、全てが決まったと言います。
すたっ
小冬「・・・全く。私だって史織が思っているほど丈夫ではないんですのよ?」
小冬さんが史織さんの傍に降り立ちます。
史織「いやいや。今私が倒れてて、小冬が立ててるこの状況を見れば、いかにアンタが丈夫なのかってのがよく分かるでしょ。」
小冬「うふふ。これを機に、史織も私と一緒に修行しません?」
チャキンッ
史織「・・・ふふっ、遠慮しとくわ。」
小冬さんが然刀を納刀すると同時に。
・・・ひゅうぅぅぅーーー、ドガアァァァァン!!!!!
サリアンさんが上空から勢いよく落下してきました。
サリアン「・・・う、ごががぁ、ぁぁ・・・。」
この決闘、勝負ありのようです。
どうやら史織さんと小冬さんの作戦勝ちみたいですね。
ウェンディ「・・・で?リアの様子はどんな感じだったの?」
アシュリー「何だか機嫌は良さそうでしたよ?やっぱりお嬢様の仰る通りでしたね。」
ウェンディ「ふふん、でしょう?やっぱり史織たちには我々怪異を惹き付ける何かがあるのよ。あの人間嫌いのリアがそうっぽいって言うんなら、間違いないわね!」
ウェンディさんとアシュリーさん、堅くな鉱山を飛行中です。
どうやらサリアンさんのアトリエの方角に向かっているようですね。
アシュリー「あ!そろそろ見えてきますよ。・・・あれ?」
ウェンディ「ねえ・・・、何か、いや、まあ、何となくなんだけど・・・。」
アシュリー「サリアンさまぁぁぁぁぁ!!!!!」
びしゅーぅん・・・!
アシュリーさん、一気に加速してその場所へと向かって行きました。
ウェンディ「ああ・・・、リアも・・・なのね。仲間が増えたのは嬉しいやら何やらって感じね。」
・・・・・・
アシュリー「サリアンさまぁぁぁぁぁ!!!!!」
史織「ん、今の声、アシュリー?」
小冬「ええ。帰って来たみたいですわ。・・・あら?」
史織「どうしたの?」
小冬「もう一人誰かが・・・あ、ウェンディさんですわ。」
史織「え、ウェンディ?」
小冬「アシュリーさんが連れて来たようですわね。」
史織「ああ。何かサリアンとウェンディって知り合いだとか何とか言ってた気がするわ。アシュリーのヤツ、ウェンディを呼びに行ってたのね。」
アシュリー「サリアン様!!!」
サリアン「うぐぅぅ・・・。」
アシュリー「・・・お二人がサリアン様を?」
史織「ま、まあ、私たちと決闘してたわけだし。・・・な、何よ。」
アシュリー「・・・。」
あ、あれ?アシュリーさん、もしかして・・・。
アシュリー「・・・いえ!お二人とも、聞いてた通りすっごくお強いんですね。感心しました!」
ええぇぇっ??!!
史織「あら、分かっちゃった?」
ウェンディ「倒れ込んでるあなたが言う?」
史織「何よ、悪い?私も結構力を使ったんだから。」
小冬「うふふ。私と史織、二人でサリアンさんを打ち破ったんですのよ。」
ウェンディ「あら、そうだったの。二人で・・・、ね。」
アシュリー「お二人は身体の方、大丈夫ですか?」
史織「私は大丈夫じゃないぃ~。」
小冬「私は、史織やサリアンさんほどでは・・・。」
ウェンディ「とりあえずアトリエの中に入ったら?手当ても必要でしょう?」
アシュリー「そうですね。では小冬さん、史織さんを運ぶの手伝ってもらえますか?」
小冬「もちろんですわ。」
というわけで、史織さんを小冬さんとアシュリーさんが抱え上げます。
史織「・・・あのさ、抱え上げられてる私が言うのもアレだけどさ。アシュリー、サリアンは放置でいいの?」
アシュリー「ふふっ。そのためにウェンディお嬢様を呼んできたんじゃないですか。」
ウェンディ「やっぱりそのつもりだったのね。ま、リアのことは任せなさい。リアだって怪異なんだから、ちょっとくらい放ったらかしにしてたって大丈夫よ。」
史織「・・・そうなの?」
アシュリー「だって、サリアン様ですから!!きっと大丈夫です!」
すんごい自信に満ちた笑顔で返すアシュリーさんです。
アシュリー「でも小冬さん、よかったです。」
小冬「えっ、何がですの?」
アシュリー「だって、もう全然私やサリアン様のこと怖がってないみたいですし。ちょっと嬉しいです。」
小冬「あっ。」
史織「そう言われたら、そうね。いつの間にか慣れちゃった?」
小冬「(ガクガクブルブル)」
アシュリー「あー・・・、えっと、小冬・・・さん?」
史織「・・・やめてよ?小冬、いきなり手を放すとか。私、今立てないんだか・・・。」
ばっ!
小冬「あわっ、ちょっ、やっぱりごめんなさいいぃぃぃぃ~・・・!!!」
がくっ
史織「いだぁっ!」
ぴゆーーん・・・・・・
物凄い勢いで小冬さんは遠くへ逃げていきました(笑)。
アシュリー「っととと。史織さん、大丈夫ですか?」
史織「いったたた・・・。もう、小冬のヤツ~・・・。改めて意識したら、やっぱりダメだったのね。」
アシュリー「あはは・・・。余計なこと、言っちゃいましたかね~。」
史織「アンタも。あんだけ拒絶されたってのに、結構タフなのね・・・。」
アシュリー「そうですね~。まあでも、まだ諦めてませんからね。妖魔の精神を舐めないでくださいよ~?」
史織「ふふふっ。精々頑張りなさいよね。」
キィィ、ガチャン
史織さんとアシュリーさんがアトリエの中へと入ったのを見届けたウェンディさん。
ウェンディ「あなたよりもアシュリーの方が史織と打ち解けてるみたいじゃない。どうなのよ、リア?」
サリアン「んぐぐぅ・・・。」
ウェンディ「でーも、これでまた話のネタができたわね。けど、リアからだけじゃ詳しくは聞けないでしょうね。やっぱり史織たち本人から話を聞かないと。」
サリアン「むぐっ・・・、げほっ。」
ウェンディ「って言うか、いつまでへばってるのよ~。そんなにボコボコにされたの?・・・まあ、かく言う私も一晩は目が覚めなかったらしいんだけどさ(笑)。」
サリアン「ディ、ディア~・・・。」
ウェンディ「はーい、何?」
サリアン「お、おぶってぇ~・・・。」
ウェンディ「はいはい、分かったわよ。もう~・・・。」
小冬「わ、私も・・・、お手伝い致します・・・わ。(ビクビク)」
おっと、小冬さんが戻って来たようです。
ウェンディ「あら、そう?助かるわ。」
小冬「私の『戦風』はあの伊戸さんを破った奥義ですから。身体には響いてるはずですもの。」
ウェンディ「ふふふっ、なるほどね。そりゃあリアがこうなってても不思議じゃないわね。」
サリアン「うぬおぉぉ・・・。」
とりあえず、皆さんアトリエの中に入って休憩しましょうか。
〇サリアンの技『ウィルベルヒドロゲン』
水魔種族の大技の一つ。辺り一帯を一瞬にして魔力の水で埋め尽くす。簡単に言うと、周辺を一瞬で『海』に変えるようなもの。ヤバい。『ティーフィンメア』に少し似ているが、生み出した水を自在に制御できるわけではない。そうは言うけど、別に制御できなくてもそもそも規模が違いすぎるのであまり関係ない。やっぱりヤバい。だって、急にいきなり突然、海の中に沈められるような感じだもん。そりゃ史織たちも手が出せんわね。
ちなみに、生み出された魔力の水は耐性のない者の力をぐびぐびと奪う効果もある。人間は特にそうなる。
〇サリアンの奥義の一つ『クーニヒトルジオン』
水魔種族のみが扱える大魔法をサリアンが独自に改良したとっておき。水系魔法における最高峰。陸地で使っても充分強いが、水中や特に『ウィルベルヒドロゲン』中で使うと効果が跳ね上がる。
今回は史織たちに攻撃が決まる前に『ウィルベルヒドロゲン』共々、史織に術を全て解除されてしまったため不発に終わる。
〈今回の決闘決着における補足説明〉
本文を読んだだけじゃまるで意味が分からなかったと思うので、何が起こっていたのかを時系列順にして軽く補足。
①サリアンが長文詠唱中に史織が近場の地面に超強力な封印術式を設置した。『十方封鎖』と似たような術式ではあるが、それとは違い一箇所に力を込めた封印術式であるため罠的な意味合いが強い。サリアンが封印術式に気付けなかったのは、史織がそれを圧倒的に上回る魔力を自分に集中させて封印術式の気配を悟らせなかったため。大きな魔力(史織)のせいで、小さな魔力(封印術式)に気付けなかった。
②サリアンの『ウィルベルヒドロゲン』が放たれ、史織たちが飲み込まれる。これにより史織たちの力がぐびぐびと奪われる。
③サリアンの『クーニヒトルジオン』が放たれたのを見計らって、史織がさっきの封印術式を発動させる。これによりサリアンの術が全て解除されてしまう。
④史織はほとんど力尽きてしまうが、最後の囮のために光弾を放つ。サリアンはそれを難なく防ぐ。
⑤その間に小冬はサリアンの遥か上を取り、そこから然刀による奥義『戦風』をサリアンに決める。
⑥小冬は地上に着地し、倒れ込んでいる史織と勝利の会話。サリアンは『戦風』の前に敗れる。
ちなみに、史織だけが消耗し切っていた理由は罠として設置した封印術式にかなり力を割いたのと、それを覆い隠すための強大な魔力を自身に集中させ、しかもそれを『ウィルベルヒドロゲン』でぐびぐびと奪われたのが大きな要因。
でも、最初から最後まで全て史織の作戦通りであった。途中、慌てていたシーンもあったがあれも全て演技。自分が囮になって小冬の剣の腕前に全てを託した、まさに作戦勝ち。
実は(描写自体はされていないが)、史織はサリアンとの戦いの中でサリアンには自分の術式よりも小冬の剣撃の方が効果的であることを見抜いていた。だから、トドメは小冬にお願いしていたのだ。