〈続談〉あの日の出来事(前編)
・・・少し時間がかかりましたねぇ。今章の番外面は第一章の番外面を越える長さになるやもしれません(笑)。・・・いえね?番外面にて『一番やりたい展開』というのは既に決まっているんですが、そこへ持っていくための展開をどうするかに現在大苦戦中です(苦笑い)。・・・まあ、やるだけやってやりますよぉ・・・。
午前六時頃。~~~くんくん、いい香りがしてきました。
すぅっー
宮「みなさーん、朝ごはんができ上がりましたよー。」
宮さんと給仕係の霊魂たちが食事を運んできてくれました。
史織「おっ、いい香りがするー。」
芙「ほんと。こりゃあ助かるねぇ。」
燈紅「宮、ありがとね。」
宮「いえいえ!ささっ、どうぞ。お召し上がりくださいな。」
史織「じゃあ、遠慮なく。いただきまーす。はぐはぐっ・・・。」
宮「ど、どうですか・・・?」
史織「うぐぅっ・・・!?こ、こんなことって・・・。」
宮「ひっ・・・。お、お口に合いませんでした・・・か?」
史織「・・・私の料理よりも美味しいじゃない。くっ・・・!」
なぁんだ、そんなことでしたか。
史織「そんなこと、って何よ!!」
ひぃっ!す、すみません・・・。
宮「はひっ!ご、ごめんなさいっ(条件反射)!!」
芙「え、ちょ、急にどしたの。」
燈紅「誰も何も言ってないわよ・・・全く。宮も釣られて謝らないの。」
宮「はっ・・・!そ、それもそうでしたね・・・。」
史織「あぁ・・・、そ、そう・・・よね。ごめんごめん。誰かに何か言われた気がしたから・・・。」
・・・(ごくリ)。
宮「ふう・・・。でも、よかった。美味しい、ってことですよね?それなら何よりです。」
史織「うん・・・まあね。・・・アンタ、料理上手なのね。」
宮「そ、それほどでもないですって~(照れ)。」
燈紅「今じゃあもう、私の腕よりも上でしょうね。」
芙「宮が最初に御魂邸に来た時はここまで上手じゃなかったのにねぇ。あれからちゃんと上達してるってことだね。」
宮「そ、そんな。燈紅さまと芙さんまで・・・(照れ)。」
史織「うぐぐ・・・。悔しいけど、私じゃ朝ごはんにここまで準備するなんてできないわね・・・。しかも、ちゃんと美味しいし。」
御魂邸の通常の朝ごはんの献立はご飯、味噌汁、野菜の惣菜、肉・魚系の物が二品という手の込んだ料理です。
しかも、今日は普段の宮さんと燈紅さんの分に加え、史織さんと芙さんのお二人分を増やして計四人分作ってくれています。いやぁ、大したものです。
芙「はぐはぐっ・・・。うん、美味しい。」
宮「今日は芙さんと史織さんもいましたし、しっかりと食べてもらって屋敷の修復作業を頑張ってもらわないといけないですから。腕によりをかけて作りました!」
史織「何言ってるの、私は手伝わないわよ。」
宮「えぇ~、手伝ってくれないんですかぁ~?」
燈紅「ま、そう言うと思ってたけどね。」
芙「たま姫の光線を食い止めてくれただけでも大助かりだよ。そこに免じて今回は、ね。」
宮「ぐうぅぅ~・・・。」
史織「そーゆーことよ。はぐはぐっ・・・。人手が欲しいなら、珠輝でも・・・って、あれ?そういえば、珠輝は?」
燈紅「姫はまだお休み中でしょ?」
宮「大層お疲れのようでしたし。」
芙「ゆっくり寝かせてあげないとね。」
史織「えっ・・・。じゃあ、アンタたちは朝ごはん食べておいて、珠輝は抜きってこと?」
宮「いえいえ。私たちは少し早めに食べているだけですよ。これとは別にちゃんと姫さまの分もありますから。」
史織「え・・・。私たちのと別の料理なの?」
燈紅「姫の召し上がる料理なのよ?私たちの食べる料理よりもより上質なものをお出ししているの。」
宮「姫さまは特に気にしておられないようなんですけどね。『たまには宮たちが食べてるのと同じのが食べたいわ。』、なぁんて仰る時もありますし。」
芙「たま姫はきっと、上質なものなんかよりもあんたたちとおんなじものを食べておんなじ気持ちを味わいたいんだろうさ。あれだ、共感ってやつかな。」
燈紅「まあ、そういう姫の気持ちも分かるわよ?でも、姫は霊魂たちの拠り所となるお方であり、姫もまた霊魂として存在している。日々の生活を営む上でも姫には上質な食事できちんと体調管理をしていただかないと。体調を崩すようなことになっては、姫も霊魂たちも私たちも皆が辛い思いをすることになってしまうでしょ?この前みたいなのはもう懲り懲りよ・・・。」
史織「・・・んっ?この前みたい、ってどういうこと?」
燈紅「ついこの前・・・、生まれて初めて姫が罹患されたのよ。」
史織「あら・・・。あの元気満々の珠輝が?」
芙「・・・そうなのよ。私がもうちょっとたま姫に注意を払ってやっていればあんなことにはならなかったさ・・・。私の責任だよ。」
宮「そそ、そんなことないですよ。それを言うなら、私がもっとちゃんとしていれば姫さまが病気にかかることなんてなかったんです。私の方が責任は重いですよ・・・。」
燈紅「二人とも。自分を責めるのはもうこれっきりにしようってこの前、言ったでしょ?私が姫を必要以上に束縛していたから姫はそれが不満で外へよく遊びに行くようになったのよ。大元の原因は私にあるわ・・・。」
史織「だぁーーー!もう!自分を責めるのは止めにするって言ったんでしょ?燈紅、アンタもよ!」
燈紅「あ、あぁ・・・。そうね、ごめんなさい。」
史織「もう、何だか気になっちゃったじゃない。その話、もうちょっと聞かせてくれない?」
燈紅「・・・いいわ。宮、貴方も一緒に話してあげて?」
宮「分かりました。むむむ・・・。ですが、私は一体どこから話したらいいものやら・・・。」
芙「あの日、二人が屋敷を抜け出した辺りから話せばいいんじゃない?」
燈紅「あら、いいじゃない。私も、いつも二人がどうやって屋敷を抜け出しているのか気になってたのよ。ふっふっふっふ・・・。」
宮「ひっ・・・!」
芙「ちょっとー、燈紅ー?」
燈紅「あら、冗談よ冗談。」
宮「も、もう~~!燈紅さまぁ~・・・。」
燈紅さんと宮さん、二人の回想話に入ります・・・。
あの日の午後二時過ぎ頃、御魂邸がいつも通りな時間を送っていた頃。燈紅さんは珠輝さんの部屋へと向かっていました。
珠輝さんに午後からのお役目を務めてもらうためです。
とんとんっ
燈紅「姫ー?そろそろ午後からの予定の時間なんですけど・・・。」
しーん・・・
燈紅「・・・姫ー?入りますよ?」
すぅっー
襖を開けると、そこには珠輝さんが・・・。
燈紅「っ・・・、いない。もう・・・、あの子たちったら・・・。」
珠輝さんの主要なお役目の一つは、霊魂たちとの『ふれ合い』。
御魂邸の全ての霊魂たちは燈紅さんによって厳格に管理されています。そんな霊魂たちは普段、姫である珠輝さんと一緒にいたり話をしたりすることは基本的に燈紅さんによって禁止されています。
でも、そんな彼らが唯一珠輝さんと正規にふれ合うことが許された場面というのが、この珠輝さんのお役目の任。
基本的に一定周期ごとに一回分だけ手にすることができる珠輝さんとのふれ合い権。それぞれ霊魂たちはこれの行使を事前に燈紅さんに申請することで、後日珠輝さんとのふれ合い日時が設定されるのです。
霊魂たちにとって珠輝さんとのふれ合いが至上の喜びであり生き甲斐。また、仕事での功績が燈紅さんに認められれば特別支給としてふれ合い権が一つ追加で貰えるらしいので、そのために日々霊魂たちはお仕事に専念しているのです。
燈紅「・・・ああ、そうか。今日はふれ合いの日じゃなかったわね。・・・逆にその日ばかり抜け出されるってのも、それはそれで困るんだけどねぇ・・・。」
あら。どうやら今日の珠輝さんのお役目は霊魂たちとの『ふれ合い』ではなかったようです。
・・・ということは今日のお役目の内容は、『お勉強』だったということですね。
燈紅さんが直々に教養・学問的なことを珠輝さんに教え込む、というものです。
珠輝さんがいつも屋敷を抜け出す時というのは決まって『お勉強』の時のようです。ふふっ、これは困ったものですねぇ。
燈紅「しょうがない。いつも通り追跡隊だけは出しておいて、後は宮と芙に任せましょうか・・・。」
そう、いつも通り。そのはずだったんです・・・。
その頃、御魂邸から向かう澄水池石の門近くにて。
珠輝「うふふっ。今日も大成功ねっ、宮ぅ!」
宮「そ、それはそうなんですけど~・・・。本当に大丈夫なんですか~?」
珠輝「だーいじょーぶ!今日は皆とお話する日じゃないもの。ちょっとくらい抜け出したって、へっちゃらよっ!」
宮「ぐ、ぐうぅぅ~・・・。燈紅さまぁぁ~・・・、ごめんなさいぃぃ~・・・。」
御魂邸を抜け出す時、珠輝さんはいつも宮さんと共にいます。どうやら珠輝さんは一人でも屋敷を抜け出せるようなのですが、外に遊びに行くのが目的ですので宮さんも一緒に連れていくのです。一人よりも二人の方が楽しいですから。
宮さんはというと、いつも半ば強引に珠輝さんに連れ回されているご様子。しかし、珠輝さんとの行動を存分に楽しみながら、それでも珠輝さんを安全に連れて帰るために全力で警護に当たっているのです。
ざばぁっ
芙「やあ、たま姫に宮。今日も抜け出してきたのかい?」
珠輝「ええ、そーよ。今日もお出かけするの!」
芙「ふふっ、相変わらず元気なこった。でも、くれぐれも人目に付くようなことはしないこと。分かってるよね?」
珠輝「むぅぅ・・・、分かってるよー・・・。」
芙「宮。たま姫のこと、頼んだよ。」
宮「は、はい。必ずや姫さまを最後までお守りしてみせますから!」
珠輝「ひゅー!宮ったら、かっこいいー!」
芙「はっはっは!やけに今日は一端なこと言うじゃないか。自信がついてきた証拠かな?」
宮「も、もう~~(照れ)!!茶化さないでくださいよ~~。今日は何だかいつもよりも力を入れないと、って思っただけですよ・・・。」
珠輝「うふふ。今日のお出かけはとっても頼もしい侍衛さんがいるから安心ね。私のこと、ちゃーんと守ってね?」
にこにこ笑顔の珠輝さん。
宮「も、もちろんですとも!!姫さま、どうかこの宮にお任せください!!」
芙「(この笑顔には、しっかり応えてあげないとねぇ。)」
普段はこんなに自信に満ち溢れた宮さんは見られないものです。宮さん自体は決闘に苦手意識がありますからね。
珠輝「さっ、宮!行きましょ?今日はあっちの方に行ってみたいわぁ~。」
びゅごぉぉぉ・・・!
宮「あっ、ひ、姫さま!お、お待ちくださいぃ~!!」
びゅごぉぉぉ・・・!
お二人とも、勢いよく飛び去っていきました。その先には一体、何が待っているんでしょうかね?
芙「全く、宮ったら。すぐいつもの宮に戻っちゃったよ(笑)。・・・まあ、大丈夫だよね?たま姫、宮。」
後編へ続く
◎追加版
(霊魂たちの憑拠先)水燐支 珠輝 能力・澄み清み透き通る能力
霊魂界最上位の地位に君臨しているだけあって実力は折り紙付き。でも、本人は何事も楽しんでやることを一番に考えているので、本気を垣間見れる機会は少ない。基本的に自身が楽しむことを通じて周囲の者にも楽しんでもらえるように心がけている。
勝負事には割と積極的に挑んでいく性格。正々堂々と挑んだ結果が勝っても負けても楽しめる性格。多分、彼女と勝負事をした相手は不快な気分で勝負を終えることはないだろう。相手がずるをしていても、しているのが分かっても、それが原因で勝負に負けても、指摘することはない。心の内ではそのずるまでもを利用して楽しもうと考えているのだから。
自他・物を問わず対象を純粋にすることができる。具体例は挙げにくいが作中では一度、史織との決闘の直前に史織の疲れや傷をある程度浄化している。また、実体を持つものを一定時間『透明状態』にすることもできるらしい。『透明状態』のものはギリギリ肉眼で見えるのだが、一切の接触判定がない。もちろん、自身を『透明状態』にすることもできる。正直この二つの力を使えば決闘で負けることなどないと思う。しかし、珠輝本人は「ずるはしたくない。」という理由で決闘中に自分に有利な力は使わないと決めている。本人曰く、「決闘中の自己回復はずる。」、「相手の攻撃は避けたり耐えたりするもの。」らしいのだが、「あっ。でも、奥義は別よ?あれは皆がそれぞれ自由に技を考えていいものだわ。」とも。