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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
人騒がせな怪異たち
71/94

〈序々談〉物語の夜明け(日常編)

これまでの『第二章』と『第三章』のお話は、それはもうほぼ即興で創り上げてきたわけですが、今回からの『第四章』は若干の概略を先に創っておきました。こういうのは『第一章』以来ですが、まあいつも通りな感じで何とかやっていきますよ。少々投稿間隔が今までよりも空くようになっていくかもしれませんが・・・。

てなわけで、『第四章』開幕です。

 とある朝。若鄙に住む人間たちにとって少々暑く感じられる季節が近づいてきました。気温が二十度を超えると若鄙では「暑い」と言われます。そんなこの季節を、途轍もなく嫌う方がここに・・・。

史織「うぅぅ~~・・・。むぅぅ~~・・・。」

暑さのせいで少し寝苦しそうな様子の史織さん。掛け布団も蹴っ飛ばしちゃって・・・。

史織「う、う~~ん・・・。すかぁぁ・・・。」

でも、寝ちゃう(断言)。眠気>暑さだとこうなりますよね。

午前八時、今日も気持ちのいい天気です。


 午後一時頃。いつも通り(と言うのは悲しいですが)、史織さんはまだ眠っています。まあ、お昼過ぎまで眠っていられるほどゆったりな時間が流れている、とも言えますかね。

史織「・・・ん、んん~~・・・。ふわあぁぁぁ~~~・・・、はぅ。」

おや、お目覚めですか。

史織「・・・ん~、まだ(・・)一時くらいかぁ・・・。・・・暑い。お昼ごはんは何か冷たいものでも準備しよ~っと。」

暑い時に冷たいものを食べるのは気持ちがいいですからねぇ。

とりあえず、台所に来た史織さん。確か氷は台所の床下にしまってありましたかね。

ぱかっ

史織「えぇーっと、確かこの辺に・・・。あぁー・・・、氷がちょっと足りないなぁ。むぅー・・・、出かけるのは暑いけど仕方ないかなぁ。人里までちょっと買いに行こうかしら。」

ふむ、まあこればっかりは仕方ありませんよね。

人里には氷屋さんがあります。人里で暮らす人たちも氷が欲しい時はこの氷屋さんまで買いに出なければ、基本的に氷は手に入りません。

史織さんの場合、ある程度の食料は自警団員が定期的に古屋図書館まで運んできてくれます。でも、欲しいものがある時は史織さん自らが里まで買いに行く方が早いですから。

史織「ふう。着替えも済ませたし、早く買って帰って来て、さっさと涼しもーっと。」

久し振りの人里へのお出かけですね。


 史織「・・・。何だか妙に辺りが騒がしい感じがするわ・・・。人里までの道のりってこんな感じだったっけ・・・?」

古屋図書館から人里までの道中。史織さんは何か妙な雰囲気を感じ取っているようです。ふむ・・・、一体何なんでしょうね。

史織「まあ結局、外が騒がしいのってほとんど怪異が何かしでかしてるのが原因だし。人里の皆に害は及ばないはずだから、心配はないかな。それが若鄙(ここ)の決まりだもんね。」

逆に何か問題が起これば、それを解決するのが史織さんのお仕事ですもんね。

史織「・・・面倒事はごめんだからね?」


 門番「おや、史織さん。お久し振りです。お買い物ですか?」

史織「ええ。氷を切らしちゃってね。ちょっと多めに買っておこうと思って。」

門番「なるほど、暑い季節になってきましたからね。我々も、この季節の番はなかなか辛くて・・・。」

史織「暑い中、大変よねぇ・・・。柊にでも何か言っておいてあげようか?」

門番「い、いえいえ!史織さんや大佐に手間をかけさせるわけにはいきません。・・・さっきの言葉は一人の門番のちょっとした弱音、くらいに思っていただいて結構ですから。」

史織「ふふっ、そう?」

門番「はい。」

史織「じゃ、せめて労いの言葉だけでも。・・・いつもご苦労様。」

門番「その言葉だけで、我々はとても満足です。ありがとうございます。」

そんなやり取りを経て、史織さんは人里の氷屋さんへと向かいます。


 史織「よし。氷も買ったし、早く帰ってお昼ごはんを準備しなきゃ。」

午後二時半過ぎ。既にお昼ごはんの時間というのはとっくに過ぎていると思うんですが・・・、まあいいでしょう。

人里を後にしようと門へと向かっている最中。

柊「おーーい、史織ちゃーーん!!」

史織「ん、柊?」

あっちの方から柊さんが走って近づいて来ました。

柊「はぁ・・・はぁ・・・、史織ちゃん・・・、久し振り・・・ね・・・?」

史織「そんな息切らしてまで走って来る必要ないでしょうに。」

柊「だって・・・、もう史織ちゃん、帰っちゃいそうな雰囲気だったから・・・。」

史織「まあ、そうだけど。」

柊「でもよかった。丁度今から史織ちゃんのとこに行こうとしてたんだ。」

史織「あら、そうなの。一緒に行く?」

柊「いいえ。ちょっと史織ちゃんへのお願いを言いに行きたかっただけなの。」

史織「お願い?」

柊「そう。一応、自警団からの正式な要請依頼なんだけど・・・。」

史織「えぇー・・・(悲)。」

柊「もうー、そんな顔しないでよ~。今回は史織ちゃんにとって、そこまで大変な内容じゃないと思うから。」

史織「・・・で、内容は?」

柊「うん。そのことなんだけど、三日後に自警団本部に来てくれないかしら。詳しい内容はその時にってことで。」

史織「・・・ま、分かったわ。」

柊「ごめんね?面倒かけさせちゃって。」

史織「別にいいわよ。それが私の役目なんだから。その代わり!報酬にはこれからの暑い季節対策として、定期便に氷を増量してほしいものね。」

柊「うふふっ、それくらいならお安い御用よ。史織ちゃん、暑いの苦手だもんね。」

史織「・・・後、暑い時期に仕事の依頼は、できれば今後は無くす方向でお願いしたいわ・・・。」

柊「あー・・・。一応、上層部に進言しておくわね・・・。」

史織さんの我が儘にも困ったものです。


 図書館に帰って来た史織さん。早速準備に取り掛かります。お昼ごはんは何にするんですかね?

史織「お米を炊いてもいいんだけど、暑い季節にはやっぱり・・・。」

・・・・・・

つるつるっ

史織「んーーっ!やっぱりこの季節の冷やしうどんは最高よねー。」

ポリッポリッ

史織「付け合わせで作ったキュウリの塩漬けも、キンキンに冷えてて美味しいわー。」

午後四時前、縁側にてのびのびとお昼ごはん(・・・・・)を堪能する史織さん。

お昼ごはんの献立は冷やしうどんとキュウリの塩漬け。どちらも買ってきたばかりの氷でキンキンに冷やしてあるものです。

史織「んー・・・でも、ちょっと時間的に遅くなっちゃったし、晩ごはんは少なめでいいかしらねぇ~。」

つるつるっ

いつも通りゆったり呑気なことを考えながら、古屋図書館の一日は今日もゆったり過ぎていったのです・・・。


 そんな史織さんの日常とは裏腹に、怪異たちの間ではとんでもない事件が起きようとしていたのです。それはもう、多くの怪異たちが動揺を隠せないくらいには・・・。

〈若鄙の食事情〉

 人里の食事情は全体的に和食がほとんど。技術的に仕方がないところもあるが、基本的に質素な食事が多い。米、小麦、野菜、魚介類(万能の湖原産)等は基本的に揃っているが、肉類だけは少しばかり希少食。各家庭で火を起こして食べ物を焼いたり温めたりすることはできても、何かを冷やすためには氷がないとできない。その氷は氷屋で買ってこないと基本的に手に入れられない。まあ、大体の家庭は氷を保管庫で常時保管しており、必要な時にだけ取り出して無くなったらまた買いに出る。史織や小冬のように人里から離れた場所にいる者は氷の工面には少々手間がかかる。

 もっとも、人里外においてはそれぞれ怪異たちが独自の方法や手段で食料を調達している。氷などの工面も怪異それぞれ。人里の人間たちにはまだ普及していない技術を使ったり、逆に人間たちの技術を逆輸入して新たにそれを昇華させたりしている者もいたりする。どちらにしても、原料は人里で食べられている物とそう変わりはない。もちろん、それには種族差がある。

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