〈第五面〉霊魂たちの活用方法(前編)
今回は逆に短めの回です。
前回とは異なる今回の分かり辛い点は決闘描写が擬声語だらけなのではなく、会話シーンが擬声語だらけなことです。(何言ってんだ?)・・・ええ、何言ってるのか分からないとは思いますが、実際に読んでいただければすぐに分かるかと。(またかよ。)言葉が話せないキャラクターが何とか頑張って意思疎通を果たそうとしている様子、と思っていただくのが一番いいですかね。まあ、決して重苦しい展開ではないので、気楽な感じ、コミカル的な感じで読み進めると、分かりやすくなる・・・かも(?)しれません・・・。
???「私はここ御魂邸の管理者、督守燈紅。こんばんは、侵入者さん?」
史織「ぐっ・・・。こ、こんばんは・・・。」
裏庭の方へゆっくりと歩んでくる燈紅さん。
史織「・・・。アンタ・・・、まさか、人間・・・なの?」
燈紅「っ・・・。へぇ、鋭いわね。どうしてそう思ったのかしら?」
史織「・・・いや。ほんの少しだけど、人間の薫りがしたから・・・。でも、違うわね。アンタはもう・・・。」
燈紅「ええ・・・、そうよ。私は、もう人間に非ず。私は浄人。この霊魂たちの秘境を守り続けるために人間を止めた者。人間と同じ扱いはしないことね。」
冷静な面持ちを保っている燈紅さんですが、その裏には微かに怒りの感情を感じ取れます。
燈紅「それにしても、よくもまあ御魂邸でこんなにも暴れ回ってくれたものよね・・・。」
燈紅さんが宮さんの倒れている傍へと歩み寄ります。
宮「うっ、ううぅぅ・・・。ひ、燈紅さま・・・。私・・・。」
燈紅「喋らなくていいわ。今は休んでなさい。」
宮「は、はいぃぃ・・・。す、すみません・・・。」
燈紅「私や姫にその姿を見られたくなかったのね・・・。だから裏庭で・・・。全く・・・、貴方のこと、結構捜し回ったんだから。」
宮「ううぅぅ・・・。ご、ごめんなさいぃぃ・・・。」
燈紅「まあいいわ。その話はまた後でね。」
ぱちんっ
燈紅さんが指を鳴らすといくつかの霊魂がやって来て、倒れ込んだ状態の宮さんを御魂邸の中へと運んでいきました。
燈紅「さて・・・。」
史織「へぇ、案外優しいところもあるのね。」
燈紅「地面に倒れたままの負傷者を放っておくのは気が散るからよ。」
史織「ふぅん・・・。私相手にやるつもり?」
燈紅「ふん、手負いの人間如きに負けたりはしないわ。宮の攻撃が結構効いてるんでしょ?」
史織「うっ・・・。」
燈紅「どうして貴方が宮と戦うことになったのか、そもそもどうして芙が貴方を御魂邸へ通したのか、気になる点はいくつかあるけど・・・。ともかく今は目の前の侵入者にすぐさま俗世へご帰還願いましょうか!!!」
さあ、決闘の時間のようです。史織さんにとっては深手を負いながらの連戦となるわけですが頑張ってください。
史織「(ううっ・・・。手負いが見抜かれてるのは、あんまりよくないわね・・・。何とか切り抜けなくっちゃ・・・!)」
燈紅「さあ、非常事態通達発令よ。各員は集まって。力を合わせて目の前の障害を排除するわよ。」
ふわわわわあぁぁぁ~~~
ふよよよよおぉぉぉ~~~
ふゆるるるうぅぅぅ~~~
史織「(っ・・・!霊魂たちが・・・。)」
燈紅さんの掛け声によって邸内にいた多くの霊魂たちが燈紅さんの下へと集まってきました。
燈紅「よしよし、いい子たちね・・・。さあ、皆。普段暇してる分、今回は好きなだけ暴れてもいいわ。御魂邸への被害は私が全て防ぐから気にせずにやりなさい。」
ふーよよぉぉぉ~!
ふーややぁぁぁ~!
燈紅「ただし!」
ふよよっ!?
ふややっ!?
燈紅「くれぐれも、姫には悟られないようにしなさい。以上よ。」
・・・しゅっばぁぁぁん!!
霊魂たちが全ての通達を聞き終えると一斉に自由に動き回りだし、そして。
ぼんぼんぼんぼんっ!!
史織「くっ!」
シュババババッ!!
史織さんと霊魂たちの入り乱れ合戦が始まりました。
ひゅんひゅんひゅんひゅん!!
バババッバババッバババッ!!
ぽんぽんぽんぽん!!
バチバチッ、ザババババッ!!
お互いの攻撃が激しく宙を飛び交い、史織さんと霊魂たちの激闘が続きます。
・・・・・・
史織「そーれっ!」
シュババッ!
ふわわっ!?
ばこーん!!
史織「そこっ!」
ズババッ!
ふよよっ!?
ばこーん!!
少しずつ霊魂たちを撃破していく史織さん。
史織「はぁ・・・はぁ・・・。ある程度、霊魂は処理できたかしら・・・。でも、さすがに全部を相手にしてらんないわよね・・・。やっぱり燈紅をどうにかしないと・・・!」
確かに、霊魂たちの攻撃を止めるには操り主である燈紅さんを何とかするのが最適かもしれませんね。
ですが・・・。
史織「あっ・・・、あれっ?アイツ、どこ行った?」
・・・・・・
とことことこ
燈紅「ふぅむ・・・。」
ふよよ~~
一つの霊魂と一緒に屋敷内の回廊を歩いていく燈紅さん。
燈紅「よし、この辺も特に目立った傷は見当たらないわね。」
どうやら決闘による御魂邸への損害具合を見て回っているようですね。
燈紅「・・・そっちはどう?皆の様子は。」
ふるふる
燈紅「あら、そうなの。意外と骨のある侵入者ね。力を貸した方がいいかしら?」
ふよふよ
・・・。燈紅さん、どうやら霊魂さんと会話をしているようです。
まあ、霊魂さんの言葉は語りの者には分かりませんが、何となく雰囲気で内容を察することはできそうです。
燈紅「うん、素直でいい子ね。じゃあ・・・。」
きゅいぃぃぃぃん・・・!
その霊魂さんに燈紅さんが何やら力を分け与えています。
燈紅「ふう・・・。こんなもんでいいかしら?」
ふよふよ!
燈紅「ふふっ、これで皆も元気になったかしらね。どうする?貴方も皆のところに行きたい?行っても構わないわよ?」
ふるふる
燈紅「あらあら。じゃあ、もうちょっと私に付き合ってもらおうかしら。」
そう言って、再びどこかへ向かおうと後ろを向いたその瞬間!
ふよふ・・・、ふよよっ!!!
ばっ
燈紅「っ!?」
シュバッ!!
ばこーん!!
燈紅「・・・っ!!!」
史織「やっと見つけたわよ・・・!今、アンタの傍にいた霊魂に邪魔されて、奇襲は失敗しちゃったけど。」
そうです。史織さんの放った術式は燈紅さんに向けて放たれていたんですが、今さっきまで燈紅さんと会話をしていた霊魂さんが咄嗟に燈紅さんの身代わりとなって・・・。
史織「さあ、いい加減アンタにも観念してもらうわよ!」
燈紅「・・・よくも御魂邸のかわいい霊魂たちを・・・!」
史織「うっ・・・。で、でも、それはアンタが仕向けたことでしょー!?」
燈紅「問答無用よ。今からは私が直々に相手をしてあげる!!!」
史織「な、何かちょっと理不尽じゃなーい!?」
後編へ続く
(御魂邸の管理者)督守 燈紅 種族・浄人 年齢・(種族年齢)成熟 能力・〈未公開〉
御魂邸の敷地内全てに関することを管理している、御魂邸の形式上の頂点。霊魂を自在に使役し霊魂と意思疎通ができる。一見、冷静で少し周りに冷たいような性格に見えるが、それは本当に一見しかしていない証拠。話せば分かる、そんな感じ。普段は御魂邸の霊魂たちを守るべく、平穏な日々を保とうとしている。
種族は浄人。すなわち、元人間。大昔に彼女は霊魂を守るため、そして、霊魂と共にずっと生きていくために、とことん限りなく最大限にまで身も心も清め切った。その苦労のおかげで燈紅は望みを叶えることができている・・・。
霊魂たちの管理は燈紅が全て行っている。特に意思のある霊魂たちにはそれぞれに仕事を割り振っており、警備係、戦闘係、給仕係等他にも細かい割り振りが為されている。割り振りはその霊魂の希望通りになるので霊魂たちは不満なく仕事をやっているようだ。基本的に燈紅は全ての霊魂たちをかわいがっているので、史織にその多くを倒された怒りはなかなかのものだろう。