〈後談〉一先ず、安息と談笑の日
今回は少しばかりの説明シーンと超久し振りな日常パートの合わせ技。・・・いや、日常なのかと言われるとやや微妙な感じがしなくもないような・・・(笑)。『日常』、『ほのぼの』タグはどこへやら~~~な回ばっかですが、次章くらいからは日常話が増やせそうな気がしている作者です。
今回、後書きの設定はお休みです。
御魂邸での死闘からの翌朝。いつもと違うのはここが古屋図書館ではなく御魂邸であること。少し霧がかかった神秘的な雰囲気がとことん静かな朝を迎えてくれるのです。
史織「・・・んん~~~・・・。ふあぁぁぁ~~・・・。・・・あれ?」
あらら、史織さん。お目覚めですね。
実は午前五時過ぎ、今日も晴天。薄い朝日が御魂邸を照らします。
史織「・・・私、あの後どうなったんだっけ・・・?いったたたたた・・・。まだ体が痛むわね・・・。」
ほんの数時間前まではまだ戦っていましたからね。身体の方はまだ回復し切っていないようです。
史織「でも、ここって・・・御魂邸、よね・・・。布団・・・、敷いてくれたのかしら。」
とりあえず、布団から起き上がって、辺りを散策しに向かいます。
すぅっー
てくてくてく
史織「んっ、んんん~~~!!ふぅー・・・。あんまり寝てない気もするけど、何だか目が冴えちゃったわ~。日差し的にはまだ早朝かしらね・・・、あっ。」
ふわふわぁぁぁ~~~
ふやふわぁぁぁ~~~
回廊を霊魂たちがせわしく飛んでいます。何かのお仕事中でしょうかね。
史織「う~ん・・・。今、私ってどういう扱いなのかしら・・・。」
とりあえず、そのまま歩き回ってみることにしました。
・・・・・・
すぅっー
史織「あ。」
宮「あ。」
珠輝「すぅぅぅ・・・。すぅぅぅ・・・。」
史織さんはとある一室にやってきました。
宮「(ちょちょちょ!し、史織さんっ!!ど、どうしてここにっ!?)」
史織「(え、えぇっ?ど、どうしてって言われてもね・・・。何か人の気配がしたから・・・。)」
珠輝さんが今ぐっすりとお休み中のため、二人ともひそひそ声で話しています。
宮「(と、とりあえず、ここはマズいので、えっと・・・。こ、この子の案内する部屋で少し待っててください。)」
ふよよっ
史織「(あぁ、そう・・・。分かったわ。)」
そう言うと、案内役の霊魂についていきます。んん~・・・、今の部屋は何だったんでしょうかね。
・・・・・・
ふよよよぉぉ~~
史織「・・・ねぇ?」
ふよよ?
史織「えぇーっと・・・。さっきのは何してたの?」
ふよ、ふよよぉぉよよ、ふよよ~
史織「ふ、ふぅぅ~ん。そ、そうなんだ・・・。た、大変ね・・・?」
ふよっよっよぉぉぉ
少しばかり霊魂と会話を交わしながら案内されていきます。
霊魂たちは言葉は話せませんが御魂邸の皆さんは霊魂たちと意思疎通ができているみたいですからね。でも、史織さんもできるとは・・・さすがです。語りの者にはさっぱりですから・・・(笑)。
ふやよよ、ふよよっ?
史織「えぇっ?えぇっと・・・、ど、どうかなぁー・・・?」
ふよー
史織「(・・・。何言ってんのか、ぜんっっっぜん分かんないわ・・・。)」
案内された部屋はさっきまで史織さんが眠っていた部屋。結局逆戻りですね。
そこで待つことしばらく。
すぅっー
宮「お待たせしましたー。」
史織「あら、意外と早かったわね。・・・珠輝はどうしたの?」
宮「姫さまはまだお休み中です。大層お疲れだったようで、もうしばらくはお休みのままかと。」
史織「あれ?でも、さっきまで面倒見てたんでしょ?放ってきていいの?」
宮「眠りが深くなったのを確認してきましたので。心配いりませんよ。」
史織「・・・そう。」
宮「それで、何かご用だったんですか?」
史織「いや、ご用って言うか・・・。今、私がどういう状況なのかさっぱり分からなくて・・・。結局、私はあれからどうなったの?」
宮「ああ。あの後、燈紅さまが姫さまと史織さんをそれぞれ部屋まで連れてってくれたみたいで。とりあえず、応急処置だけしてそのまま休んでもらってたんですけど・・・。」
史織「へぇ・・・あ、今燈紅はどうしてるの?」
宮「燈紅さまですか?燈紅さまなら、裏で皆と屋敷の修繕作業をしていますよ。誰かさんのせいで大変なことになっちゃったんですから。」
史織「だから!私より珠輝の方がやってるんだって!!」
宮「じとーーー。」
史織「なっ、何よその目はーー!!!そんな目で見られたからって、私は譲ったりしないんだから!!!」
宮「・・・まあ、真実は直接姫さまからお聞きすることにしましょう。姫さまのご意見をお聞きしないことには、ね。」
史織「・・・私の信頼が無さすぎなだけなのか、それとも、珠輝の信頼が大きすぎなだけなのか・・・。私としては全く以って納得いかない・・・。」
ここでは珠輝さんの存在が絶対的なものだということの象徴かもしれませんね。
史織「それはそうと、アンタは屋敷を直すの手伝わなくてもいいの?」
宮「ああ。まあ私は・・・。」
と言いかけた時、部屋に霊魂たちがちらほらとやって来て。
ふよぉぉ・・・
ふわわぁ・・・
何だか少し元気がないような・・・。
宮「あら、皆。もしかして休憩?」
ふよよぉ
ふわっふわっ
宮「ふふっ、はいはい。」
そして、宮さんが手をかざすと。
しゅん
宮「ふう~、はい。じゃあ、また頑張ってきてね。」
ふよっふよっ!
ふわわわぁぁ!
すると、霊魂たちは元気を取り戻したのか、再びお仕事へと戻っていきました。
その光景を一部始終見ていた史織さんは。
史織「・・・アンタ。今、何したの?」
宮「えっ・・・?ああ、今のですか?あの子たちの疲れを私があの子たちに代わって引き受けただけですよ。」
史織「引き受けた?疲れを?」
宮「ええ。私は『何もかもを一身に引き受ける』ことができるんです。もちろん限界はありますが、皆の疲れや痛みを私が引き受けることで皆はすぐに持ち場へと戻ることができるんです。私の、ここでの重要なお役目なんです。」
史織「それ・・・つまり、アンタには疲れとか痛みがやってくるんでしょ?大丈夫なの?」
宮「確かに、人間である史織さんや姫さま、燈紅さまといった私と同じくらいの大きさの体を持った人から『何か』を引き受けた場合はそれなりの悪影響が出たりします。けど、霊魂たちのような体の小さな存在から『何か』を引き受けてもそれほど私に支障は出ませんから。それで私が姫さまたち皆のお役に立てるなら、どうってことないですよ。」
史織「へえ~・・・、立派な忠誠心だこと。」
宮「ま、まあ・・・。昨日みたいに少し暴走しちゃう時もありますけどね。あはは・・・。」
史織「・・・暴走?」
宮「昨日、史織さんの怒りを二回引き受けちゃって。最初に部屋で出会った時のは何とか耐えることができたんですけど、その後の裏庭の時のはついつい発散しちゃって・・・。」
史織「あぁ・・・、なるほど。だからあの時、アンタは怒ってたのね。言ってることも破綻してたし。」
宮「ぐうぅぅ~・・・。面目ないです・・・。」
何だかお二人、徐々に打ち解けてきました感じですかね。
うーん・・・。でも、何か忘れているような・・・。
宮「と、とにかく。私は屋敷を直接直すのではなく、直している皆の疲れを引き受けて作業効率を上げるのが今の私のお仕事なんです。」
史織「(・・・でも、宮も直すのを手伝いながら引き受けもやった方が効率はいいんじゃ・・・?)」
ま、まあ、そこには突っ込まないであげましょう・・・。
宮「あ、そうそう。燈紅さまと芙さんが気にしていましたよ?私も気になっていたんですけど・・・。」
史織「え、何を?」
宮「最後、姫さまは凄く強ーい光線を放ったはずなのにその光線の破壊跡がどこにもない、って。」
史織「あぁーー・・・。」
宮「屋敷の至る所で破壊跡があるのにどうして光線の跡だけが見当たらないんだ、って。だから、私はもしかしたら、史織さんが屋敷への被害を食い止めてくれたんじゃないか、って・・・。
史織「・・・まあ、そうなんだけど・・・。」
宮「あぁ、やっぱり!んー、でも一つ腑に落ちないことがあるんですよ。」
史織「・・・何?」
宮「姫さまのあの光線って辺り一帯を薙ぎ払うみたいに、こう、ぐいぃぃ~って扇状に放たれたと思うんですよ。」
扇形でいう弧の部分が着弾点になりますね。
宮「史織さん、もしかして、移動する光線に沿いながら守ってくれたんですか・・・?」
史織「・・・だって、あの瞬間に私がいた地点だけ守ってても意味ないじゃない。ぐいぃぃ~って光線が動いてくもんだから、私もぐいぃぃ~って動きながら・・・、ね。」
つまり、史織さんの後方(にあった御魂邸)は全て死守し切った、と・・・。な、なんという・・・。
史織「まあ?おかげでシールドは持ちこたえられなくなって破けちゃうし、その部分からの光線は私が受けちゃうし・・・。結果は散々ね。」
宮「ほわぁぁぁ~~・・・。」
史織「な、何よ。」
宮「い、いえ・・・。そこまでして屋敷を守ってくださって・・・、感謝します。」
史織「・・・ま、別にいいわよ。それよりも・・・。」
ぐうぅぅぅ~~~・・・
・・・あれ?今の音って・・・(笑)。
史織「あっ、いやっ、その・・・、い、今のは、ち、違くて・・・。」
宮「ふっふっふ~。お腹空きましたか?いいですよ、時間も時間ですし朝ごはんにしましょうか。」
史織「えっと、その・・・、じ、じゃあ、お願いしよう・・・かしら(照れ)。」
そういえば、史織さん。昨日の午後六時頃に図書館を出てから何も食べていませんものね。お腹が空いててもおかしくはないですかね。
宮「別に照れなくったっていいじゃないですかぁ~。お腹が空くってことはそれだけ健康的ってことですよ。」
史織「え、そうなの?」
宮「・・・さあ?でも、姫さまが私に仰ってくれたことですから!私はそう信じてます!」
史織「別に普段は私、そんなにお腹が空く方じゃないと思うんだけどなぁ・・・。」
宮「まあまあ。せっかくですし、一緒に食べましょう?私は燈紅さまたちにも伝えてきますね。朝ごはんの準備もありますからもう少し時間がかかりますけど、そのまま待っていてください。」
すぅっー
そう言うと、宮さんは準備をしに向かいました。
史織「・・・何だか一緒に朝ごはんを食べる流れになっちゃったけど・・・、ま、いいか。身体を回復させるのには食べるのが一番よね。」
しばらくすると。
すぅっー
燈紅「入るわよ。」
史織「・・・普通その台詞、襖を開ける前に言うもんじゃない?」
燈紅「別にいいでしょ?どうせ貴方しかいないんだから。」
史織「・・・何か癪に障る言い方ねぇ。」
燈紅「あら、気に障ったかしら?」
史織「むっ・・・。」
芙「ちょっとちょっと、二人とも~?私のいる前で喧嘩しないでおくれよ?」
燈紅「わ、私は別に・・・。」
史織「あら、芙も来てたんだ。」
芙「ふふっ。昨日、あんたたちが盛大に暴れ回ってくれたおかげでね。修理を手伝うよう、こちとら燈紅に駆り出されてるんだよ。」
燈紅さんと芙さんが史織さんと机を挟んで向かい側に座ります。
燈紅「少なくとも、敷地内への侵入を許したのは芙でしょ?」
芙「ちょっと、そりゃあないんじゃないの~?私は最も事態を穏便に済ませられるような判断に従っただけだよ。」
燈紅「せめて、先に私に知らせてほしかったものね。」
芙「史織にはあまり長居しないように言ったはずなんだけどなあ~。燈紅やたま姫に気付かれることなくちゃっちゃと宮への用事を済ませて帰って来てもらえば、大事にならずに済んだのに。」
史織「え、私のせいだっての~!?」
燈紅「実は私も、最初からそうなんじゃないかって思ってたわ(キリッ)。」
芙「うん、これで満場一致だね(笑)。」
史織「ちっがぁぁぁう!!!」
燈紅「ふふっ。まあ・・・それはそうと、貴方。もう身体の方は治ったのかしら?」
史織「えぇっ?んー・・・まあ、ある程度はね。アンタが手当てしてくれたんだって?・・・一応、お礼は言っておくわ(照れ)。」
芙「・・・えっ?燈紅、史織にも手当てしてあげたの?」
燈紅「・・・いいえ?私が手当てをしたのは姫だけよ。」
史織「えっ?」
芙「だよねぇ。史織の手当てをしたのはきっと宮だよ。」
燈紅「私はあくまで、貴方を部屋まで運ぶよう救護の子たちに指示をしただけよ。」
史織「あっ・・・あぅっ・・・(恥)!!」
芙「はっはっは!燈紅、見て見て。史織の顔、真っ赤だよ(笑)。」
燈紅「私としては、余計な感謝をされるのはあまり好きじゃないんだけどねー(煽り)。」
史織「ううう、うるさいわねっ!!なら私があげた感謝、今すぐ返しなさいよっ!!!」
燈紅「あ、一度受け取った贈り物は私、返さない主義だから。無理。」
史織「ムキーーーッ!!!」
芙「これはこれで、面白いものね(笑)。」
あまり噛み合っていないようにも見えるお三方の談笑ですが、何だかんだで上手くいってる(?)気がするのは語りの者だけでしょうかね(笑)。
そんな談笑は、もう少し続きそうです・・・(笑)。