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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
秘境に起きた二度のご難
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〈第三面〉澄水池の秘密(後編)

〈第三面〉後編とはなっていますが、今回の後半部分はやや〈第四面〉的な部分に突入しちゃってます(笑)。最近何だか話を区切るタイミングが下手くそになっているというか、回を跨いで話を続けるのが下手くそになっているような気がする作者です・・・。まあ、元々その場その場の即興でほとんどは書いていますから、当然と言えば当然ですがね(笑)!

・・・はい。開き直ってすみませんです・・・。

 芙「いったたたたた・・・。いやぁ、参った参った。どうやらあんたはほんとに古屋の司書みたいらしいね・・・。」

史織「みたいじゃなくて、ホントにそうなの!」

戦闘不能になった芙さんを岸へ引き上げ、とりあえず事情を話すことにしました。

何せまだ芙さんの術が解けていませんからね。奥に進めないのです。

芙「もう、分かったって・・・。で、その古屋の司書が何でこの奥に行きたがってるのさ?」

史織「さっきも話したでしょ?この奥にいるヤツに借り逃げされた図書館(うち)の大事な書物を取り返しに来たの!」

芙「本を取り返しに?・・・何でその犯人がこの奥にいるって思うのよ?」

史織「借りてったヤツは私に『純正霊魂』を渡していったの。多分ソイツは霊魂が手軽に手に入る場所に住んでると思ったの。つまり、この奥!私の勘がそう告げているのよっ!!」

芙「・・・。」

ま、まあ、こればっかりは芙さんの反応にも頷けますね・・・。

芙「・・・つまり、霊魂自体を直接採りに来たのではないのね?」

史織「うっ・・・。ま、まあ、アイツへの制裁として本と一緒にいくつか貰っていくかもしれないけど・・・。」

芙「はあ・・・。でも、あんたは既にこの奥が霊魂を保護している場所だって知ってるのね・・・。なら、一切他言はしないということを条件として今回に限り、奥へ進めるようにしてあげよう。」

史織「ほっ・・・。助かるわ。」

芙「まあ、どうやら落ち度はこちら側(・・・・)にあるみたいだしね。その分の譲歩はしてあげるよ・・・。」

すっ

芙さんが手をかざすと。

芙「はい。これであんたにかかった術は解けたよ。」

史織「おっ、ありがと。じゃ、私は奥に行くから。」

芙「・・・一応、忠告しておこう。」

史織「えっ、何?」

芙「この奥地には霊魂たち全てを管理している者たちが住まう御魂邸(みたまてい)がある。石の門(そこ)から奥の土地は全て御魂邸の敷地内だ。至る所で霊魂を見かけることだろう。」

史織「・・・?」

芙「でも、霊魂には不用意に手を出さないこと。手を出すなら管理者に断ってからにしな。」

史織「えー・・・。」

芙「えー、じゃない!後、あんまり長居はしない方が身のためよ・・・。」

史織「えっ・・・?」

芙「じゃ、気ぃ付けてねぇー・・・。」

と言うと、芙さんは池の中へと姿を消していきました。

史織「長居はしない方がいい、ですって・・・?どういうことかしら・・・。ま、とりあえず、奥に進んでみましょうか。」

うーむ・・・。少し気にはなりますが、とりあえず置いておいて。

史織さんは澄水池の奥地へ進んでいきました。


 澄水池の奥地。澄水池の静かさを上回る程の静かさに満ちている場所。

ここには(かつ)て、人間や怪異の手から逃れるべく寄り集まった霊魂たちが静かに暮らしています。

史織「ほわああ~~~・・・。何とも静かな場所だこと。何だか別世界に来ちゃった感じ。」

ふわわぁぁ~

ふよよぉぉ~

史織「うわっ、野生の霊魂かしら。初めて見た~・・・。」

あちらこちらに霊魂が漂っています。他ではまず見られない光景ですね。

とりあえず、辺りを見渡しながら歩いていく史織さん。

史織「この辺もやっぱり霧が濃いのねぇ。もうちょっと晴れてほしいものだけど・・・。・・・んっ?」

しばらく歩いていくと、少しずつと霧が晴れてきました。

そして、建物が見えてきました・・・。

史織「あっ・・・。あれが御魂邸、かしら・・・?大きい屋敷ねぇ・・・。」

ふわわああ~~

ふよよおお~~

史織「わわっ、ちょっと・・・。」

おや、何やら二つの霊魂が史織さんにくっついてきました。

ん・・・?でもこれはどちらかと言うと、行く手を阻んでいる(・・・・・・・・・)ように見えますかね・・・?

史織「ちょ、離れなさいよー・・。もうー、何なのよー・・・。」

ぶんぶんっ

史織さんも振りほどこうとしますが、なかなか離れてくれません。

史織「・・・まあ、いいか。ちょっと鬱陶しいけど、そこまで邪魔じゃないし。このまま連れてこーっと。」

一先ず、そのまま二つの霊魂と一緒に御魂邸へと侵入していきます。


 史織「・・・本当に静かね。誰もいないみたいに。」

御魂邸内を進むこと、しばらく。誰とも出会うことなく奥の方までやって来た史織さんですが・・・。

史織「うむむ・・・。芙の話だと、ここには霊魂を管理しているヤツがいるって話だったんだけど・・・。まあ、誰にも会わずに事が運べるならそれに越したことはないけどねー。」

すぅっー

史織「ん?」

おや、近くで(ふすま)の開く音がしましたね。

???「ふふふ~ん、ふんふふの・・・あら?」

史織「あっ・・・。」

ばったり、出会っちゃいました。

???「あなた・・・、もしかして・・・。」

史織「え、いや、あの・・・、その・・・。」

こ、これは、マズい展開に・・・!

???「お客さんねっ!」

史織「えっ?・・・、あ、あぁー、そうそう。私は、お、お、お客さん・・・よ(焦り)?」

・・・なりませんでしたね(安堵)。

???「やっぱり!もう~、あの子(・・・)ったら。お客さんの案内もしないで、何やってるのかしら。後でお仕置きしてあげないとねっ(ノリノリ)!」

史織「え、えぇーっと・・・。」

???「あらあら、ごめんなさい。迷っちゃったのよね?いいわ、私が案内してあげる!」

史織「えっ・・・。あ、そ、そうね。宜しく頼むわ・・・。(う~ん・・・、大丈夫かしら・・・。)」

すると、今まで史織さんにくっついたままだった二つの霊魂がすぅーっ、と相手の方へとすり寄っていきました。

史織「あっ・・・。」

???「あらあら、うふふっ。よしよし・・・。」

と、とりあえず、相手の方の誤解に乗じたまま事が進んでいきます。

???「私、水燐支(すいりんし)珠輝(たまき)っていうの、よろしくね。あなたは?」

史織「わ、私は古屋史織。よ、宜しく・・・。」

珠輝「史織、っていうのね。・・・ねぇ史織。あなた、ひょっとして・・・人間さん?」

史織「えぇっ!?そ、そうだけど・・・。(バ、バレたかしら・・・?)」

珠輝「やっぱり!すご~い・・・。私、人間さんって初めて見たの。ふふっ、ちょっと感動しちゃった。」

史織「へ、へぇ・・・、そうなんだ(安堵)。私は逆にこんなに霊魂がいっぱいいる所なんて初めてよ。」

珠輝「ふふんっ、すごいでしょ~?みーんな、ここで管理してるのよ?」

史織「・・・その二つも?」

珠輝「ええ、そうよ。いい子たちでしょ?うふふっ。」

なでなで

そんな風な軽い会話を交わしながら、珠輝さんは史織さんを連れていきます。

珠輝「さあ、着いたわ。ここがお客さん部屋よ。ここに来たかったんでしょ?」

史織「えっ・・・?あっ、そうそう。ここに来たかったのよー(棒)。」

珠輝「じゃあ、中で待っててね。すぐにあの子(・・・)を呼んで来るから。うふふっ。史織とのお話、楽しかったわ。用事が終わったら、また私のところに来てちょうだい?今度はもっとゆっくりお話、しましょうね~。」

と言うと、珠輝さんは行ってしまいました。

史織「あっ、ちょっ・・・。あぁー、もうしょうがない。腹を括って(・・・・・)中で待ってましょうか・・・。」

あぁ・・・。腹を括って(・・・・・)、ですか・・・。

御魂邸に入ってからは荒事なしでここまでやって来れたんですが、もうそれもここまでのようですね・・・(諦め)。

(〈未公開〉)水燐支(すいりんし) 珠輝(たまき)   種族・〈未公開〉  年齢・盛り時  能力・〈未公開〉

 御魂邸で史織と最初に出会った人物。とても楽しそうに史織との会話を楽しんでいた。史織でさえ当初の目的を忘れてしまいそうになるくらい、彼女との会話に引き込まれていた。何だか史織のことを大層気に入った様子。あんなに史織の邪魔をしようとしていた(?)二つの霊魂をあっさりと引き寄せ、手懐けてしまった。彼女のその実力はまだ測り知れない。


御魂邸(みたまてい)

 垣出水芙が守る澄水池の奥にある古い石の門、それを(くぐ)った奥一帯が御魂邸の敷地である。実は、御魂邸の敷地内へ侵入するためには必ずこの石の門を潜らねばならない。芙はこの石の門へ侵入者を近づけさせないよう能力を使用している。敷地内は澄水池を凌駕する静けさ、それが霧と相まって神秘さを演出しており、初めて訪れる者はまるで別世界に来てしまったのかのような感覚に陥る。そこら中に霊魂たちが漂っていることも他では見られない光景。

 敷地の中央に御魂邸があり、敷地の中央に近づくほど霧が晴れる。ここには全ての霊魂を保護・管理する者が住まうとされる。広い屋敷で和風な造り。無駄に長い廊下が特徴。現段階では珠輝と本の借主がここで暮らしていると思われる。他にもいるかもしれないが。

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