〈番外面・終〉譲れない二人の決戦(後編)
・・・ふぅ。まあ、何とかなりましたかね。
いや、〈続談〉の前編でここに書いた、今章の番外面で『一番やりたかった展開』というものを何とかやり切れたのではないかと・・・。この『お話』の創造初期の頃からずっとやりたいと思っていたことですから。少し感慨深い、そう思うところであります。
史織「・・・うぅっ、ぐふっ・・・。」
その場で仰向けになって倒れている史織さん。少し意識が薄れているようですね・・・。
ん?史織さんの傍に、何かいるような・・・。
史織「あ・・・、あれ・・・?何・・・かしら、これ・・・。冷たくて、気持ちいい・・・。」
ふわわぁ・・・!
しゅぅぅ~
・・・、今何か・・・。っと、もう一つ・・・。
ふにふにぃ~・・・、チクッ!
史織「いだっ!え、ちょ、何!?」
顔を横に向けると、そこには・・・。
史織「(ガ、ガメ吉!?な、何でここに・・・。)」
タガメのガメ吉さんが心配そうな様子で史織さんの頬を突っついていました。
史織「(えっ・・・?じゃあ、今の冷たいのって・・・。)」
そこに・・・、もう一人の姿はありません・・・。
ガメ吉さんは依然として不安気な様子ですが・・・。
史織「・・・そうよね。私、さっきあんだけアンタたちにカッコつけて啖呵切ったんだもんね・・・。こんなところで、やられてる場合じゃないわっ!」
小冬「ふうぅ・・・。」
チャキンッ
『逡兆気長・木の葉斬り』を放ち終わった直後、一度納刀をする小冬さん。史織さんが倒れ込んでいる場所からは少し距離がありますね・・・。
小冬「今のは・・・かなり手応えがありましたわね。私の『剣』が史織に届いているというこの感覚・・・。」
小冬さん、何だか嬉しそうですね。
小冬「ちちちっ、違いますっ(焦り)!こ、これは、その・・・、嬉しいっていうか、何て言いますか・・・(照れ)。」
はひっ!い、いえ・・・、何かすみません・・・。・・・あれ?
小冬「と、とにかく、今のでさすがの史織も・・・。」
そう言って、後ろを振り返ると・・・。
小冬「っ!?」
史織「ぐっ・・・、はぁ・・・はぁ・・・。な、なかなかやるじゃないの・・・、小冬・・・。」
かなりのダメージを負いながらも、根性でゆっくりと立ち上がる史織さんの姿が。
小冬「そ、そんなっ!?今の技を受けて、まだ立ち上がれるんですのっ!?」
史織「正直言うと、今のはかなり効いたわ・・・。いつもの私だったら、今ので負けてたでしょうね・・・。・・・でもね?」
小冬「・・・(ごくり)。」
史織「私が今こうして立ち上がれるのは、私だけの力じゃないってことは言っておくわ・・・。」
・・・史織さんの雰囲気が変わりましたね。
史織「さあ、続きを始めましょうか・・・!」
小冬「・・・い、いいですわ。私、もうしばらく史織とお手合わせしたいと思ってましたもの。史織がその気になってくれている以上、拒む理由なんてありませんわ?」
史織「ふふっ、私も。ちょっと小冬との手合わせが楽しくなってきちゃったかも。・・・あ、でもちょっと待ってて?」
小冬「・・・?」
すると、足下にいたガメ吉さんを手で拾い上げました。
史織「ガメ吉、さっきはありがと。心配かけて悪かったわね・・・。アンタは充分私を助けてくれたわ。さ、もう池の中へ逃げときなさい。・・・大丈夫。アイツの思いも、無駄にはしないから。」
そう言って、ガメ吉さんを池へと逃がしてやりました。ガメ吉さんは微笑んだような顔を向けた後、池の中へと潜っていきました。
小冬「・・・今のは?」
史織「ああ、そうね・・・。私の友達よ。」
小冬「・・・うふふっ、随分と小さなお友達ですのね。」
史織「決闘が終わったら、小冬にも紹介したげるわ。(それくらいは・・・いいわよね。)」
小冬「ふふっ、お願いしますね。じゃあ、いきますわよっ!!」
史織「・・・どっからでもかかってきなさいっ!!」
・・・・・・
その頃、宮さんと芙さん一行に動きが。
芙「・・・あったね。」
宮「は、はい・・・。確かにありましたけど・・・。でも、これ・・・。」
芙「うん・・・。そうだね・・・、じゃあ一応・・・。」
・・・・・・
またその頃、珠輝さんの様子はというと。
珠輝「~~~うふふっ、そうね~。・・・ん?どうしたの?」
ふわわ、ふわわわ~~・・・
珠輝「ええ・・・、そうね。でも、大丈夫よ。だって、あの子が自分で史織の力になることを選んだんだから。史織もきっと、そのことを分かってくれてると思うわ?」
ふわわぁ・・・
珠輝「んもう~、心配性ねぇ~。史織を信じましょう?」
ふわー?
珠輝「えっ?だって、史織と約束したもの!また後で遊んでくれるんだって!」
ふ、ふわー・・・(不安)
そして、もうしばらくが経った後・・・。
小冬「たあぁぁぁっ!!」
史織「甘いわっ!!」
べしっ
近接術式で小冬さんの攻撃を弾き返す史織さん。
小冬「っ!?」
史織「はぁっ!!」
シュパパパパッ!!
小冬「うぅぅっ・・・!」
史織「(い、今ならっ!)」
多量の小さな光弾を命中させ、小冬さんを後方へ怯ませることに成功した史織さん。
今こそあの技を使う時が・・・!
ぱぁんっっ!!
ぼわぁん・・・
小冬「こ、この陣は・・・!?」
史織「今度こそっ・・・!『平伏捕縛』っ!!!」
ズガァァン!!!
小冬「ぐふぅっ・・・!!!」
小冬さんの体が地面へと叩き付けられました。
史織「はぁ・・・はぁ・・・。き、効いたかしら・・・。」
小冬「ぐっ、がはっ・・・。はぁ・・・はぁ・・・、げっほげほ・・・。」
史織「し、しぶといわねぇ・・・(呆れ)。」
小冬「それは・・・お互い様・・・では?・・・それに、私は普段から・・・っげほっ、修行して鍛えてますから・・・。」
それを考慮しても、お二人は相当タフですけどね(笑)。
史織「それは・・・まあ、そうかしらね。」
小冬「でも私・・・、そろそろキツくなってきましたわ・・・。」
史織「それも、お互い様・・・でしょ?」
小冬「・・・ですわね。」
お二人の決闘は始まってから既に二時間を越えていますから・・・。対一人という決闘でここまで長い決闘は今までに例を見ない長さです。
史織「じゃあ・・・、もうそろそろ終わらせてあげるわっ!」
そう言うと、史織さんは超神速で小冬さんとの間合いを詰めます!
小冬「っ!?よ、肆の型・・・。」
史織「『刹那魂砕』!!!」
小冬「『封捲』!!!」
ガキィィィィィン・・・!!!
史織「っ・・・!?」
小冬さんが宙刀で『刹那魂砕』を受け止め・・・たと思ったんですが、あれ・・・?小冬さんの姿が・・・消えた?
ひゅぅぅぅぅぅ・・・
瞬間・・・、時がゆったりと流れて・・・。
史織「・・・っ!!」
小冬「てやぁぁっ!!!」
ズバアァァァッッ!!!!!
史織「うがぁぁっ・・・!!?」
姿が消えたと思った小冬さんが史織さんの頭上から強力な反撃技を繰り出してきました。
上からの攻撃を諸に受けてしまいましたが・・・。
史織「うぐぐぅぉぉぉ!!!ま、まだっ・・・もう一踏ん張りぃぃぃ!!!」
死ぬ気で根性を振り絞って・・・、そして・・・。
小冬「っ!!??」
史織「これで・・・トドメよっ!『悠楽寛燕』!!!」
小冬「そん・・・なっ!!??」
ピシュゥゥゥゥン!!!!!
ゴゴゴゴゴ・・・、ボボボォォォォォン・・・!!!!!
・・・・・・
小冬さんの至近距離で放たれた『悠楽寛燕』は小冬さんを、それはもうとても大きく吹き飛ばしました・・・。でも、飛ばされた軌道を見た限りだと・・・石の門の内側を通っていたような・・・。
史織「くぅっ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。あぁ・・・、もう・・・ダメ。」
ばたっ
あらら・・・、さすがにもうお疲れですかね。
そして、珠輝さんのお部屋にて・・・。
珠輝「か~ごめかごめ~、か~ごのな~かのと~り~・・・。」
???「~~~ゃぁぁぁぁぁ・・・!!!」
珠輝「・・・あら?今何か、誰かの声みたいなのが・・・。」
???「きゃああぁぁぁぁぁ!!!!!」
がらがらどっしゃあぁぁぁぁぁん・・・!!!!!
・・・・・・
珠輝「けほっけほっけほっ・・・。い、一体何が・・・。」
珠輝さんの部屋の屋根を突き破って何かが落ちてきたようですね・・・。
煙が晴れるとそこには・・・。
小冬「うぐぐぅぅぅ・・・、ぐふっ。」
ガクッ
珠輝「あらあら、まあ・・・。」
・・・ということでこの決闘、勝負あり・・・なんですかね(困惑)?
珠輝「びっくりした~。でも、どうして屋根から・・・。」
ふわわわっ!ふわわわわっ!
おや?霊魂たちが必死に何かを珠輝さんに訴えかけていますが・・・。
ひゅんひゅんひゅん・・・
珠輝「えっ?」
ジャキーーーーン!!!
珠輝「ひいぃっ・・・(驚)!!??あぁっ・・・。」
ふっ・・・、ばたっ
・・・えっと、吹き飛ばされて小冬さんの手から離れた宙刀が時間差で落ちてきました。その宙刀が、なんと珠輝さんのすぐ鼻先・眼前の場所に刺さってしまって・・・。珠輝さん、気を失ってしまいましたね・・・。
ふ・・・、ふわわわわぁぁぁぁ!!!
ふややや!ふや、ふややややぁぁ!!!
その様子を一部始終見ていた霊魂たちはそれはもう大慌てや大慌て。その取り乱し様といったら、この前珠輝さんが病気になった時と同じくらいの慌て様だったといいます・・・。
〈新風流剣術〉
・肆の型『封捲』
刀の切先を下に構え防御姿勢を取り、相手の物理攻撃を受け流す。その後、流れるような動きで時間を移動し、渾身の一撃を相手の頭上から叩き込む強烈な反撃術。受け流した技の威力が強ければ強いほど反撃威力は乗算されるが、受け流した技の威力が弱くても最低限の素の反撃威力は保障されている。こういう点では『返戻到来』よりも優れているが、受け流せるのは物理攻撃のみであり受け流すのにも相当な剣の腕前が必要となる。小冬も『刹那魂砕』をよく受け流せたものだが、史織も『刹那魂砕』の威力が乗った『封捲』を受けてもよく踏ん張れたものだ。