〈番外面・中〉洞窟っていいよね。
今回の題名に深い意味はありません(笑)。
史織「さあ、探すわよ!」
小冬「・・・探す?」
史織「え。あぁあいやいややぁー、ななな何でもないわよー(焦り)?」
・・・史織さん、何か隠してますね。
小冬「・・・ま、いいですわ。この辺りは少々危険な場所ではありますが、史織と一緒なら何も心配ありませんもの。それじゃ、しっかり案内してくださいまし。史織?」
史織「ま、任せときなさいって。多分・・・(震え)。」
ということで、堅くな鉱山のとある洞窟へとお二人は入っていきます。
・・・しばらくして。
小冬「ふわあ~!洞窟の中がこんなに涼しい所だったなんて!とっても涼しいですわ~!」
史織「そ、そうでしょ?洞窟の中って、外と比べると気温が一定なんだって。外が暑い今の時期だと洞窟は涼しくて、外が寒い時期だと洞窟は暖かいらしいわよ。」
小冬「へえ~。・・・うふふっ、史織は博識ですわね。」
史織「そ、そうでもないと思うわよ。」
今お二人がいる地点でも充分外の暑さから免れられていると思います。
しかし、史織さんの歩みは止まりません。
小冬「でも史織?どこまで奥に行くつもりですの?ここでも充分涼しいですわよ?」
史織「えぇっ!?え、えーっとー・・・。」
小冬「・・・はあ。どうせ史織のことですわ。何か手伝ってほしいんでしょう?」
史織「あぁー・・・。ま、まあ、もうちょっとだけ付き合ってくれる?きっと小冬も興味あると思うの。」
小冬「・・・ふふっ。ここまで来たんですもの。最後までお付き合いいたしますわ。」
ふふふ。危険な怪異の巣窟である堅くな鉱山の洞窟を二人の人間が勇敢に突き進んでいきます。
・・・・・・
怪異A「あぁっ・・・、あわわわぁぁーー!」
怪異B「ひ、ひやあぁぁぁーー!」
どたどたどた・・・
小冬「あぁー・・・、ねえ史織?あのー・・・。」
史織「いや、その、言いたいことは分かるんだけどさ・・・。」
史織・小冬「何で?」「どうして?」
お二人が同時に疑問を投げかけます。
・・・えっとですね、さっきから洞窟内を突き進んでいるお二人ですが、中で出会った怪異たちがことごとく悲鳴を上げて逃げ出しているんです。
うーん・・・、これは・・・?
史織「まあ、面倒な決闘を避けられてるって意味ではいいんだけどさ?何か・・・ねえ・・・?」
小冬「ふぅ~む・・・。」
史織「ん、どうしたの?」
小冬「さっきの怪異たちもそうでしたけど、やっぱり・・・。」
史織「・・・やっぱり?」
小冬「私たちを見て逃げ出してません?」
史織「えぇー?」
まあ、そういう風に見えますよね。
小冬「だって、私たちと目が合った途端に逃げ出してばっかりじゃありませんか。絶対にそうですわ。」
史織「う、うーん・・・。そうかなぁ~・・・?」
小冬「何が原因なのかはさっぱり分かりませんが、その原因が私たちにあることは間違いないと思いますわ!」
史織「・・・その根拠は?(・・・まさか!?)」
小冬「私の勘ですわっ!!!」
史織「あぁーっ!!!それ、私のー!!!」
小冬「うふふっ。一度言ってみたかったんですの!史織の決め台詞っ。(にこにこ)」
史織「もおーー!!」
ぽかぽかぽかっ
小冬「も、もうっ。史織ぃ、いい痛っ、痛いですわ。ほらっ、先に進みますわよっ。」
ふふふ。まあそんな感じで、怪異のことは特に気にせずお二人は先に進んでいきます。
すると。
ふわぁ~ん・・・
史織「あっ!小冬、見て見て。あれよ。(こそこそ)」
少し岩陰に隠れて、こそこそ声で話す史織さんの指差す方を見てみます。
小冬「・・・まあ、あれは霊魂ですわね。」
史織「しかも、御魂邸の外にいる、まだ自然のままの霊魂よ。よしよし、やっと見つけたわ。」
史織さん、もしかして・・・。
史織「さあ小冬、アイツを追うわよ!」
小冬「ふふっ、そう言うと思いましたわ。」
漂う霊魂に気付かれないように(?)、お二人は後を付けます。
・・・・・・
洞窟内の入り組んだ分かれ道を迷うことなく進むことしばらく。
小冬「あら?あそこに誰かいますわ。」
史織「んー?」
少し開けた空間の端っこの方に屈んで何かをしている方がいます。
???「んしょ、よいしょっと。もうこれくらいにしておこうかな。あんまり採りすぎちゃうといけないし。」
史織「あっ、アンタ・・・は、えぇーっと・・・。」
アシュリー「ん?あ、あなたはこの前の。」
いつぞやのアシュリーさんです。
小冬「(ひぃっ・・・!)」
アシュリー「確か、史織さんでしたね。」
史織「え?あ、ああー、そそそうよ。・・・でー、アンタは誰だっけ(ど忘れ)?」
アシュリー「あー、酷いですー。私の名前はアシュリーですっ!真名なんてどうでもいいんで、愛称は覚えておいてくださいぃ!」
史織「あぁー、そうだったわね。ごめんごめん。(魔族が真名をどうでもいい、って。それでいいのか(笑)?)」
アシュリー「あれ?そっちの方は・・・。」
史織「ああ。この子は・・・。」
小冬「ちょ、ちょっと史織ぃぃー!!(こそこそ)」
史織「あわわ、ちょ、何よ?」
史織さんの耳元で小声で小冬さんが叫んで、史織さんの服の袖を引っ張ります。
アシュリー「?」
少しだけ、お二人がアシュリーさんに聞こえないような小声で話します。
小冬「どういうことですの!?史織、その方とお知り合いですの!?」
史織「知り合いっていうか・・・、まあ知り合いかな。この前、ちょっとね。・・・何でよ?」
小冬「だってこの方、魔族の方じゃないですの!きき、危険なのでは・・・?」
史織「だぁいじょうぶだって。コイツは妖魔だし、人間の私たちにも好意的だから。・・・コイツの主は、そうでもないけどね。」
小冬「でで、ですが・・・!」
おやおやなんと。あの小冬さんが、少し怯えていますね。
アシュリー「あのー・・・。」
小冬「ひゃうぅぅっ!!」
史織「おぉぅっっと。」
とても丁寧にアシュリーさんがお二人に話しかけてきたんですが、驚きのあまり小冬さん、瞬間的に史織さんの背中に隠れてしまいました。
史織「んもうー、小冬ったら。・・・あー、悪いわねアシュリー。小冬、小さい時に見た夢の影響で魔族、っていうか悪魔っぽいものが苦手でね。」
小冬「にに、人間なら皆そうですわっ!史織が平気なのがおかしいんですのーっ!」
史織「あー・・・。まあだから、あんま気を悪くしないでね?」
アシュリー「ふふふ、それもそうですね。でも、私みたいな妖魔が相手でもこんなに怯えてくれる方がいるだなんて・・・。(じぃーっ)」
小冬「ひぃっ・・・!」
アシュリーさんが物珍しそうに小冬さんを見つめます。
それに対し小冬さんは頭を抱え、しゃがみ込んで怯えます。
こんな小冬さん、なかなか見れませんね。ふふふっ。
史織「(怯えてくれる・・・?)」
アシュリー「おぉぉぅ・・・(恍惚)。何だか、私の中の別な私が飛び出してきそうです~・・・。」
史織「・・・どゆこと?」
アシュリー「そんなことより史織さん。こんな所に、一体どうしたんですか?」
史織「え・・・?ああ、今の時期って暑いでしょ?だから、洞窟の中で涼もうと思って。」
アシュリー「ああー、確かに。外の空気より洞窟の空気の方が涼しいんですよね。んー・・・でも、それならこんな奥までやって来なくてもよかったんじゃないですか?」
史織「ああー・・・。まあー・・・、そうねー・・・。」
小冬「史織ったら、さっき霊魂を見つけた時うきうきしてましたわ。とどのつまり、霊魂を捕まえようとでもしていたんじゃありませんの?(がくがく)」
史織「ぎくっ。」
アシュリー「ふむふむ。私もさっきここに来ましたけど、霊魂は見かけませんでしたね~。私の目的は、こっちですけど。」
史織「こっち?」
そう。さっきまでアシュリーさんが屈んでいた場所には、なんと霊花が群生していたのです。
史織「あっ!ここに霊花があったのね。見つけられてよかった~。」
小冬「あれ?史織の目的は霊魂じゃなくて霊花だったんですの?(ぶるぶる)」
史織「本命は霊魂だったんだけど、霊花が咲いてる場所にいればそのうち霊魂も寄って来るはずだからね。ほら、霊魂って触るとひんやりして気持ちいいじゃない?」
小冬「なるほど。だから、私も誘ってくれたんですのね。(びくびく)」
史織「この前、ここら辺の洞窟のどこかに霊花が咲いてるって聞いたから、その場所を一緒に探してもらおうかなーって思ってたんだけど・・・。(チラッ)」
アシュリー「あはは~・・・(察し)。」
史織「ああー、もう、ごめんって小冬~。泣かないで~?大丈夫だって、私が一緒にいるからさ~(慰め)?」
小冬「うふふぅぅ~~・・・(涙)。」
アシュリー「何かすみませんね。せっかくここで出会ったのも何かの縁だし、洞窟の外までくらいはご一緒しようかと思ったんですけど・・・、私は先に失礼した方が良さそうですね。採取に出かけてから結構経っちゃいましたし、サリアン様が心配してここへやって来ちゃうかもしれませんし。」
史織「ああー・・・、そうね。サリアンがここに来ちゃうと、更に小冬が大変なことになりそうだもん。面倒なヤツが来る前にそうしてくれると助かるかも。」
サリアンさんは人間に対してかなり敵意を持っているようでしたからね。既に史織さんと面識はありますが、小冬さんとは面識がありません。もしかすると、二人が対面するのは危険かもしれません。
アシュリー「ですねー。サリアン様、人間相手となると少しおかしくなっちゃいますから。」
史織「アンタがそれを言っちゃうんだ。」
アシュリー「えへへ~。では、そういうことで私は・・・」
???「だぁ~れがおかしくなっちゃうだってぇ~?」
アシュリー「ひぃっ!?」
???「だぁ~れが面倒なヤツだってぇ~?」
史織「げっ。」
???「・・・貴女は、初めて見る顔ね。」
小冬「ひゃうぅっ!」
???「ふっふっふ、面白い。いいわ、来なさい?私の恐怖を思い知らせてあげる!」
すると、アシュリーさんの持っていた鞄の中の何かが急に光り始めました。
アシュリー「あぁっ!『ライズリング』がっ!」
そのまま三人を囲むように地面に光の輪っかが描かれると。
史織「え?」
小冬「ふゆゆぅぅ~。」
しゅいんっ・・・
謎の光に包まれたと思ったら、光の輪っか内にいた三人はいなくなってしまいました。
・・・あれ?
〈ライズリング〉
サリアン発明の一品。丸型蛍光灯みたいな形をしている。(この世界に蛍光灯なんてものは存在しないが。)発動時に白く強い光を発する。と同時に所有者の周囲の地面に光の輪っかが描かれる。その内側にいる者が効果対象となる。