〈第二面〉夜を好む者
久し振りにドイツ語発言があります。ご注意下され。前に登場したドイツ語は何となく文脈から分からなくもなかったかもしれませんが(?)、今回のは正確な意味を理解するのは恐らく不可能でしょう。作者でさえ時間が経てば忘れてしまっているかもしれません(笑)。何せ、表記は片仮名ですからね。検索のしようがありませんもん(諦め)。今回のドイツ語の意味は、何となく雰囲気で感じてみて下さい(笑)。
午後八時過ぎ。日はもう落ち、すっかり夜になってしまいました。
しかし、午後四時に起床した史織さんに死角はありません。(さっき起きたばっかりですからね。)
とりあえず、名草神殿を出てからあちこち飛び回ってみましたが、特に手掛かりは得られず。
現在、静かな夜空をゆったりと遊覧飛行中です。
史織「借主の住処自体が分かったのはよかったんだけど、肝心の場所がさっぱり分かんないからなぁ・・・。どうしたらいいもんかしらねぇ~・・・。」
・・・なかなか苦戦しているみたいですね。
史織「でも・・・、こういう夜の飛行はエスティーティシュね。いい気持ち。」
???「あっ、分かります?夜、いいですよねぇ。」
おや、どこからか声が聞こえてきました。
史織「えっ、誰?」
???「うふふっ。こんな夜の時間に人間が里の外を飛んでいるなんて命知らずもいいとこだと思ったんですが・・・、夜が好きな方に悪い人はいませんからね。」
史織「どこにいるのっ!?姿を見せなさいっ!」
ぼわわわぁぁぁん・・・
???「まあまあ、そう怒らないで。せっかくの夜なんですから。」
史織「(コイツ・・・、全く気配が掴めなかったわ・・・。)」
闇夜からすっ、と現れました声の主。
史織「・・・アンタは誰?」
???「私は半部月夜。夜に生き、夜を愛する者ですよ。」
史織「へぇ・・・。で、私に何か用なわけ?」
月夜「いえいえ。人間であろうとも、夜を好む者に危害を加えるつもりはありませんよ。」
史織「あら。話が分かるじゃない。(ここは・・・、コイツに合わせときましょう。)」
月夜「それはそうと、あなたは何をしていたんですか?出会ったのが私だったからいいようなものの、他の怪異だったら危ないところですよ?」
史織「まあ、ちょっとね。・・・そうだ。アンタ、霊魂が集まってる場所ってどこにあるか知らない?」
月夜「はあ・・・、霊魂を探してるんですか。う~ん、困りましたねぇ。夜を好む者にはなるべく親切にしてあげたいんですが、あれのことは他言しないというのが暗黙の了解ですからねぇ・・・。」
史織「えっ、場所を知ってるの!?」
月夜「え・・・?ええ。まあ・・・。」
史織「ぜひ、教えてちょうだい!」
月夜「うむむ・・・、分かりました。あなたが悪い人でないということは夜好きだということから分かります。悪いことをするんではないんでしょう?」
史織「えっ・・・?も、もちろんよ(焦り)!じゃあ、早速・・・。」
月夜「ただしその前に・・・。そのままあの場所に向かったところで、あの者を何とかする力がなければ、撃退されるのがオチ・・・。ですからあなたの力、試させてもらいますよっ!!」
史織「えぇー・・・。やっぱりこうなるのー・・・?」
というわけで、決闘のお時間です。暗い夜での空中戦ですが、頑張ってください。
月夜「うっふふふふ。私にあなたの実力を認めさせてくれれば、教えてあげますよ?」
史織「結局、怪異ってヤツはどいつもこいつも変わんないってことよねっ!」
いつも通り、史織さんは術式で応戦します。
しかし。
月夜「ふふん。」
ぼわわわぁぁぁん・・・
史織「っ!?(消えたっ!?)」
月夜さんは闇夜に紛れるように姿を消してしまいました。
月夜「私は夜の覇者・・・。夜である限り、私の力は増すばかり・・・。ふっふふふふふ・・・。人間のあなたは、一体どこまで私に抗えますかね・・・?」
史織「(マズいわね・・・。全く気配が掴めない・・・。さっきの感じと同じ・・・。)」
月夜「夜のことを馬鹿にしてきた奴らは皆、この技で沈めてきたんです。あなたは夜を好いてくれていますけど、あなたにもこの技を体感してもらいましょうか・・・。そして、もっと夜の素晴らしさを・・・。」
史織「(・・・っ!!)」
月夜「『静かな夜の栄え』!!」
ふおぉぉぉぉ・・・!!
史織「後ろねっ!!」
バギギィィィン!!!
月夜「えっ、嘘っ!!??」
史織「そぉらっ、『返戻到来』!!!」
ぶおおぉぉぉぉ!!!
月夜「うわわっ、ちょっ、あぶなっ・・・!!」
ズボォォォォン!!!
月夜「ぐわぁぁっ!!」
間一髪、月夜さんからの攻撃を見切った史織さんがシールドで受け止め、そのままお返しを決めました。
史織「ふわー、危なかったぁ。」
月夜「うぐぅ・・・。な、何で・・・。何で私の位置が・・・。気配や前挙動は全くなかったはず・・・!」
史織「んー・・・。まあ、私相手に勘を使わせるようなことをしたのが運の尽きだったってことね。」
勘と反応力には自信のある史織さんです。
史織「で、どうする?今のが結構効いてるみたいだけど、まだ続ける?」
月夜「うぐぐっ・・・!この夜の下で、怪異相手ならまだしも人間相手に私が後れを取るなんて・・・、認めたくはない、認めたくはないけどぉぉ!!仕方がない・・・。これ以上戦い続けるのは無理ですぅ・・・。」
おっと。どうやらこの決闘、勝負ありのようですね。
史織「ふう。私もあんまり力は使いたくはなかったし、よかったわ。じゃあさっきの話、教えてもらおうかしら?」
月夜「うぅぅー・・・。えぇーっと、霊魂のいる場所ですよね・・・?それなら、澄水池の奥地に、その場所はありますよ。」
史織「澄水池?へえー、なぁんだ。案外近くにあったんだ。・・・でも、澄水池の奥地だって?澄水池っていえば、確か池の奥地には進めないっていう話が有名だけど・・・。あっ。」
月夜「・・・そういうことです。私から情報を聞いたってことは、内緒でお願いしますね?」
澄水池。そこは霧が深く立ち込める非常に静かな池です。
史織「これは、一気に近づいた気がするわね。」
午後八時半前。少し雲が月にかかるくらいのきれいな夜空の中、史織さんは澄水池の方へと向かっていきます。
(超越的な夜)半部 月夜 種族・夜 年齢・一般 能力・夜をこよなく愛する能力
通称・夜の覇者こと、夜の怪異。種族上夜以外の時間はほぼ寝ている。夜にのみ活動しその日の夜を思う存分に体感する。頭の中の大半が夜のことで埋まっている。基本的に丁寧な性格であり夜好きの相手には少々人懐っこい。落ち着きはあるのだが、夜を馬鹿にする者を相手にした時は豹変する。とにかく夜が好き。見た目からはそんな雰囲気は感じられないのだが、若鄙屈指の実力者(ただし、夜に限る)。並の怪異は全く相手にならない(ただし、夜に限る)。まあ、本人はそんなに決闘好きという程ではないのだが。闇夜の中に姿を眩ますことができ、その間は一切気配を感じることができない。声だけは聞こえるのだが、その聞こえた方向などは分からない(テレパシーみたいな感じ)。気配を消したまま不意に強力な攻撃を相手に放つことができるため、夜の決闘において彼女に敵う者はそういない。
人間が相手ということで油断したのか、史織からキツい一撃を喰らい、降参した。まあ、基本的に怪異は人間の実力を下に見ているため、油断があるのはある意味当然かもしれないが。目の前にいる人間が『古屋の司書』だということに前もって気付いていれば、もしかしたら結果は変わっていたのかもしれない・・・。
妹がいるらしい。妹のことは大事に思っているのだがその種族上、会うことはほとんどない。
〇月夜の技『静かな夜の栄え』
闇夜に紛れたままの状態で強力な攻撃を放つ。この攻撃は夜の闇に紛れ非常に見えにくい暗い光弾となっているため、回避も防御も困難を極める。史織は勘だけによってその位置と攻撃タイミングを見切った。・・・。勘って凄いね(棒)。
〈澄水池〉
人里のやや南東、生命の森のやや南西に位置する大きめの池。深い霧が常に立ち込めている非常に静かな場所。比較的小さめの動物や虫、水草が多く生息している。逆に、怪異はあまり見受けられない。池の奥地には進めない、という話が広く浸透している。