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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
人騒がせな怪異たち
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〈番外面・序〉一体どこへ?

今章の番外面、やりたいことは決まっているのにそれまでの過程が決まらなさすぎました(笑)。結局、番外面自体の長さは短めになりそうかな?

 ・・・ある日の午前二時過ぎ。高天野山を下山してくる方が一人。

千理「・・・ふう。」

随分とお疲れなご様子の千理さんです。

???「あ、ようやく戻られましたか。貴方()最後ですよ、千理様。」

おや、どうやら麓に誰かいるようです。

千理「ああ、八葉(やつは)。遅くまでご苦労様です。」

彼女は金峯(かなみね)八葉(やつは)さん。この高天野山に暮らす怪異の一人です。

八葉「『ご苦労様です。』じゃありませんよ、全く。他の方々(・・・・)と比べて随分と遅いお帰りのようですが?」

千理「も、申し訳ありません。会議終わりの気分転換にちょっと付近を散策していまして・・・。」

八葉「・・・千理様のことですから、何も心配はないんでしょうけど?それならそうと早めに知らせてほしかったです。」

千理「私が言うのもなんですが、別に私など待たずとも休んでくれていてもよかったのですよ?」

八葉「そうはいきません。五種族長の方々全員をお迎えし、お見送りするまでは休むことなど許されません。・・・んー、いや、許されるのかもしれませんが、それだと私自身がすっきりしません。」

千理「ふふふ。その性格も相変わらずなようですね。元気にやっているようで安心しました。」

八葉「そう思ってくださるんでしたら、早くお帰りになって私を休ませてください(皮肉)。」

千理「わ、分かりましたよ。・・・では、またいつか。」

八葉「はい、またいつか。・・・お勤めご苦労様でした。」

千理「ええ、貴方もね。」

ブオーン、・・・ブオーン

八葉「ふうー。さーってと、明日は(・・・)忙しくなるだろうしなぁ~。さっさと休もうーっと。」

そうして、夜は更けていきました・・・。


 それから何日か経った朝。

史織「う、うぐぐぅぅ~・・・。」

かなりの暑さでうなされている様子の史織さん。

史織「・・・はっ。・・・。暑さで目が冴えちゃった。」

おやおや、お早いお目覚めですね。まあ、仕方のないことかもしれませんが。

史織「ううぅぅ~。今何時よ~。えっと・・・。」

現在午前七時前。日もすっかり登って、今日もいい天気です。

史織「げぇー、まだ七時くらいじゃな~い。んー・・・、えっと・・・。」

あれ、何か予定でもありましたっけ?

史織「・・・よし、涼みに行こう。」

え?

史織「まだ朝っぱらだってのにこんな暑さ、お昼になったらもっと暑くなるでしょ。そうなる前に、涼しい場所に行けばいいのよ。」

な、なるほど。ですが、そんな涼しい場所なんてありましたっけ?

史織「せっかくだし、小冬も誘ってこーかな。今の時間だと、多分朝の修行中よね。」

ということで、史織さんがお出かけするようです。はてさて、一体どこへ行くんでしょうかね?

・・・・・・


 生命の森の入り口付近に自作の小屋を建てて生活をしている小冬さん。

いつも午前六時に起床しては森の奥に行き、日々剣の修行に励んでいます。朝修行も欠かさない努力家さんです。

小冬「ふう。今朝も暑かったですわね。こうも暑いといつも以上に汗をかいてしまいますから、しっかり汗を流しませんと。」

朝修行帰りの小冬さんです。丁度今、森の奥から帰って来たみたいですね。

小冬「(・・・んっ?)」

ざっ

えっ?ど、どうしたんですか?急に足を止めたりして・・・。

小冬「・・・。」

チャキッ

小冬さんが宙刀を構えました。・・・えっ?

小冬「『非情(ひじょう)・・・(まる)()り』。」

ずしゃぁぁっ!

???「うひゃあぁぁっ!?」

小冬「(・・・あれ?今の声って・・・。)」

・・・なんと、小冬さんの小屋目掛けて小冬さんは(・・・・・)斬撃波を放ちました。

斬撃波は見事に小屋を真っ二つにするよう通過しました・・・が、小屋は何ともないみたいです。

んー、どういうことでしょうか?

っていうか、中に誰かいたみたいですね。この声は・・・。

ばこんっ!

史織「うわわわわぁぁっ!」

びたーん

・・・史織さんが戸を勢いよく開けて中から飛び出してきました。

まあ、大きく転んでしまいましたが(笑)。

小冬「はあ・・・。やっぱり史織でしたのね?」

史織「こ、小冬の仕業ねー・・・?今のって・・・。もうー・・・。」

小冬「そーですわ。小屋の中に何か(・・)気配を感じましたので。」

史織「それだけでいきなり自分の小屋(うち)目掛けて攻撃するー?」

小冬「・・・ふふふっ。史織?そこの地面を見てくださいな。」

史織「えっ?」

小冬さんは人里と生命の森を繋ぐ道の地面を指差しました。

つまり、史織さんがここへ来る時に歩いて来た道です。

小冬「うっすらとですが、史織の靴の足跡が見て取れますわ。」

史織「え、え~?見える・・・かなぁ~・・・。」

史織さんにはあまりよく分からないようです。

小冬「私がどれだけここで暮らしてきたとお思いですの?朝修行に出かけた時にはなかった違和感がありましたから。で、地面をよく見てみれば史織の足跡があった、というわけですわ。」

史織「私の足跡だなんて、よく分かったわね・・・。」

小冬「まあ、それは確信的なものではありませんでしたけど。」

史織「え?」

小冬「でーも、こんな所にやって来る人で、真っ直ぐ私の小屋へと向かって来る人の中で、堂々と小屋の中に入って待っているような人は私、一人しか知りませんから。(はきはき)」

史織「そ、それって、中にいるのが私じゃなくて柊だった可能性だってあるでしょ!?柊だったら大変なことになってたわよ!?」

小冬「それはありませんわっ。」

史織「な、なんでよ・・・?」

小冬「柊さんは私がいないと分かれば、必ず時間を空けてから出直してくれますわ。勝手に小屋(うち)に上がり込んだりしませんわー。」

史織「うぐっ・・・。」

あぁー。言われてみれば、それはそうですね。

史織「ちょ、ちょっと待ってよ!それじゃあ、中にいるのが私だって分かっててあんな危ない攻撃してきたのー!?」

小冬「史織なら、必ず避けてくれると思いましたもの。実際、そうしてくれたでしょう?(にこにこ)」

史織「なんでアンタが得意気なのよ・・・、もう。」

史織さんの反応力と勘を信じて攻撃をした、ということでしょうか。

小冬「万が一、中にいるのが史織じゃなくて怪異とかだったとしたら、それはそれで私の攻撃を避けられずに身体を半分こにされていたでしょうね。(にこにこ)」

お、おおぉぅ・・・。小冬さん、にこにこ笑顔でなかなか怖いことを言ってくれますね。

小冬「人の家に勝手に上がり込んだ罰という意味も込めて、中にいるのが史織でも怪異でもいいような攻撃をしたまでですわ。まあ、史織や柊さんでしたら別に勝手に上がり込んでくれていても構いませんけどね。そうでなければ、身体を半分こですわっ!」

史織「それ、笑顔で言う台詞じゃないから・・・。」

小冬「うふふっ。それで、今日はどうしたんですの?史織の方からこちらに出向いてくださるなんて。」

史織「あー、そうそう。もう暑くて暑くってヤになっちゃいそうだったから、涼みに行こうと思ってね。それで、小冬も一緒にどうかなーと思って誘いに来たの。」

小冬「まあ。それは魅力的なお誘いですわね。ぜひお付き合いさせてくださいまし。」

史織「よかったー。それじゃ、私はここで待ってるから準備してきてね。」

小冬「はーい。(・・・んー、ですが、そんな涼しい場所なんてありましたっけ?)」

はてさて、小冬さんも疑問に思っているようですね。史織さんは一体どこへ連れて行ってくれるというのでしょうか?

(厳格な監視員)金峯(かなみね) 八葉(やつは)   種族・金剛  年齢・一般以上  能力・〈未公開〉

 通称・忍ぶ守り人こと、金剛の怪異。普段からずっと高天野山に暮らしており、高天野山から離れることは一切ない。五種族長である千理と顔馴染みの仲であり、梓慧とも顔馴染みの仲である。名のある怪異であっても五種族長と相対すると多少は畏れるものなのだが、彼女はそういったことが一切ない。というか、あの千理相手にずけずけとものを言える精神を持っている。別に態度が悪いだとか毒舌だとかそういうのではない。ただまあ、何て言うか、そういう性格と言えばそうなのかもしれない。


〇小冬の技『非情丸(ひじょうまる)()り』

 宙刀による技の一つで、最近扱えるようになったという。上段の構えからそのまま刀を振り下ろして三日月状の斬撃波を放つ。生きとし生けるもの、感情や意識を持つもの全て(死者や霊であっても)の身体を真っ二つにする。この時、身体の材質・硬度を一切無視して斬撃波は貫通する。でも、真っ二つにされたからといって死に至るような技では全くない。ほんの少しのダメージは負うものの、身体が二つに分かれた後も一応生存できる。小冬曰く、『痛みをほぼ伴わない肉体切断』らしい。脳と間接的に繋がっている部位なら、切断された後でも自由に動かすことができる。(例・人間が腰の高さで水平方向に切断されたら、脳と繋がっている腕や口などは動かせるが脳と離れた足は動かせなくなる。)ちなみに、斬撃波の射程は約十メートルと短い。この技の最大の特徴は、無生物、感情や意識を持たないものには一切影響を与えないという点にある。人間に向けて放った場合、命中した人間は部位を切断されるが衣服などには何の影響もない。

 一応、切断後には分かれた部位を元通りくっつけて戻すことができる。でも、切断された本人が戻すことはできない。・・・くっつけて、っていうのがしっくりくるのかどうかは分からないが。

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