〈番外面・末〉二人の事情説明会
長かった今章の番外面ももうすぐ、といった感じに。今まで放置されていた謎がようやく徐々に明かされるようになっていきますが・・・、話の構成としては「これでよかったのかなー?」感が作者にはありますね・・・。う~ん・・・、ちょっと引っ張りすぎたかなぁー?
午後八時頃。騒がしかった澄水池での決闘も終わり、しっちゃかめっちゃかだった御魂邸もようやく落ち着きを取り戻したようで・・・。
史織「ううぅぅ~・・・。」
朝と同じ部屋で、同じ布団でお休み中の史織さん。
・・・身体中に手当てをした跡がありますね。
史織「うぅ~・・・。ん、ん~・・・、ふああぁぁ・・・。あ・・・、あれ・・・(寝惚け)?」
おや、お目覚めですか。
史織「・・・ここって、朝にいた部屋・・・よね。・・・はっ!!わ、私ってば、まさか・・・。・・・あっ。」
と、横を向きますと。
小冬「すぅぅぅ・・・。くぅぅぅ・・・。」
小冬さんが隣の布団でお休み中でした。
史織「・・・そっか。アイツらってば、気が利くじゃない。」
すぅっー
宮「あっ、史織さん。目が覚めましたか。」
史織「ええ、まあね。・・・アンタが手当てしてくれたんでしょ?ありがと。」
宮「いえいえ。あんな所に倒れたまま放っておけませんから。」
・・・何だかこんなやり取り、お昼前にも見たような気がしますね(笑)。
史織「後・・・、この子。」
宮「ああ、こちらの方ですか?皆の話を聞いた限りだと、さっき姫さまのお部屋の屋根を突き破って落ちたきたそうなんですよ。」
史織「ああぁ・・・、そう・・・なんだ。(小冬ってば、こっちにまで吹っ飛んできちゃってたんだ・・・。・・・ごめんね。)」
宮「私は、その時はまだ帰って来てなかったんですけど燈紅さまの話では、それはもう大変な大騒ぎだったみたいですよ。」
史織「あぁー、まあそうよね。急に屋根突き破って人が落ちてきたりしちゃ・・・。」
宮「あ、いえ・・・。それもそうだったんですけど・・・。」
史織「?」
宮「多分こちらの方の持ち物と思われる刀が姫さまの目の前に突き刺さっちゃってですね、それに驚いた姫さまが気を失ってしまわれて・・・。」
史織「あぁー・・・。(珠輝も災難ね・・・。)」
宮「近くで見ていた皆の気が動転してしまって・・・。燈紅さまが駆けつけて何とか皆を落ち着かせたそうなんですよ。」
史織「へ、へぇー・・・。」
宮「それはそうと、史織さん。この方は?燈紅さまが史織さんに聞けば分かるはず、って仰ってらしたんですけど。」
史織「ああ、この子は・・・。」
と、史織さんが言いかけた時。
小冬「ん、んん~・・・。あ、あら・・・?私ったら、一体・・・。」
史織「あ、小冬。気が付いたのね。」
小冬「あれ、史織・・・?ここは・・・。あいったたたた・・・。」
宮「あっ、まだ痛みますか?ちょっと待ってくださいね?今、ちゃんとした手当てを・・・。」
・・・・・・
宮「よし、これでさっきよりはマシになったと思いますよ。」
小冬「ありがとうございます。助かりましたわ。」
史織「ありがと、宮。小冬にもちゃんと手当てしてくれて。」
宮「いえいえ。怪我してる人を放っておくことなんて、私にはできませんから。当然のことですよ。」
小冬「ねぇ、史織。この方は?それに、ここは一体・・・。」
宮「あ、そうですよ。史織さん、ちゃんと説明してくださいよー?」
史織「ああー、もう。分かってるわよー。ちゃんと話すからー・・・。」
ということで、史織さんがお二人に色々と説明をするようです・・・。
・・・・・・
小冬「ふむ。つまり、史織が言っていたお仕事というのはこのお屋敷の守衛さんだったと。そして、私を追い返そうと必死だったのはこのお屋敷の秘密を守るためだったと。」
史織「そーゆーことよ。」
宮「えっと・・・。つまり、この小冬さんは史織さんのお友達で悪い方ではない。そして、小冬さんが姫さまのお部屋に落ちてきたのは史織さんが原因だと・・・。」
史織「そ、そーゆーこと・・・よ。で、でも!わざとやったわけじゃないわ!た、偶々・・・よっ・・・!」
宮「それはまあ、そうでしょうけど・・・。」
小冬「私のせいで何だか宮さんたちに迷惑をかけてしまったみたいで・・・、すみません。」
宮「い、いえいえ!そんなことは・・・。小冬さんのせいではありませんよ。史織さんの加減がちょっと悪かっただけで・・・。」
史織「わ、私のせいだって言うのー?私だって小冬を食い止めるのに必死だったんだからー・・・。」
小冬「え?」
史織「あっ、いや・・・、えっと・・・(焦り)。」
宮「・・・ん?どうかしたんですかー?」
小冬「・・・うふふっ。い~え、なぁ~んでもありませんわ。」
宮「?」
まあまあ~。宮さんが分からないのは仕方ありませんよね。
宮「・・・では、私は燈紅さまたちを呼んできますね。お二人はここでゆっくりしていてください。」
史織「え、ええ・・・。」
小冬「お気遣い感謝しますわ。」
すぅっー
して、部屋には史織さんと小冬さんの二人きりになりました。
史織「・・・(もじもじ)。」
小冬「ふふっ、し~おりっ。」
がばぁっ!
史織「な、何よ~・・・。」
小冬「い~え~。史織と初めて真剣勝負ができて嬉しかったんですの。史織ったら、本当に強かったですわ~。」
史織「・・・二回私をギリギリまで追い詰めておいて、よく言うわ。」
小冬「でも、決闘に勝ったのは史織ですわ。私の負けです。」
史織「(あんな様だったってのに、私が勝ったって言えるのかしら・・・。)」
小冬「でも!今度また手合わせする時は、今度こそ私が勝ってみせますわっ!!」
史織「今度の手合わせの時なんてありません!!」
小冬「ええぇぇ~?そんなこと言わないで~・・・。」
ふふっ。いつものお二人の感じに戻ったようで、よかったです。
史織「そういえばなんだけどさー。」
小冬「何です?」
史織「小冬が何をしにここまで来たのか、まだ聞いてなかったんだけど。」
小冬「あぁー、そう・・・でしたわね・・・。まあもうこの際、全部話してしまいましょう。」
ということで、小冬さんがこれまでの事情を話してくれるようです・・・。
昨日の晩に『集中強化修行』を終えて小屋に帰って来たばかりの小冬さん。
しかし、毎朝の修行はその日の翌朝も欠かさず行うようです。
今日の午前七時前。いつものように森の奥へ行って朝の修行に励んでいる小冬さん。
小冬「やはり毎朝の修行は欠かしてはいけませんものね。でもまあ・・・、今日の朝の修行はこれくらいにしておきましょうか。体を休めるのも必要なことですし。早く史織の所に行って色々話したいこともありますし。」
ということで、小冬さんの小屋へと戻るようです。
そしてその帰り道、森の中で普段は見かけない人影が・・・。
小冬「あら・・・?もしかして、リミューさん?」
リミュー「あ、小冬だー。おはようー!」
小冬「おはようございますわ。こんな朝早くからこんな場所にいるなんて・・・、一体何をしているんですの?」
リミュー「えっとね、わたしね、今いろんなお花を集めてるの!」
リミューさんの持つ籠にはいろんな種類の花が入っていますね。
小冬「どうしていろんな花を集めているんですの?」
リミュー「う~ん・・・。ほんとは探してるお花は一つだけなんだけど、どんな形のお花か分かんないからとりあえずたくさん集めてるの。」
小冬「・・・でしたら、史織の図書館に行けば探している花がどんな形の花か調べられますわよ?」
リミュー「そ、それはダメ!」
小冬「どうして?」
リミュー「ふふふ、だってそのお花は史織の贈り物にするんだもん!」
小冬「あら、うふふっ。でしたら、私も探すのお手伝いしますわ。」
リミュー「ほんと!?ありがとう!」
ふむ・・・。まあとりあえず、お二人は行動を共にすることに。
小冬「それで、どんな花を探していますの?」
リミュー「えっと、れーこんさんが好きなお花を探してるの。お花の名前はちょっと分かんないんだけど・・・。」
小冬「(れーこん?ひょっとして・・・霊魂のことかしら。)」
リミュー「れーこんさんってそのお花が好きで、咲いてる場所の近くに集まってくるんだって。だから、そのお花があれば史織もれーこんさんを集められるんじゃないかなあーって。」
小冬「うーん・・・、もしかしたら霊花か何かの類かしら・・・。」
リミュー「・・・れーか?」
小冬「座学堂に通っていた時に、何かそのようなことを習ったような気がしますわ。確か、自然に生まれた霊魂は自身の拠り所として霊花を探して方々を彷徨う、と。その存在が不安定な状態にある霊魂は自然に消滅してしまうそうですから、霊魂にとって霊花は存在を保つための生命線のような役割を持っている、と。でも、霊花に自然と引き寄せられるように霊魂は霊花を見つけ出せるとも聞きますし、そんな霊花を私たちが見つけ出すのは少し大変かもしれませんわね・・・。」
ここで小冬さんが言っている霊魂とは主に御魂邸内で活動している自我を持った霊魂さんたちのことではなく、自然に生まれたままの自我を持たない霊魂のことですね。見つけるのが難しいという点は両方に当てはまりますが。
リミュー「・・・こ、小冬ぅ~。わたし、難しいことよく分かんないの・・・。」
小冬「ああぁっ、ご、ごめんなさい。えっ・・・と、つまり・・・。」
あらあら。ちょっとリミューさんにはまだ難しい言葉が出てきちゃいましたかね。
小冬「と、とにかく、いろんな場所を探し回ってみましょう!」
リミュー「うん!」
そういうことで、お二人はちょっと広めの範囲を捜索してみることにしました。
・・・・・・
それからしばらく経って。
小冬「あれ?そういえばさっき、『史織が霊魂を集める』とか何とか言ってましたけど・・・、どういうことですの?」
リミュー「ん~?えっとね、昨日の夕方に史織がお館にやって来たらしいの。『れーこんがほしいー!』って言ってたんだって。わたしはその時、まだお外にいたから会えなかったんだけど・・・。」
小冬「(史織が霊魂を・・・?どうしてそんなものを・・・。)」
リミュー「伊戸に聞いたんだけど、おねえさまたちは『れーこんなんて知らないー。』って言って史織を帰しちゃったんだって。でもわたし、実はれーこんさんが好きなお花があるってこと、前から知ってるの!だから、そのお花を見つけて史織への贈り物にすれば史織がほしかったれーこんさんも一緒に手に入るかもしれないし、喜んでくれるんじゃないかなあー、って。」
小冬「・・・なるほど。そういうことでしたら、私も全力でリミューさんのお手伝いをさせていただきますわ。」
リミュー「うん!ありがとう!・・・あれ?あれ、何かしら。」
小冬「え?・・・、あれは・・・。」
森の奥、茂みの中に隠れて何か森には似つかわしくない物が落ちています・・・。
リミュー「ねえ小冬・・・、これ、ご本だよね?おっきいご本だね~。」
小冬「そ、そうですわね・・・。(どうしてこんな物が、こんな場所に・・・。)」
リミュー「何のご本かな?よいしょっと。」
その本のページを捲っていくリミューさん。
リミュー「うわあ~、いろんなお花や草の絵がいっぱい。」
小冬「ふむ、多分この本は草や花の図鑑みたいな感じのものですわね。・・・あ、そうですわ!」
リミュー「どうしたの?」
小冬「この図鑑を使えば、もしかしたら探している花のことがもっと分かるかもしれませんわ。」
リミュー「おおぉぉー!」
小冬「ここじゃなんですし、一度私の小屋に来ませんか?少し休憩も兼ねて、ゆっくりこの図鑑のことを見てみましょう。」
リミュー「いいのー!?ありがとー!」
というわけで、リミューさんを引き連れ小冬さんは小屋に帰って来ました。
小冬「さ、お茶をどうぞー。私が調べてる間、リミューさんはゆっくりしていてくださいね。」
リミュー「あ、ありがとー。」
小冬「(どうしてこんな貴重な書物があんな場所に放置されていたのかは疑問ですが、今はとりあえず霊花のことを調べてみましょうか・・・。)」
そして、調べることしばらく。
小冬「あ、あった。ありましたわ!リミューさん!」
と、小冬さんがリミューさんを呼びかけますが。
リミュー「すかぁぁ~・・・。すぉぉ~・・・。」
疲れちゃったのか、ちょっとお休み中のようです。
小冬「うふふ。しばらく寝かせておいてあげましょうか。んん~~~!ふああぁぁ~・・・、私も少し休みましょうか・・・。」
ということで、お二人とも少しの間、お休みなさい・・・。
・・・・・・
リミュー「・・・ふゆー。小冬ー。」
小冬「あ・・・あら、リミューさん。ふああぁぁ~・・・、もう起きてらしたんですのね。」
リミュー「あ、うん・・・。ごめんね、起こしちゃって・・・。」
小冬「いいえ、構いませんわ。・・・どうかしまして?」
リミュー「えっと、その、わたし、お腹空いちゃって・・・。」
ぐうぅぅ~
小冬「あらら。では、軽く何か食べましょう。お腹に少し入れてからお花探しの続きをしましょうか。」
リミュー「ううぅぅ~・・・(恥)。ありがとね~・・・。」
・・・・・・
午後三時頃。霊花を探したり、お休みしたり、食べたりしているうちに結構時間が経っちゃいましたね。
小冬「こほん。では、私がこの図鑑で調べたことについて話しますね。」
リミュー「はーい!」
小冬「まず、霊魂が好むとされる霊花なんですが、群生しているような場所がほとんどないらしいのです。」
リミュー「・・・?」
小冬「えっと・・・。つまり、基本的に霊花はいろんな他の植物の生えてる場所に混じって一輪だけひょっこり咲いている、という例が多いみたいなんですの。だから、探し出すのは非常に難しいと。」
リミュー「えぇ~・・・。」
小冬「ですがそんな中、群生している可能性が高い場所もあるそうです。それは静かな洞窟奥や湿った空気の静かな場所。具体的には、堅くな鉱山近くにある静かな洞窟や澄水池の奥地だと書いてあったんですけど・・・。」
リミュー「ほんと!?う~ん・・・。でも、鉱山にそんな静かな洞窟なんてあったかなあ~?」
小冬「澄水池の奥地っていうのも引っ掛かりますわね。確か澄水池の奥地には進めないという言い伝えがあったような気もしますし・・・。」
リミュー「・・・じゃあ、とりあえず二手に分かれて探してみよっか。わたしは鉱山の方を探してみるから、小冬は・・・。」
小冬「澄水池の方ですわね?引き受けましたわ。」
リミュー「わたしのわがまま、聞いてくれてありがとうね。」
小冬「いえいえ。私も史織の喜ぶ顔は見たいですもの。」
リミュー「うふふっ!そうよねー!」
小冬「でも史織ったら、どうして霊魂なんて欲しくなったのかしら・・・。それだけ謎のままなのが気になりますけど・・・。ま、史織のことですし、あまり気にしても仕方ないですわね。」
・・・・・・
史織「あぁー・・・、そう・・・なんだ。」
小冬「そういうことですわ。」
史織「つまり、小冬はその霊花ってヤツを探して池までやって来た、と。そして、その霊花は私のために・・・、その・・・。」
小冬「うふふっ、そういうことですの。」
史織「じゃあ・・・何であの時!池で会った時にそのことを話してくれなかったのよぉぉ!?話してくれていれば、わざわざ私たちが決闘する必要なんてなかっ・・・・・・、あ。」
小冬「ん~?(にこにこ)」
小冬さん、満面の笑みです(笑)。
史織「アンタまさか・・・、私と決闘したいがためにわざと黙ってたんじゃ・・・!!」
小冬「・・・あー、そんなことよりもー(棒)。」
史織「話を逸らすなぁぁ!!!」
まあまあ、いつもながら仲の良いことで~。
〈霊花〉
何かしらの霊的な性質を持った不思議な花の総称。見た目はよくある普通の花と同じような感じなので見ただけで霊花かどうか判断するのは難しい。霊魂はそもそも不安定な存在であるため、何かしらの拠り所としての「もの」がなくては自身の存在を保つのが困難。(保てなければ自然消滅する。)その霊魂が拠り所を選ぶ「もの」自体は別に何でも構わなくて、その霊魂が惹かれた「もの」なら何でも良い。ただ、霊魂たちが好む拠り所というのは統計的に見て霊花が多いというだけ。御魂邸で管理されていない自然の霊魂たちにとって、霊花の存在は文字通り生命線となっている。
御魂邸の敷地内に霊花はたくさん咲いている。自然の霊魂たちの多くは御魂邸に咲く霊花の力に引き寄せられる。若鄙中の霊魂たちの大半は最終的には御魂邸に自然と集結するようになる。