〈第五面〉『決闘』とは似て非なるもの(後編)
前回丸々過去話回をやったせいで、時間軸が分かり辛くなっているかもしれません。すみません。
開幕の場面は、〈第五面〉(前編)クロマリーヌの館にサリアンがやって来た時の続き。
舞い戻った場面は、同じく〈第五面〉(前編)史織たちとサリアンが出会った後の続き。
とまあこんな感じで、基本的には(前編)からの続きです。相変わらず話の構成が下手くそな作者で申し訳ない・・・。
そして、今回は(後編)であるというのに中途半端な形で終わっています。(続くのはもちろん続きますけれど。)「急ぎ足+構成破綻」という無茶苦茶な状態ですが、何卒ご容赦を・・・。
・・・数刻前のこと。
ウェンディ「・・・アシュリーが帰って来ない?」
サリアン「ええ・・・。あの日貴女たちと別れた帰り道に何かを採取しに行ったっきりなのよ・・・。」
ウェンディさんの部屋に皆さん集まって相談しています。・・・リミューさんだけいませんね。
ウェンディ「あれから・・・?だって、あの日って何日か前じゃない。それからなの?」
サリアン「二日くらいなら採取でアトリエを空けることはあっても、こんなに長い間あの子が私に何も言わないで留守にしたことなんてなかったの。」
伊予「どこに採取しに行ったのかは分からないのですか?」
サリアン「あの子は『切らしてる素材を採取しに行く。』って言ってたのよ。でも、調べてみても何の素材も切らしてはなかったの。だから・・・。」
伊戸「何を採取しに行ったのかさえ分からない、と・・・。」
サリアン「どうしよう・・・。私、あの子の身に何かあったんじゃないかって・・・。」
ウェンディ「落ち着きなさい、リア。あなたの大切な従者でしょう?まずはあなたがしっかりしなさい。」
サリアン「ディア・・・。」
ウェンディ「考えるのよ。アシュリーがよく採取しに行く場所とか、珍しい素材のある場所とか・・・。」
サリアン「・・・私、採取はあの子に任せてばっかりだったから、あの子が普段どこに採取しに行ってるのか、あまり知らないのよ・・・。これだけ日数をかけて採取しに行っているんだからどこか遠くの場所まで行ってるんじゃないかって思って、少し遠くの場所を重点的に捜しに行ったりしてたんだけど・・・。」
伊予「あんまり遠くだと、近くにアシュリーがいても見つけられるかどうか、少し難しいところがありますけど・・・。」
サリアン「あの子が私から一定範囲内にいれば、あの子の魔力を追跡できるから見つけるのはそこまで難しくはないと思うの。でも、仮にあの子の身に何かがあって弱っている状況なのだとしたら・・・、それすらできないかもしれないわ・・・。」
伊戸「むむむ、困りましたね・・・。どうすれば・・・。」
う~む・・・、八方塞がりですね・・・。
すると。
ガチャ
リミュー「おねえさまー。さっき伊予と一緒に淹れたお茶、持って来たー。」
リミューさんがお盆に紅茶を三つ乗せて運んできました。・・・ちょっと容器がぐらぐら揺れて、今にもこぼれてしまいそうです。
伊予「あぁっ、リミュー様!ああ危ないですよぉっ!私が運びますから、その場でお待ちをっ!」
ウェンディ「もう、リミュー?運ぶのは危ないんだから部屋で待ってて、って言ったじゃない。」
リミュー「うぅ~、だってぇ~・・・。あれ?リアがいる!どうしたの~?もしかして、また遊びに来てくれたの?!」
ウェンディ「リ、リミュー?今ね、ちょっと大事な話をしてて・・・。」
サリアン「・・・いいわよ、ディア。構わないわ。」
ウェンディ「う、う~ん・・・。」
サリアン「あのね?リミュー・・・。アシュリーがいなくなっちゃって、私困ってて。」
リミュー「アシュリーが?どこかに行っちゃったの?」
サリアン「ええ・・・、そうね。何を採取しに行くのかを言わないで、そのまま出かけたっきり帰って来なくなっちゃって・・・。」
リミュー「何かを採取しに?・・・れーかじゃないの?」
サリアン「・・・えっ?」
ウェンディ「えっ・・・?」
伊予「あっ・・・。」
咄嗟に放たれたリミューさんの言葉が、全ての謎を解き明かしたような気がしたサリアンさんたち。
伊戸「ど、どうして霊花だと?」
リミュー「え?だってこの前れーかのお話した時、リアが欲しそうにしてたのを見て、アシュリーったらじっと考えてたよ?だからきっと、リアには内緒でこっそりれーかを採ってきてリアをびっくりさせようとしてるんじゃないかなー、って。」
ウェンディ「・・・仮にそうだとすると、アシュリーはこの鉱山の洞窟のどこかに・・・?」
伊予「で、ですが!本当にそうだとすると、アシュリーは・・・!!」
サリアン「・・・私、行かなきゃ。」
ウェンディ「リア・・・。」
サリアン「ありがとう、皆。・・・すぐに向かうわ。」
リミュー「リア、もう行っちゃうの・・・?」
サリアン「・・・ええ。ありがとう、リミュー。貴女のおかげでアシュリーのこと、見つけられそうよ。」
リミュー「えへへ~、そう(笑顔)?」
サリアン「じゃあ・・・、お邪魔したわね。」
そう言って、サリアンさんは大急ぎで館を後にしました。
伊戸「お手柄ですね、リミュー様!おかげで何とかなりそうですね。」
リミュー「わーい!私、おてがらー!」
ウェンディ「・・・確かにお手柄かもしれないけど、そこまで楽観的な気分にはなれないわね・・・。」
伊戸「えっ?どうしてですか?居場所の目星が付いただけでも・・・。」
伊予「さっきサリアン様が仰っていたこと、忘れたの?」
伊戸「・・・うん?」
ウェンディ「リアは、ある程度近くにアシュリーがいればその魔力を追跡できる。けど、アシュリーが何らかの影響で弱っている状況ならその限りではない。だというのに、リアはずっとアシュリーの魔力を感知できていなかった。アシュリーは今、この鉱山内にいる可能性が高いというのに・・・。」
伊戸「・・・えっ?っていうことは、まさか・・・。」
伊予「本当にアシュリーがこの鉱山内にいるのだとしたら・・・アシュリーは今、危機的状況に立たされているっていうことになるわ・・・。」
ウェンディ「アシュリー・・・。大丈夫かしら・・・。」
そして場面は舞い戻り・・・、堅くな鉱山洞窟奥にて。
彩羽「だ、大丈夫・・・ですか?」
アシュリー「うぅ・・・うぅ・・・。」
彩羽「まだ・・・。でもこれ以上、私にはもう・・・。」
岩陰に隠れて、引き続きアシュリーさんの手当てを続けていた彩羽さんですが、もうこれ以上手当てのし様はないみたいです・・・。
ドカァァァァン!!!
バコゴォォォン!!!
彩羽「うぅっ!・・・し、史織さん・・・。」
岩陰の前では、史織さんとサリアンさんが激しく戦っています。
史織「くっ・・・!」
サリアン「ふんっ!戦えるのはお前だけか?人間。あっちに隠れてる人間にも加勢してもらえばいいものを。」
史織「彩羽には、絶対に手出しさせない!!!」
サリアン「ふんっ!知ったことか!・・・でも、戦えるのがお前だけというのなら・・・、お前がアシュリーを・・・!!」
史織「だから!私たちじゃないってば!!!」
サリアン「とにかく、お前さえ先に潰してしまえば後の処理は楽そうね。」
史織「(はぁ・・・はぁ・・・。ちょっとマズいわね・・・。コイツ・・・、頭に血が上って全くこっちの話を聞こうとしない。早く一撃入れて大人しくさせたいけど、ウェンディ並の強さだし・・・。彩羽も守らなきゃだし・・・、どうすれば・・・。)」
サリアン「うーん・・・。仕方ないわね、お前ごときに使うのはちょっともったいないけど・・・。」
すると、サリアンさんが何かの道具を召喚しました。
史織「っ!?」
サリアン「『雨乞いの呪石』。」
しゅぅぅぅぅーーー・・・
サリアンさんが取り出した道具の効果が発動しました。
ぱらぱらぱら・・・、さぁぁぁーっ
史織「(っ!?・・・雨?)」
小粒の雨が、雲もない洞窟内に降り始めました。
史織「(何で雨なんか・・・。っ!!??)」
しゅたっ!
史織さんお得意の緊急回避。
シュバババババババッ!!!
史織「・・・っと。(危なかった・・・。)」
サリアン「くっ・・・。(今のを避けられるなんて・・・。)」
史織「(さっきまでのと比べて、威力が上がってる・・・。コイツの能力かしら・・・?)」
すっ
サリアン「いちいち考えてる余裕があるのかしら?」
既に史織さんの背後にサリアンさんの姿が・・・。
史織「なっ!?」
サリアン「『ティーフィンメア』。」
ごぼごぼごぼっ、ぶくぶくぶく・・・
史織「うごぼぁっ・・・!(しまった・・・!!い・・・、息が・・・!!!)」
サリアンさんが生み出した大きな水の塊の中に閉じ込められてしまった史織さん。マズいですね・・・、このままだと・・・。
サリアン「ふっ。どんなに強い力を持っていようと、所詮は人間。水の中で息ができないってだけで生きていくこともできない。」
史織「~~~~~!!!」
水の塊の中で必死にもがく史織さんですが・・・。
サリアン「・・・ふっふっふ。一撃で仕留めるってのもいいけど、こうやってじわじわ苦しむ様を見るってのもなかなか・・・。」
・・・すると。
彩羽「やめて・・・ください・・・!」
サリアン「・・・あぁ?」
彩羽「史織さんを・・・離してください!!」
史織「~~~!!(彩羽っ!!ダ、ダメッ・・・隠れててっ!!!)」
サリアン「・・・お前は後で潰そうと思っていたけど、邪魔するならお前から・・・っ!?」
すっ
彩羽さんとサリアンさんとの間合いは、既に一歩。
彩羽「やああぁぁぁぁ!!!」
ドゴッ!
サリアン「うぐっ・・・!こ、このぉぉ~!!」
ズバンッッ!!!!!
彩羽「きゃあぁぁぁ!!!」
ドザザァァァッ・・・
サリアンさんに一撃入れることに成功した彩羽さんでしたが、至近距離で強烈な反撃を受け、そのまま吹き飛ばされてしまいました。
彩羽「うぅぅっ・・・。」
ガクッ
彩羽さん、気を失ってしまいました・・・。
サリアン「全く・・・、そこでしばらく大人しくしてなさい。」
史織「~~~!!!(彩羽ぁぁっ!!!こ、こんのぉぉぉーー!!!!!)」
サリアン「っ!?」
ズバァァンッ!!!ぴしゃぴしゃぴしゃ・・・
サリアン「バ、バカなっ!?」
史織「うっ・・・ぐはぁぁ~・・・はぁぁ~・・・はぁぁ~・・・。」
史織さん、まさかの根性で自身を閉じ込めていた水の塊を振りほどきました。深呼吸をして体勢を立て直します。
サリアン「お、お前・・・!まだそれほどの力を・・・!!」
史織「はぁ・・・はぁ・・・。アンタ・・・、よくも彩羽を・・・!!!」
サリアン「・・・やはり、まずはお前から潰す必要がありそうね!」
〈雨乞いの呪石〉
サリアン発明の一品。効果を発動させると、一定範囲内に小粒の雨を断続的に降らせることができる。外であっても部屋の中であっても、一定の高さから雨を降らせる。また、雲は一切発生しない。一定時間、又は、発動者が任意で解除するまで雨は止まない。断続的に降り続くものの小粒なので、そのまま雨に打たれ続けても、ちょっと気持ちいいくらいな気分になれる程度の雨。
水魔は水中でも生きることができるし、むしろ水中の方が能力が向上する。というか、身体の表面に水分があれば、それだけで能力が向上する。サリアンは雨を降らせ身体を濡らすことによって能力強化を図った。
〇サリアンの技『ティーフィンメア』
水魔種族の技の一つ。水の塊を生み出し、相手を中に閉じ込める。生み出した水の大きさ・形から中の水圧・水流まで自在に変化させることができる。水中で生きることができない生物はもちろん水中で呼吸ができないので、放っておくだけで息の根を止められる。閉じ込められた中から脱出しようにも術者がそれを阻止するように水の状態を変化させるため、そう簡単には脱出できない。水中からでも水を蒸発させることができる技を持っていたり、内部から水を吹き飛ばす程の力なんかを出せる者は無理矢理脱出できるかもしれない。