〈最終面〉姫さまがご機嫌なら、それで(後編)
ん~、いや~、どうでしょう(笑)。今回にて本筋は一旦終了となりますが、前二章分と比べると本筋の話数は少なめ。でも、今回で本筋の内容の根幹部分が全然完結していないところを見ると、どうなのかというところ(笑)。今章は少し前半部分で謎な部分を多く出しすぎましたかね。勿体ぶって後へ後へと回したが故にこうなったのかと・・・。諸々の伏線やら何やらは全て〈番外面〉にて、ということでご容赦願います~(懇願)。
午前二時半前。草木も眠る丑三つ時、といった言葉もありますね。
ですが、こんな深い夜なのにこんな静かじゃない場所なんて・・・今はここくらいじゃないですかね(笑)。
ぼぉぉん・・・、バシュバシュバシュゥッ・・・!!
すいっすいっ
チュドドドォン・・・!!
ここまで静かじゃない御魂邸なんてのも、恐らく初めてのことでしょう。
今や御魂邸は慌ただしさ真っ盛りです。
史織「(っ・・・。)」
珠輝さんの激しい攻撃を上手く掻い潜り続けること、しばらく。
『幻影憑依』の制限時間がもうすぐやってきそうな雰囲気を感じ取っている史織さん。
史織「(後もうちょっとなはず・・・。そうすれば、こっちの・・・!)」
これだけの大技を珠輝さんは放ったんですからね。きっとその代償があるはずだと史織さんは考えているわけです。
しかしそうはいってもやはり、なかなか簡単に事を運ばせてくれないのが世の常。
ぶぉぉん・・・、ズババババッ・・・!!
史織「(んもーー・・・、長いわねぇ・・・!!)」
こういうことはもう忍耐勝負ですね。
宮「うっ、ううぅぅぅ・・・。はっ!こ、ここはっ・・・。」
おや、宮さんに意識が戻ったみたいです。
窮地を史織さんに助けられてその後、放ったらかしにされていましたが・・・。
宮「あ゛っ・・・。」
辺りを見回す宮さん。そして、・・・まあ、顔が真っ青に(笑)。
宮「あわわわわわ・・・!こ、これは非常にマズい予感が・・・。」
宮さんの目には庭はボロボロ、屋敷の屋根瓦は破損し剥がれ落ち、柱のいくつかが大きく損壊しており、その他端々が被害を受けている御魂邸の光景が・・・。
宮「し、史織さんっ!!これはさすがにあんまりでは・・・(涙)。」
史織「はっ!?ちょっ!全部が全部私がやったんじゃないって!!っていうか、どっちかって言うと私より珠輝の方がやってるって!!」
シュババババッ・・・!!
さっ、すいすいっ
さすが史織さん、宮さんと会話をしながらも珠輝さんの熾烈な攻撃を上手く回避していきます。
宮「えっ・・・?ひ、姫さまが・・・?」
ふとその方を宮さんが見ると。
宮「あぁ・・・、姫さま。これはこれは、大層史織さんとのお遊びがお気に召したようで・・・。何よりです。」
史織「ちょっ!!私との対応が違いすぎない!?」
宮さん、珠輝さんの様子を見て大層ご満悦なようで。
そして。
ぼぉん・・・。
史織「っ・・・!止ま・・・った?」
『幻影憑依』の終わりの時が・・・今。
宮「あっ。マズいっ。」
ささっ
しゅんしゅんしゅんっ・・・!!!
辺りを眩しい光が照らします!
史織「うっ・・・!?ま、前が・・・。」
ちゅいぃぃぃぃぃん・・・!!!
史織「っ!!??(ヤ、ヤバいっ!?)」
びぢゅぅぅぅぅぅん!!!!!
・・・・・・
芙「あ。今の音、ヤバいのだったんじゃない?」
燈紅「・・・そうね(落胆)。」
同時刻、澄水池の畔にて。
芙「あっははは。まあまあ、そう気を落とすなって。たま姫も悪気があってやってるわけじゃあないんだからさ。」
燈紅「そんなことは分かってるわよ・・・。はあ・・・。こうなった以上、貴方にも少しは手を貸してもらおうかしらね?」
芙「げえぇーー。・・・しょうがないなぁ。」
燈紅「ふふっ・・・。姫のためとなれば、貴方でさえも動いてくれるんだから。姫への思いがつくづくと感じられるわね。」
芙「ふんっ(照れ)。つべこべ言ってないで、早く様子を見てきておくれや。こちとら準備に時間がかかるんだからさ。」
燈紅「ふふっ、はいはい。」
そう言うと、燈紅さんは御魂邸へ向かって歩いていきました。
そして、史織さんたちの様子はというと・・・。
史織「ぐっ、はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
激しい閃光の直後、史織さんと御魂邸を薙ぎ払うように扇状に放たれた極太光線。
『幻影憑依』の性質上、攻撃の方向や向きは全て自動照準になるので御魂邸への被害は、はっきり言って避けられないものでした。もちろん、それは最後の極太光線も。あの極太光線が御魂邸を薙ぎ払った時の被害はかなり甚大なものになることでしょう。
しかし。
ひょいっ
宮「ふう~・・・。危なかったぁ~・・・。」
直前で避難していた宮さんがひょっこりと現れました。
宮「あ・・・あれっ?姫さまの光線が屋敷を壊した跡が・・・ない?というか・・・、さっきの光線は屋敷に被害を一切もたらしてない・・・?」
どういうことでしょうか・・・。あれ程の威力のある光線が御魂邸を全く傷つけていないというのは・・・。
宮「もしかして・・・、史織さんが・・・?」
・・・・・・
しゅぉぉぉぉぉっ、とっっぷぅん・・・
珠輝「うぅぅっ・・・。はぁ・・・はぁ・・・。」
珠輝さんが戻ってきました。随分と体力を消耗しているみたいですね。
珠輝「はっ・・・!し、史織はっ!?」
珠輝さんの眼前に満身創痍の史織さんが立ち尽くしています。(どちらも宙にいますけどね。)
・・・いえ。その手元には『返戻到来』用のシールドが・・・!!
史織「・・・ったく。珠輝ったら、私だけじゃなくって屋敷ごと私を薙ぎ払おうとするんだもん。大変だったわ・・・。」
珠輝「もしかして、史織。そのシールドで・・・!?」
史織「ええ、そう・・・。今から珠輝に『返戻到来』をお見舞いしてやろうって・・・。」
なるほど!史織さんはあの極太光線を『返戻到来』用のシールドで受け止めたということですねっ!
ということは、今手元にあるそのエネルギーを珠輝さんに返せば・・・!
・・・あれ?ですが、そのシールド。何だかぽっかりと穴が空いているように見えるんですが・・・。
史織「そう・・・思ってるん・・・だけどね・・・。」
珠輝「・・・?」
どうやら、史織さんの様子が・・・。
ひゅぅぅぅ~
すたっ
史織「ちょっと・・・できそうにないわね・・・。がはっ。」
史織さんが地上へとゆっくりと降りてきました。
そして。
しゅっ、ぱあぁぁぁぁぁん・・・!!!
手元でエネルギーが溜め込まれていた『返戻到来』がたった今、分散・解放されてしまいました。
史織「あぁ、ダメね・・・。今の私じゃ、もう・・・。」
ふっ・・・、どさっ
史織さんが、後ろへ大きく倒れ込んでしまいました。
・・・この決闘、勝負ありのようですね。
史織「はぁ・・・はぁ・・・。あぁーー、もう・・・。」
しゅぅぅ~
すたっ
珠輝さんが史織さんの下へと駆け寄ります。
珠輝「史織ぃ~、大丈夫?」
史織「げっほげほげほ・・・、ったく。アンタが私をこんな風にしたんでしょーが。」
珠輝「うぅ~・・・、だって~・・・。」
史織「・・・ふふっ。まあ、別に気にしなくてもいいわ。これが決闘なんだから。珠輝は私に勝った。その事実だけ受け止めとけばいーの。」
珠輝「史織・・・。」
史織「なっ、何よ・・・。」
珠輝「ふふっ!じゃあ、私との約束。忘れちゃやーよ?」
にこにこ笑顔の珠輝さん。その表情に、一片の曇りなしです。
史織「うぐっ・・・。はあ・・・、しょうがないわねぇ・・・。」
すると、宮さんが近づいてきました。
宮「ひ、姫さまぁ~!」
珠輝「あら、宮。どうしたの?」
宮「はぁ・・・はぁ・・・。ひ、姫さま!お、お怪我はございませんか?お体の具合は?後、後・・・、それから・・・。」
珠輝「ふふっ、大丈夫よ。ちょっと疲れちゃったけど、大したことじゃないわ。」
宮「そ、そうですか・・・。それは何よりです~。よかった~。」
史織「・・・ちょっと。」
宮「え?」
史織「どう見ても、私の方が重傷だと思うんだけど?」
宮「・・・あっ、そうですね。」
史織「・・・何だかさっきから私と珠輝との扱いの違いに、泣きたくなってきちゃったわ・・・。」
宮「それはまあ・・・すみません。私たちにとっては姫さまが全てにおいて一番の優先ですから。」
珠輝「宮。」
宮「は、はい!」
珠輝「いい?私のことを大事に思ってくれるのはすっごく嬉しいけど、史織のこともちゃんと考えてあげてね?」
宮「わ、分かりました!」
珠輝「・・・あ、そうだ!いい?宮。史織はたった今から私のとっても大事なお客さんよ。だから、史織に失礼のないようにしっかりとおもてなしするよう皆に伝えに行ってきてちょうだい?」
宮「は、はい!すぐにでも!」
だっ
大急ぎで宮さんは御魂邸の方へ戻っていきました。
史織「あら、いいの?私、珠輝のお客さんになっても?」
珠輝「ええ、もちろんよ。まだ史織はここでやることがあるんだし。その方がいいと思うわ。」
史織「まあ・・・、そうね。」
珠輝「うふふ。じゃあまずは傷だらけの史織を手当てしてあげないとね。部屋に戻りましょうか。」
史織「・・・私、動けないんだけど。」
珠輝「大丈夫よ。皆に運ぶの手伝ってもらうから。」
そう言って、霊魂たちを呼び出そうと珠輝さんが手を叩こうとしたその時。
珠輝「・・・ふわあぁぁぁ~~。う~~ん・・・、ほっとしたら何だか私、眠たくなってきちゃったぁぁ~~・・・。」
ふら~
珠輝「史織ぃぃ~~・・・。ごめんねぇぇ~~・・・。」
史織「え、ちょ、た、珠輝!?」
どさっ
史織「ぐえぇっ!!」
・・・ガクッ
珠輝「すぅぅぅ・・・。すぅぅぅ・・・。」
おやおや珠輝さん、疲れからか史織さんの上へ倒れ込んで、そのまま眠ってしまいました。
史織さんは史織さんで気を失ってしまいました・・・(笑)。
・・・まあお二人とも、体力の限界に近い決闘だったということですね。
むむむ・・・。しかし、さすがにこのままお二人を放置するのもマズい気がしますが・・・。
ざっざっざっ
おや、誰かが近づいてくる足音が・・・。
ざっ
燈紅「・・・。」
冷静な面持ちでお二人の傍までやってきたのは燈紅さんです。
燈紅「全く・・・。その場で眠っちゃうほど、お疲れになって。屋敷がこんなになってしまったというのに・・・。」
珠輝「くぅぅぅ・・・。すぅぅぅ・・・。」
燈紅「・・・もう。そんな幸せそうな寝顔をされちゃ、起こすに起こせないじゃない・・・。」
史織「うぐぅぅぅ・・・・・・。」
燈紅「はあ・・・、仕方ないわねぇ・・・。皆!」
パンパンッ!
ふわわぁぁ~
ふよよぉぉ~
霊魂たちが集まってきました。
燈紅「二人を部屋まで運んでちょうだい。起こさないようにね。」
ふわわっ
ふよよっ
せっせと霊魂たちがお二人を運んでいきます。
燈紅「さてと・・・。」
だっだっだっ
再び足音が。
宮「姫さまー!伝令役の子にちゃんと伝えてきましたよー・・・って、あれ?燈紅さま?」
燈紅「あら、宮。」
宮「えっと、姫さまは・・・?」
燈紅「皆に部屋まで運んでもらったわ。」
宮「そ、そうですか。で、では、私もそちらの方へ・・・。」
燈紅「宮。」
宮「は、はい!」
燈紅「今回のこれ、貴方が原因・・・なんですってね?」
宮「ギクゥゥッ!?」
燈紅「ふふっ・・・。まあ、いいわ。その話は後々ゆっくりと聞かせてもらうから(にっこり)。」
宮「は、はいぃぃぃ・・・。」
燈紅「とりあえず今は、事態の収拾に努めるわよ。ついてきなさい。」
宮「わ、分かりましたぁぁ・・・。しくしく。」
燈紅「うふふっ、大丈夫よ。心配しなくても貴方へのお仕置きは、姫とゆっくり相談して考えるから(笑)。」
宮「それ、全然大丈夫じゃないですってぇぇぇ~~~!!!」
現在、午前三時過ぎ。御魂邸の空には、美しい夜空が広がっています。
静寂を取り戻した御魂邸ですが、落ち着きを取り戻すのはまだまだ先のようですね・・・。何せ屋敷を修復しないといけませんから。
史織さんの侵入という異例によって巻き起こった今回の騒動は一先ず収束した・・・かに見えますが、まだ肝心なことが済んでいません。それを終えないことには、まだまだ収束したとは言えませんよね。
ですがまあ、史織さんも今はお休み中。史織さんから見ると御魂邸は敵地とも言えますが、どうやらもう敵対意識はないようなので今はここでゆっくりと休ませてもらいましょう。明日にでも、いつもの日常を取り戻せるように・・・。
(補足)
・芙は古くから澄水池の主をやっている。御魂邸が正式に霊魂の保護場所として確立する前からずっと。なので、御魂邸の関係者や霊魂たちとはかなり付き合いが長い。特に珠輝のことは「たま姫」と呼んでおり親しみも深く、天真爛漫な珠輝のことを凄く気にかけている。珠輝がこっそりと屋敷から抜け出して外へ遊びに出かけようとする時も直接、又は、陰ながらに珠輝を支援している。珠輝を連れ戻そうとする燈紅の追っ手程度、芙の力の前には無力なのだから。
・『幻影憑依』の最後の極太光線はどうやら史織が『返戻到来』するべくシールドで受け止めた模様。辺り一面を薙ぎ払うが如く扇状に放たれた光線だったが実際のところ、史織本人以外に被害はなかった。普通に回避できなくはなかった光線だったのだが、史織は受け止めることを選んだのだ。シールドに大穴が空いていたことを考えると、シールドが耐え切れずに破れ、その部分から光線を直接史織が受けたということだろう。その受けたダメージが勝敗を分ける決定的な一撃になったことは確かだが、どうして光線を受け止めることを史織が選んだのかはやや疑問。受け止められる自信があったのか、将又、回避が困難だと判断したからか、それとも・・・?




