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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
秘境に起きた二度のご難
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〈序々談〉物語の夜明け(予兆編)

遂に『第三章』開幕です。何となく『三部作』っていう響きが好きな作者でありますが、今章で終わらせるのかどうかは未定です。お話自体はまだまだ続けていくつもりです。ただ、文字媒体(・・・・)だけで続けていこうとは思っていないだけです。現在技術獲得のため勉強・訓練中なのですが、いずれは他媒体(・・・)でこのお話を展開していけたらと、そう思っているんです。その時はまたその時が来たらということで・・・。

 とある朝。珍しく今日の天気はどんより曇り空。いつものような清々しい朝、という感じではありません。

史織「ぐぅぅ・・・。すかぁぁ・・・。」

・・・まあ、このお方はいつも通りですけどね。

午前八時。不穏な天気であろうとも、今日一日はいつも通りに始まっていくのです。


 午前十時過ぎ。史織さんはまだ眠ったまんまです。

史織さんが眠っている時でも外出中の時でも、基本的に古屋図書館は開けっ放しです。まあ、普段から利用者などいないためあまり気にしていないだけなのかもしれませんが。

そうだとしても、やはり史織さんにはもう少しちゃんと管理をしてほしいと思うところですね。

???「あっ・・・!あそこかしら。何とか見つけられてよかったわぁ~(安堵)。」

おや?何やら一人の来訪者のご様子。

???「・・・開いてる。勝手に入ってもいいのかしら・・・?でも、ここの司書さんに話を通しておかないと後々面倒になる、って言われてるしなぁ・・・。」

なんとこの方、用があるのはどうやら図書館みたいですね。珍しいこともあったもんです。

史織「・・・んーっ?誰か・・・いる・・・?」

むくっ

おっと。来訪者の気配を感じ取ったのか、史織さん、お目覚めのようです。

のっしのっし、ゆっくりと表の方へ歩いていきます。

???「えぇ~っと、どうすればいいのかなぁ・・・。受付に誰もいないよ~・・・。急いでる(・・・・)んだけどなぁ~・・・。」

史織「ふあぁぁ~・・・。誰ぇ~?」

???「あっ!もしかして、ここの司書さん!?」

史織「・・・えぇ?・・・うん、そうだけど・・・。」

???「よかったぁ~・・・(安堵)。図書館、使わせてもらってもいいですか?」

史織「・・・ええ。いいわよ、別に・・・。ふあぁぁぁ~・・・。」

???「あっ、ありがとうございます!」

まだ寝ぼけたまんまの史織さん。来訪者に図書館利用の許可をあっさりと出してしまいました。

史織「・・・えっ?図書館に・・・、客っ・・・!?いっ、急がなきゃ!!」

史織さん、慌てて居間へと戻ります。思いもよらない出来事だったので動揺しているんでしょうかね?

居間で手早く身支度を済ませ、再び図書館へと向かう史織さん。

史織「うふふっ!図書館利用者の相手なんて、いつ以来かしら?少し前、小冬と誰かが勝手に使ってたらしいけど、その時は私はいなかったし。直接相手するのなんて、久し振りだわー。」

少々気分が高めになってしまっている史織さんですが・・・、まあいいでしょう。

そんな中、来訪者さんはずっと数冊の書物で黙々と何かを調べていたようです。

???「えっと・・・、・・・あった!これだわっ!」

と言うと、慌てて他の書物を片付け、その見つけた書物を持って史織さんの下へと詰め寄ります。

???「この本!貸してくれませんか!?」

史織「ん・・・?これって・・・。」

その本は第一級書物『百科全草(ひゃっかぜんそう)』。古き時代に書かれたとされる、あらゆる()に関することが載っている超貴重書物です。

史織「うーん・・・、でもねぇ。これってそう簡単に貸し出せる代物じゃないのよねぇ・・・。第一級の書架に置いてある本は大体がそうなんだけど。」

???「そ、そこをなんとか!!」

何やらこの方、切羽詰まったような感じもしますね。

史織「うーん・・・、困ったわねぇ・・・。」

???「りょ、料金なら多めにお出ししますよ!ほ、ほらっ?」

じゃら・・・

史織「えっ、嘘っ、金貨(・・)っ!?」

ちょ、ちょっと、史織さん!?

史織「んー・・・!でも、これは料金の問題じゃあ・・・。」

???「で、では!こちらもお付けしますので・・・!!」

もわわわぁん・・・

史織「っ!!??こ、これって・・・!!??」

差し出された物は『純正霊魂』。よく分かりませんが、貴重品のようですね。

???「こ、これでどうにか・・・!!」

史織「うぐぐっ・・・!!・・・わ、分かったわ。」

???「ほ、本当ですかっ!?」

史織「ただし、本来なら貸出期限は一か月間なんだけど、これは貴重な本だから貸し出すのは一週間だけ。いいわね?」

???「あっ、ありがとうございますっ!!では、私はこれで。」

といった感じで、見知らぬ方になんと第一級書物を貸し出してしまいました・・・。

物に釣られてしまうのはあまり好ましくないですよ、史織さん?

史織「・・・。け、結構な大金を手に入れた挙句、おまけに『純正霊魂』まで貰っちゃったわ・・・!こんな貴重品がまた手に入っちゃうなんて!」

また何か古屋家の秘薬の材料にでもなるんですかね?

そういえばさっきの方、一体どういう方だったんでしょうか・・・。少し気になりますね。

しかし、そんなことは気にも留めない様子の史織さん。

史織「とりあえず、この前の『雷獣の爪』と『純正霊魂』、後は里に売ってる物と確か生命の森で採れる適当な草がいくつかあれば、代用の秘薬くらいならいくつか作れるわよねっ!ふふっ、善は急げよ!早速里に行きましょうか。」

そういうことで史織さんは人里へと向かいます。


 午前十一時半過ぎ。人里で必要な買い物を終えた史織さん。

史織「ふんふんふふふーん。」

鼻歌交じりのご機嫌な様子で里を後にしようとしますが・・・。

筑紫「あれ?史織さんじゃないですか。」

史織「あら、筑紫。」

丁度、里に資源を送り届けに来た筑紫さんと出会います。

筑紫「むむっ!何やらたくさん買い物をしたみたいですが・・・、妙ですね・・・。貧困という程ではないにしろ、史織さんはそんなに裕福なわけではないはず・・・。はっ!さては、この前の大会で手に入れた『雷獣の爪』を質に入れて、そのお金で・・・。」

史織「そんなことしてないわよっ!!全く・・・。アンタらの私へのイメージって、そんなイメージしかないの?」

筑紫「もうー、やだなー。軽い冗談じゃないですかー(焦り)!では『雷獣の爪』はちゃんと大事に使ってくれた(・・・・・・)んですね?」

史織「いやまあ、これから使うつもりだけど・・・。・・・ん?使ってくれた(・・・・・・)、って何?」

筑紫「えっ?いや、せっかく私が手に入れた(・・・・・・・)貴重な代物でしたから。自警団との取引で手放したとはいえ、その使われ先は気になりますからね。」

史織「えっ、ちょっ、はっ!?アレ、アンタが元々持ってた物だったの!!??」

衝撃の事実です。どうして自警団があんな貴重品を所持していたのか疑問のままでしたが、なるほど。筑紫さんが元々手に入れていた物だったんですね。

史織「アレ、どうやって手に入れたの!?」

筑紫「いや、偶々ですよ。少し前、地上で電撃の調整をしていたら湖に落雷があってですね。落ちた方向へ行ってみたら、そこになんと子供の雷獣がいたんですよ。あれには驚きましたね。で、その雷獣も私に見られてると気付いたら、さっ、と逃げちゃってですね。で、その付近に。」

史織「落ちてたってわけ!?・・・なんて運のいい・・・。」

筑紫「まあでも、見かけても普通の人は近づかない方がいいですからね。私だったから平気でしたけど、子供だったとはいえ雷獣のいた辺り一帯には強力な電撃が渦巻いてましたから。」

つまりは、筑紫さんだったからこそ手に入った、というわけですね。

史織「へえ・・・。アレを何とか量産できたらいいんだけどねぇ。」

筑紫「はっはっは、無茶言わないでくださいよ。あの神秘的な成分は何ともなりませんが、電撃成分くらいなら私でも何とか真似できますけどね。」

史織「え。ホント?」

筑紫「私の力をお忘れですか?ふふーん!必要なら特別に力を貸してあげなくもないですけど。」

史織「えっ、じゃあ・・・。」

筑紫「その代わり、報酬は高くつきますよ?」

史織「うっ・・・。」

有用な力を借りるにはそれなりの対価を払わねばならないってことですね。

少しの会話の後、史織さんは図書館へと帰っていきます。


 午後一時過ぎ。母屋でお昼ごはんを食べ終わった史織さん。

史織「さあてと!じゃあ早速、生命の森へ秘薬の材料探しに向かうとしましょうかね。えーっと、準備準備っと・・・。」

材料探しといっても大したことではありません。必要な材料がどこにあるのかは古屋図書館で調べればすぐに分かること。こういう時、古屋図書館という『知識』を保有している史織さんはとても効率的に動くことができるのです。

史織「よし。鞄はこれでいいわね。後は・・・、おっと、いけないいけない。肝心の図鑑(・・)を持っていくのを忘れるところだったわ。」

あらあら。それがなくては探す草の形状も生えている場所も分からないですからね。忘れ物には気を付けましょう。ところで、何の図鑑を忘れるところだったんですかね?

史織「えーっと・・・、一級書架の・・・、確かこの辺に・・・。」

史織さんは一応この古屋図書館の司書長なだけあって、ここにある本の大半の場所を記憶しています。別に全部読んだわけではないのですが、(と言うか、史織さんはここの本のほとんどをちゃんと読んだことがないのですが、)どういう内容の本がどの辺りにあるのか、ということは把握しているのです。なので、利用者の求める本をすぐに提供することができるのです。

普段は『司書をやってない』と言っても、やはりこういうところは『司書』なのです。

史織「・・・ない。」

えっ・・・(驚き)?

史織「『百科全草』がなーーーい!!!」

・・・えっ(呆れ)?

史織「どうして!?確かこの辺りにあったはずなのに・・・!もしかして、盗み・・・?いやいや、ないない。いくらなんでもそれは・・・、あっ。」

・・・気付きましたかね?

史織「そうだった・・・。朝っぱらからやって来たヤツに貸し出したんだった・・・。はあ・・・、もうー!なによー!じゃあ、最初から材料探しになんか行けなかったんじゃなーい!」

必要な草の名称は知っていても、図鑑がなくてはどうしようもないのです。

史織「はあ・・・もういいわ。どうせ一週間は返ってこないんだし、それまでゆったりしてましょーっと。」

むむむ、これでいいんでしょうかねぇ?

史織「・・・あれっ?そういえば、貸し出したヤツの名前と住んでる場所。私、聞いたかしら・・・?」

〈百科全草〉

 若鄙創世期の時代、とある賢者が書き記した書物。若鄙で確認されているありとあらゆる草本(そうほん)の情報がぎっしりと詰まっている。・・・つまりはこの本、とても分厚い。三巻くらいにでも分けて書いてくれていれば、もう少し楽に持ち運びができたというのに。こういうところは頭が回らない賢者さん。しかしながら、その内容と情報量は超一級品。草の名称、形状、性質、主な用途、群生地等何か一つでもその草についての情報が分かっているのなら簡単に詳細を検索することができる。この本があれば、目当ての草を確実にかつ安全に採取しに行くことができる。持ち運びさえもう少し楽なら言うことはない第一級書物。

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