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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
秘境に起きた二度のご難
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〈番外面・終〉譲れない二人の決戦(前編)

 午後五時半頃。いつもなら深すぎる霧、静かすぎるが故に神秘的な場所となっている澄水池ですが、この小一時間に限っては、全くそんな雰囲気ではありません(笑)。

静かじゃないこと自体が今までなかったというのに、その原因なのが怪異ではなく二人の人間(・・・・・)だなんて・・・。全く、困った人間もいるもんです(呆れ)。

ズガガガンッ、ズガガガンッ!!

シュバババババッ!!

ドンッドンッドンッ!!!

激しい音が辺りに響き渡っていますが長時間にも渡ってこんな状態が続いています。

でも、そんな中。

ふわわぁぁ~・・・

伝令役の霊魂さんとガメ吉ことタガメさんがひっそりと隠れながら物陰から史織さんたちの様子を窺っています。

ふわわ、ふわわわわぁ?

・・・何か霊魂さんがタガメさんに話しかけていますが・・・、何を話しているのかはちょっと分かりませんねぇ・・・。お二方を見た感じだと、何か相談(?)しているんでしょうか・・・。

小冬「壱の型、『瞬閃』っ!!!」

史織「っ!?」

シュバァッッッ!!!

史織「ぅぉ危なぃっ!!??」

大きく体を仰け反らせた史織さん。鼻のすぐ上を小冬さんの宙刀が通過していきました。

間一髪、さすがの反応力です。

小冬「くっ・・・、ならっ!」

しかし、間髪入れず次の攻撃態勢に移る小冬さん。隙がありませんね。

小冬「参の型、『豪嵐(ごうらん)』!!!」

史織「(こ、今度は何っ?!)」

ズザッ・・・!!

史織「うぐっ・・・!」

ズザザザザザザザッッ!!!

目にも止まらぬ小冬さんの乱撃が史織さんを襲います。

ズザザザザッ・・・!

小冬「ふうぅぅ~・・・。」

小冬さんの『豪嵐』がようやく収まりました。

ガクッ

史織「ぐふっ・・・、はぁ・・・はぁ・・・。」

史織さん、片膝を付いてしまう程ダメージが蓄積されているんですね・・・。

しかし、小冬さんも同様にダメージを負っているのも事実です。

小冬「(はぁ・・・はぁ・・・。い、今ならっ!)」

確実にダメージを受けている史織さんの姿を見て、透かさず宙刀を構え直す小冬さん。

小冬「に、弐の型・・・、『先天(せんてん)』!!!」

一気に勝負をつけるべく、小冬さんが史織さんに向かって強烈な突進術を仕掛けます。

小冬「やあぁぁぁぁぁ!!!」

カキィィィィン・・・!

しかし、宙刀の切先は寸でのところで史織さんのシールド(・・・・)に阻まれました。

史織「そう・・・簡単に、やられるわけ・・・ないじゃない。」

小冬「っ!?」

史織「アンタの技、しっかり受け止めてやったわ・・・!」

小冬「あっ、マ、マズっ・・・!」

史織「だからアンタに、五割増しで返してやるわよっ!!『到来返戻』ぃぃっ!!!」

しゅいんっ、ボガァァァァァン!!!

小冬さんの至近距離で『到来返戻』が炸裂。これは効きますねぇ。

小冬「がっ・・・!がはっ・・・。」

小冬さんは大きく吹き飛ばされ、そのまま地面に打ち付けられてしまいました。

史織「くぅぅ・・・、はぁ・・・はぁ・・・。」

小冬「ぐふっ、げっほげほげほ・・・。」

お二人とも、かなりのダメージを負っていますね・・・。

小冬「(さ、さすが史織ですわね・・・。一筋縄ではいきませんわ・・・。)」

史織「(わ、割とキツいわね・・・。気を抜いたら、あっさりやられちゃいそうだわ・・・。)」

一時、お二人とも少し距離を取って態勢を整えています。

・・・すると。

ふ、ふわっ!ふわわっ!

史織「(あっ!ちょっ!な、何勝手に出てきてんのよー!小冬に見つかっちゃうでしょー!)」

すぅっ、と霊魂さんが史織さんに近づいて来たのです。小冬さんに聞こえないよう小声で話しかけていますが・・・。

史織「(アンタら霊魂がここにいることが小冬にバレないようにしないといけないんだから。・・・え、何?)」

ふわわ、ふわわ!

史織「(う~ん・・・、そう言われても分かんないことに変わりはないんだけどなぁ・・・。と、とにかく!今は下がって・・・。)」

小冬「はぁぁぁぁぁ!!」

史織「(ほ、ほら!来ちゃうから!小冬がこっちに来ちゃうから!)」

ふわあぁ・・・

と、気を落とした感じで霊魂さんは再び隠れに戻りました。う~ん・・・、一体何を伝えたかったんでしょうか。

小冬「てやぁ!!!」

史織「うわっ!」

カキィィン!

ギリギリ近接術式で小冬さんの攻撃を受け止めた史織さん。

小冬「今、誰と何を喋っていたんですの?」

史織「い、いやー、ただの独り言だってー・・・(焦り)。」

深い霧のせいで少し距離があると相手の姿ですら見え辛いですからね。小冬さんは霊魂さんの姿までは見えていなかったようです。

小冬「本当ですの~(疑)?雰囲気から察するに何か慌てていたようですけど。」

史織「うぐっ!」

小冬「・・・私も史織に隠し事はしていますけど、どうやら史織も私に隠し事があるようですわね?」

史織「うぐぐっ!」

・・・何だか今日の史織さんは小冬さんに心の中のことをバシバシと言い当てられすぎやしませんかね(笑)?

小冬「でも今は、この勝負をつけるほうが先決ですわっ!」

しゅっ

史織「ならこんな勝負、さっさと終わらせてあげるわよっ!」

しばらく鍔迫り合っていたお二人。一度小冬さんが史織さんとの距離を取るために後ろへ引きました。

その隙を逃すまいと史織さんが透かさず。

パンッッ!!

大きく手を叩き、構えの体勢を取ろうとする史織さん。これは・・・。

史織「一度頭を冷やしてもらうわ!喰らいなさいっ!!『平伏ほば・・・』っ!?」

そして、史織さんが気付いた時には既に・・・。

小冬「・・・言ったでしょう?私だって、強くなってますのよ。」

ほんの一瞬前までは史織さんの前方にいたはずの小冬さん。ですが今は、史織さんの後方に・・・。

小冬「『逡兆(しゅんじょう)気長(きじょう)・・・、木の葉斬り』!!!」

ザシュシュシュシュシュッッ!!!

史織「がはぁっ・・・!!!」

小冬さんの時間差連続斬りを浴び、大きく宙に吹き飛ばされた史織さん・・・。

その時、史織さんはちょっとの間、時間の流れがゆっくりに感じられたそうです。

史織「(い、今・・・、油断・・・したかなぁ・・・?うぅぅ・・・、い、意識が・・・。)」

どさっ・・・


 後編へ続く

◎追加版

(幼馴染)新風 小冬   種族・人間  能力・剣なら上手に扱える能力

 通称・修行専心剣士さん、戦風(そよかぜ)こと史織の幼馴染。毎日剣術の修行を欠かさないハイパー努力家で素質もあったせいか、今や並の怪異は相手にならない程強くなった正真正銘の人間さん。とにかく熱心で真面目で優しい性格なので、誰とでも仲良くなれる。もちろん怪異とも。っていうか、怪異の方から寄って来ることも(笑)。別に本人は嫌に思っていないし、むしろその状況を楽しもうと考えている。でもまだまだ強くなりたい、そんな精神の持ち主。

 史織のことはとても大切に思っている。史織のためを思って無茶な行動することも多い(史織視点で見れば)。でもまあ・・・、悪いことはしてないから大丈夫かな?史織と一緒にいることが何よりも楽しいので、そのために今後も邁進していくつもり。でも本人曰く、「本当は史織と一緒に修行もできれば、一番楽しいと思うんですのにね~。史織ってば修行嫌いだから・・・。史織が心変わりしてくれる日を、私はずっと待っていますわ。」とのこと。


〈新風流剣術〉※下記以外にも存在

 基本的に小冬が普段から使っている剣術は人里で新風家が古来より開いてきた新風流。

・壱の型『瞬閃(しゅんせん)

 一瞬で相手の間合いへ踏み込んで鋭い一撃を斬り込む抜刀術。間合いに入られてから避けるのは至難。避けることができる者は間合いに入られる前に攻撃に気付ける者か勘がよくて反応力がある者くらい。伊戸も史織も申し分ない力を持っているので、避けられたのは仕方ないか。


・弐の型『先天(せんてん)

 腰を低くし構え、力強く地面を蹴ることで加速しそのまま突きかかる、極限まで突き性能を高めた突進術。突きなので避けられても即座に横薙ぎに移行できるという点は普通の突きと同じだが、『先天』が突き性能を重視した技であるため、横薙ぎへの移行ケースをあまり想定していない。というか、そもそも避けられた試しがないのでどうにも分からないというのが事実。避けること自体が至難なので、相手からすれば正面から受け止めるか防ぐしかない。


・参の型『豪嵐(ごうらん)

 相手の間合いすぐ傍を超高速で移動・撹乱しながら、相手に悟られない斬撃を与え続ける乱撃術。要は滅多斬りだが、ただ適当に斬りまくるのではなく相手に次の攻撃先を読まれないで斬り込むため、相手にとっては防御が困難。一撃一撃にもそれなりの威力がある。


・伍の型『烈波(れっぱ)

 下段に刀を構え、下から斬り上げることで光の斬撃波を飛ばす。地面を抉ることくらいなら簡単にできる。ちょっと剣術の範疇を越えていると思われる斬撃術。今回は未使用。対伊戸戦にて使用済み。


〇小冬の奥義の一つ『逡兆(しゅんじょう)気長(きじょう)・木の葉斬り』

 瞬間的な超加速により相手が認識する前に斬り始め、斬り終わっている状況を作り出す。相手にとっては気付いた時にはもう全てが終わっており知らぬ間に斬られていて、気付いたらやられているという恐怖。最後の一太刀は斬り捨て御免とばかりに斬り込み、相手の後方へと回り込む。小冬が独自に編み出した乱撃術。史織もダメージを受ける前に既に斬られた後だと感じたようだったが・・・、さすがに為す術がなかった。

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