表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
若鄙の有閑  作者: 土衣いと
秘境に起きた二度のご難
57/94

〈最終面〉姫さまがご機嫌なら、それで(前編)

 ズバババァァンッ・・・!

パシュパシュゥゥン・・・!

ドゥゥゥン・・・!

燈紅「・・・。できれば、程々にしておいてほしいところね・・・。」

御魂邸の敷地と澄水池を繋ぐ石の門の方へ向かって歩いていく燈紅さん。騒がしくなってきた御魂邸の方が少し気になっているようですけどね・・・(笑)。

午前一時半過ぎ。この辺りは霧が濃くて周囲の景色はあまりよく見えませんが、それでも薄っすらと月の光が辺りを照らしてくれています。

燈紅「私が屋敷を離れるのも久し振りかしらね・・・。」

・・・・・・

石の門を越え、澄水池の畔までやってきました。

パンパンッ

燈紅「芙ー?ちょっと、いいかしら?」

・・・ざぶぅ

芙「ふー。燈紅がここに来るなんて珍しいじゃないか。どしたの?」

燈紅「まあ・・・、ちょっと、ね・・・。」

燈紅さんと芙さんの会話が少し続きます・・・。


 一方、宮さんの様子はというと。

ばんっ

宮「み、皆ぁー!ど、どう!?見つかったぁー?!」

ふわぁ~・・・、ふるふるっ

ふよぉ~・・・、ふるふるっ

宮「ぐ、ぐうぅ~・・・。早く見つけて姫さまのところに戻りたいんだけど・・・。でも、こんなに探してるのにどうして見つからないんだろう・・・。皆も、ほんとにどこにしまったのか覚えてないの?」

ふるふるっ

ふるるっ

今、部屋で手分けして探している霊魂たちは掃除係たちですね。

今の宮さんの発言からすると、『百科全草』を片付けたのはどうやら掃除係の霊魂たちみたいのようですが・・・。

宮「もしかして、本をしまったのはあなたたち掃除係じゃないのかもしれないなぁ・・・。誰か別の子が勝手に持っていっちゃった、とか・・・?う~ん・・・。」

すると・・・、何やら霊魂たちの様子が・・・。

宮「・・・ん?み、皆、どうした・・・の?」

ふわわわぁ

ふよぉ~

ふゆゆやぁぁ~

ふやっやぁ!

宮「・・・え(驚愕)?そ、それがもし本当なら、私、史織さんに殺されちゃうんじゃ・・・(震え)?」

ふわっわぁ!

ふゆよぉっ!

宮「もうーーー!!笑い事じゃあないでしょーーー!!」

ちょっと宮さん、何やら悲劇な未来が見えたような感じですね(笑)。

そこへ、警備係の霊魂たちが駆け込んできました。

ふやややぁぁっ

宮「え、えぇっ?ど、どうしたのっ?」

ふよよぉぉっ

ふわやよわぁぁ?

宮「あ゛ぁっ!そ、それはかなりマズいかもっ・・・!!!と、とりあえず今の話(・・・)は後でもう一回確認するから、皆はもう少し探すのを続けてくれる?私は姫さまのところに行くから、お願いねっ!」

早々と宮さんは珠輝さんの所へと向かって行きます。


 そして・・・、史織さんと珠輝さんはというと・・・。

シュババババッ!!

すいっ

ボンボンボォォン!!

ぱんぱんぱんっ!!

さっ

ばこーん!ばこーん!ばこぉぉーーん!!

・・・それはまあ激しめの決闘が繰り広げられていました。

史織「はぁぁぁっ!!」

バチバチッ、ピシャァァァ!!

チュドドドドォォォン・・・!!

珠輝「あうぅっ・・・!」

史織「(はぁ・・・はぁ・・・。キ、キツくなってきたわ・・・。ていうか・・・、っ!?)」

珠輝「・・・たあぁぁぁっ!!」

シュボボボボボッ!!

ズガガガガンッ!!

史織「うぐぅっ・・・!!」

お互いに一歩も譲らない、攻撃を受け合いながらのなかなか派手な決闘です。

史織さんも鬱憤を晴らすが如く、盛大に暴れ回っているん・・・ですかね(笑)?

それにしても、珠輝さんですが・・・。

史織「(はぁ・・・はぁ・・・、ったく・・・。珠輝(コイツ)はホントに()なのか、疑っちゃうくらいには・・・。)」

・・・どうやら史織さんも感じているようですね。

珠輝「ふうぅぅ~・・・。史織ったらなかなか強いのねっ。史織との決闘、すっごく楽しいわっ!」

史織「・・・ア、アンタも大概だと思うけどね。」

珠輝「あら、史織に褒められちゃった。ふふっ。」

にこにこ笑顔、どこまでも楽しそうな珠輝さん。

史織「うっ・・・。」

その晴れやかな笑顔の前に史織さんは少し、屈してしまいそうな表情を・・・。

しかし!

史織「・・・いや。弱気になる必要なんてないわ、古屋史織っ!相手が誰であろうと、今私が為すべきことに変わりはないんだから!!!」

珠輝「ふふっ、いい表情よ?史織。あなたにはそっちの表情の方が似合っているわっ。」

史織「ふっ・・・。さあ、珠輝っ!アンタがぶっ倒れるまでとことん付き合ったげるから、遠慮なんかしないでかかってきなさいっ!!!」

史織さん、気合をがっちりと入れ直しました。

珠輝「うっふふふふふ・・・。じゃあ・・・、遠慮はしないわよっ?」

にこにこ笑顔の珠輝さん。

そして。

珠輝「『ラルネのお導き』!」

パンッパンッパンッパンッ、ピチュピチュピチュピチュゥゥン!!!

(おもむろ)に放たれた青い光弾、そこから無数の青白い細い光線が史織さんに襲い掛かります。

史織「ぐっ・・・。いいじゃない、気分も乗ってきたわ。たああぁぁぁっ!!!」

シュパパッシュパパッシュパパパパッ!!

史織さんも必死に応戦します。

チュボボボボンッ!!チュボボボボンッ!!

お二人の激しい決闘のせいで流れ弾はあちらこちらへと・・・。

・・・あ。もしかして、これ。お二人は気付いていないのでは・・・?

と、そうしている間に史織さんは珠輝さんとの距離を少し詰め。

キキィィィン!!!

珠輝「っ!?」

史織「一発喰らっときなさい!『到来返戻』よっ!!!」

パシュコォォォン!!!

珠輝「きゃあぁぁぁっ!!」

いくつか束になった光線を返す(・・)ことに成功した史織さん。これはなかなか大きい一撃が決まりました。

史織「よしっ!」

珠輝「くぅぅ~。ま、まだよっ!『知恵が秩序を生み出す時』!!」

ドゥゥゥゥゥン・・・!!

史織「っ!?な、何っ!?」

ごわぁぁぁん・・・、シュバババババババッ!!

実に統制された秩序立った光弾が展開されます。

史織「・・・こういう規則性のある攻撃の方が私は得意なのよ、ねっ!!」

パシィッ!!

ひゅんっ

珠輝「ひゃっ!」

狙い定めて光弾を珠輝さんに向けて弾き返しました!

珠輝「も、もう~!攻撃を弾き返すなんて、聞いてないわよ~!」

史織「ふふん!だって、言ってないもん(得意気)!」

そりゃ、そうですよね(笑)。普通はできるとも思いませんから。

珠輝「だったら・・・!」

ぎゅっ

史織「っ!?」

ババババババババッ!!

これでもかと言わんばかりに、一斉に光弾が襲い掛かってきました。

しかしそれで尚、秩序立った動きをしているのが何とも見事です。

史織「(うっ・・・!こ、これはさすがにマズいっ・・・!)」

チュドドドドドォォン・・・!!

総攻撃を受けた史織さんですが・・・。

史織「うぐっ・・・、はぁ・・・はぁ・・・。」

珠輝「・・・まあ。」

な、何とかシールドで守ることによりギリギリ直撃は免れたようですが、隠しきれない程にはダメージを負ってしまったみたいです・・・。

珠輝「・・・すごいのね、史織って。人間さんって、皆、史織みたいにすごい人ばかりなの?」

史織「・・・ぐふっ、げっほげっほげほ・・・。・・・いや、まあ皆が皆こうなのかと言われたら、そうじゃないと思うけど・・・。」

珠輝「じゃあ、いっぱいいるの?それとも、あんまりいない?」

史織「私と渡り合えるくらいの人間って言えば後、一人(・・)・・・。いや、二人(・・)くらいはいるかしらね。」

珠輝「・・・。御魂邸(ここ)の外に行けば、会えるの?」

史織「ええ・・・。まあ、あの二人なら喜んで珠輝の話し相手にも決闘相手にもなってくれると思うわよ。」

珠輝「・・・うふふっ。じゃあ、今度会いに行ってみようっと。」

史織「別にあの二人だけじゃなくてもいいじゃない。外には騒がしい連中なんて山ほどいるんだし、人間ばかりが暮らしてる里だってある。珠輝にとって外の環境は新鮮だと思うわよ。」

珠輝「史織・・・。」

史織「・・・ゴホンっ(照れ)。ま、まあ!何が言いたいかって言うと、外には珠輝の好きそうなことが他にもたくさんあるんだから、私との決闘はもうこれっきりってことよ!」

珠輝「あら。そんなことはないわ?史織にはこれからも私と一緒に遊んでもらうんだからっ!」

史織「・・・ったく。聞き分けのない子には一発キツいのをお見舞いしてやらないといけないってことかしらね!」

珠輝「ふふふっ。私も同じ気持ち~!」

にこにこ笑顔の珠輝さん。

そして・・・。

珠輝「・・・じゃあ史織?ちょっとの間、頑張っててね。」

史織「えっ・・・?」

珠輝「『幻影憑依』。」

ひゅぉぉぉぉっ、どっっぷぅん・・・

史織「っ!?しまった・・・。・・・マズいわね。」

珠輝さんの奥義が発動されました・・・!珠輝さんの本領発揮(・・・・)といったところです。

ぶぉぉぉぉぉん・・・、バシュシュシュシュ!!!

ぶうぉうぉうぉぉぉん・・・、シュババババババババッ!!!

史織「うおっっ!!??」

ぼんぼんぼんぼんっ・・・、パンパンパンパンッ!!!

果てしない攻撃が史織さんを襲います。

史織「くぅぅっ・・・。」

しかし、必死に避けようと史織さんも頑張って動き回ります。

ボカーン!バコーン!ドカーン!

・・・な、流れ弾が・・・。

あの時(・・・)、史織さんが燈紅さんの防壁術を解除してしまったばっかりに・・・。

何とかこの状況を止めてくれる人は・・・。

だっだっだっだっ

あっ、この足音は!

宮「ひ、姫さまぁぁっ!!」

宮さんが大慌てで近づいてきています!

宮「史織さんっ!!お二人とも、少し落ち着いて・・・。」

宮さんが二人の決闘現場までやって来ました。

そう・・・、やって来たんですけど・・・。

宮「一旦周りの様子を見てくだ・・・。」

史織「あっ、バカッ!そんなとこにいたら・・・!」

宮「えっ。」

ぼぉぉぉぉん・・・、シュバババババッ!!!

ズバババーーン!!!

宮「ひぎゃあぁっ・・・!」

くら~

『幻影憑依』の流れ弾ををまともに受けてしまった宮さん・・・。足下がふらついています。

あぁ・・・。せっかく二人の決闘の流れ弾によって御魂邸に広く(・・・・・・)被害が出ていること(・・・・・・・・・)を伝えに来てくれたというのに・・・。

ぶぉぉぉん・・・、シュバババババッ!!!

しかし、そんなことはお構いなしにと『幻影憑依』の流れ弾が更に宮さんへと襲い掛かります。

史織「あぁー・・・、もう!」

しゅばっ!

ひょいっ

ズバババーーン!!!

史織「ふう・・・。」

間一髪のところで史織さんが宮さんを抱きかかえて、宮さんを流れ弾から救いました。

宮「ぐうぅぅ~・・・。」

史織「・・・ったく、助けた借りは後で返してもらうからね。」

宮さんを抱えたまんまで『幻影憑依』を上手く避けながら大きく旋回していきます。

しかし。

シュバババババッ!!!

史織「ちょ、一人抱えて飛び続けるのは、さすがにしんどいって・・・。あそこなら・・・大丈夫よね。よっ。」

ぽいっ

どさっ

・・・えっと、宮さんを流れ弾の危険がなさそうな場所へと放り投げました。

ま、まあ、これは見逃してあげましょう・・・。

そして、遂に『幻影憑依』の制限時間が迫ってきて・・・。

ぶぉぉん・・・、バシュシュシュシュッ・・・!!!

史織「っ・・・!後、もうちょっとねっ!!」


 後編へ続く

〇珠輝の技『ラルネのお導き』

 青い光弾が扇状に放たれ、位置に着いた青い光弾から無数の青白い光線が発射される。この光線は速度も速く威力もあり軌道も予測し辛い。並の怪異の奥義級の技を軽くあしらえるくらいには強力。


〇珠輝の技『知恵が秩序を生み出す時』

 実に規則正しく秩序立った動きの光弾を無数に放つ。術者が任意で光弾の動きを自在に操ることもできる。そうすることで意図的に相手の周りを光弾で覆い尽くした挙句にそのまま全方位からの攻撃で全弾命中させることも可能。そうされてしまったらさすがの史織でもシールドで攻撃の一部を防ぐしかない。難度も高いがそれ以上に任意で動きを操られても尚完璧に統制された光弾の動きが見事。


〇珠輝の奥義の一つ『幻影憑依』

 一定時間、一体の親幻影と無数の子幻影を生み出し続ける。最初に術者は親幻影の中に身を(ひそ)める。その後親幻影は相手が近づいてきた時にだけ超猛烈な迎撃を行う。一方、子幻影はそれぞれ完全自動で相手に対して攻撃・迎撃を行う。全ての幻影は一切の攻撃を受け付けない。術者は幻影に憑依している間は意識がほぼない。また、その間徐々に体力を消耗していく。体力が少なくなってくると幻影たちの攻撃量が一時的に(・・・・)薄くなる。一定量体力を消耗し尽くすと『幻影憑依』の効果は終了する。だが、終了直前には・・・。

 つまり、相手は制限時間中ずっと幻影たちの攻撃を避け続けるしかない。幻影に攻撃が通らないため術者本人に攻撃を与えることができない。避け続ける他に手段はない。逃げ切りが相手にとっての勝利条件であるため非常に難度が高い。


(補足)

・燈紅の防壁術が現在解けているため御魂邸への被害が現在拡大中。史織と珠輝はそのことに気付いているのかいないのか分からないが、そんなことお構いなしで現在決闘に励んでいる(笑)。宮では二人の決闘による被害拡大を止めることはできなかった(笑)。誰か何とかしてほしいところ。


・珠輝は霊魂の姫である。宮よりも芙よりも燈紅よりも、年は若い。しかし、年だけで全てを判断できるほどこの世界は甘くない。そう・・・。珠輝がなぜ姫であるのか、なぜ霊魂たちや宮たち皆から愛され敬われているのか、その理由を忘れてはいけない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ