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若鄙の有閑  作者: 土衣いと
摩訶不思議な人間と
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〈番外面・完〉二人の怪我人の周囲に

番外面、完結となる裏空き地での決闘・その後のお話です。今章の番外面は早かったですね、うん。まあ、大体このくらいの長さが丁度いいはずなんです(笑)。

書いている内に何だか〈後日談〉っぽくなっていることに気付いたので、実は急遽〈完〉となった事情があったりなかったり・・・。


一度、書きかけていた三千字近くの文章を失うというハプニングもありましたが、何とか元あった通りくらいには直せたかと思います・・・。その場その場の即興で物語の大半を書いている作者ですので、いきなりデータが消し飛ぶと心が折れそうになります(涙)。

 あれから少し経って・・・。

史織「あー・・・。体が怠いわー・・・。」

小冬「それはそうですわ。あんなすっっっごい(・・・・・・)技を使ったんですから。」

母屋の居間に運んでもらった史織さん。布団を小冬さんに敷いてもらって、今は横になって休んでいます。

しばし、お二人の安息の時です。

史織「うー・・・。」

小冬「それにしてもさっきの技、先生と遠くの方から見てましたけど、とんでもなかったですわね。」

史織「私も余裕なかったから、正直小冬の傍に永佳がいてくれて助かったわ。逃げてもらわなきゃ、巻き込んじゃうところだったもの。」

小冬「確かに、私一人ではその場から逃げる(・・・・・・・・)という発想は浮かびませんでしたわね。・・・それで?さっきのあれ(・・)は一体何なんですの?気になりますわ。」

史織「えー・・・。どうしても言わなきゃダメ・・・?」

小冬「ふふ~ん、ダメですわっ。教えてくださいまし?」

史織「もう~、しょうがないわねぇ・・・。アレ(・・)は『天理相殺』。(うち)に伝わる術式の中でも特にちょー強い奥義(・・・・・・・)よ。」

小冬「むう、何だか簡単な説明ですわね・・・。」

史織「詳しいことは難しいのよ。とにかくちょー強い(・・・・・)のよ。」

ちょーざっくりした説明、ありがとうございます。

史織「でも、ちょー強い(・・・・・)分、使った後は・・・。」

小冬「今の史織のような状態になる、というわけですのね。」

史織「そーゆーこと。」

小冬「・・・では、反動付きの奥の手みたいな感じですのね。」

史織「まあそうね。でも、『天理相殺』よりももっと強いのがあるからどっちかって言うと、『天理相殺』が奥の手、もっと強いのが真の奥の手(・・・・・)って感じかしらね。」

小冬「・・・さっきのを超える技がまだあるんですの・・・(困惑)?」

少し途方に暮れるような感じがした小冬さん。

史織「あんまり人に言わないでね?こういうのはそれなりに秘密のままの方がいいのよ。」

小冬「そう・・・ですわね。約束しますわ。」

史織「ありがと。周りのヤツらに知られないようにするためにも、今後は使わないようにしないとね。千鶴に知られた分は仕方ないとして・・・。・・・そうよ。元はといえば、私が千鶴に使っちゃったのがいけないんだから。いくら負けたくなっ・・・!!」

おっとっと・・・、うっかり口を滑らしそうになった史織さん。ふふふ、何を言ってしまいそうになったんでしょうかね?

小冬「・・・?いくらまけ・・・、んー、何です?」

史織「っなんっっでもないわ(焦り)!!とにかく今後は使わないって決めたの!それだけっ!」

小冬「うーん・・・。できれば今度、手合わせ願った時とかにでもまた見せてほしいかなー・・・、なんて?」

史織「頼まれたって使わないし、小冬との手合わせも受け付けません!」

小冬「えぇぇー!?そんなぁぁー!」

史織「はい!この話はお終い!私は休むのっ!」

小冬「もうぅ~・・・。仕方ないですわね。」

とまあ、こんな感じで今日の夕暮れ時も過ぎていくのです・・・。

・・・・・・

しかし、そうはさせまいとする何かが・・・。

史織「っ!!??」

史織さんが何かを感じ取ったようです。

小冬「えっ・・・、し、史織?どうしたんですの?」

史織「この感じ・・・、何だかマズい気がするわ・・・!」

小冬「マズい気?一体何を・・・。」

そう小冬さんが言いかけたところで。

???「~~~りちゃぁぁん・・・!!!」

おや?誰かが誰かの名前を叫んでいる声が聞こえてきますね・・・。図書館の方へと近づいてきています。

史織「こっ、この声はっ!!??」

柊「史織ちゃぁぁぁぁん!!!」

あ、柊さんですね。柊さんが何やら大慌ての様子でやって来ました。

マズい気、なんて言うから誰が来たのかと思ったじゃないですか~、史織さん。

柊さんなら何もマズいことなんてありませんよ・・・ね?

柊「ぜえ・・・ぜえ・・・、史織・・・、ちゃん・・・、はぁ・・・はぁ・・・。」

史織「ひっ、柊・・・。なっ、何か用?」

柊「もう、『何か用?』じゃないわよー!!さっき図書館の方ですっっっごい(・・・・・・)爆発みたいな何かが起こった、って観測班から連絡があって・・・。それで私、心配になって急いでここまで・・・。・・・でも、建物の方は無事みたいね・・・。史織ちゃんは何だかボロボロみたいだけど・・・。」

・・・ん?

小冬「ああ、さっきの爆発みたいなものでしたら・・・。」

史織「あっ!こらっ!バカッ!小冬、喋っちゃ・・・!」

小冬「史織が千鶴さん(・・・・)(←人間)に『ちょー強い奥義(・・・・・・・)』(←究極奥義)を叩き込んだものですわっ。千鶴さんは無事なので(戦闘不能ですが)、心配事は何もないですわよ?」

柊「・・・え?」

史織「もう~~・・・、バカッ・・・。」

語りの者には新たに一つ心配事が芽生えましたよ・・・。

小冬「・・・えっ?・・・、あっ・・・。」

どうやら小冬さん、今気付いたようですね。自分が犯した過ちに・・・。

小冬「あぁーっと・・・、し、史織・・・?」

史織「・・・ふふっ、なぁに?」

優しく微笑む史織さん。

小冬「えぇーっと、その・・・、ごめんなさいっ!!!」

びゅごぉぉぉ・・・!

史織「ああぁぁぁ!!こら待てぇぇーー!!逃げるなぁぁーー!!」

小冬さん、猛烈な勢いで飛び去って行ってしまいました。

でも、今回ばかりはその場から逃げる(・・・・・・・・)ことができましたね!

やりましたっ!小冬さんっ(憐れみ)!!

さて・・・、そうして二人きりになったところで・・・。

柊「ねぇ・・・、史織ちゃん(にっこり)?」

史織「はっ、はい・・・。」

柊「この前、私と約束してくれたよね・・・?もう人を相手に(・・・・・)奥義を放ったり(・・・・・・・)しない、って・・・。」

史織「でっ、でも!今回のは千鶴から挑んできた決闘だったし・・・、ち、千鶴だって『真剣勝負でやって』とか言ってたし・・・、そ、それにほら!わ、私も今は身体中ボロボロなわけで・・・。だから・・・、ね?」

史織さん、渾身のおねだり。

それに対して。

柊「うふふっ・・・。史織ちゃん?」

柊さん、満面の笑み。慈愛に満ちた表情、これは・・・!

史織「柊・・・!許してく・・・。」

柊「・・・許すわけないでしょーー(怒)!!!百遍そこに直ってなさあぁぁい!!!『改心の猛撃』!!!」

ズバババババッッ!!!

ドガシャアァァァン!!!

史織「げふぅぅっ!!!」

・・・・・・

今日も史織さんは、ゆっくりとお休みに(・・・・・・・・・)なったようです(目を逸らして)。


 場所は変わって名草神殿。永佳さんが千鶴さんをここまで運んできてくれたようです。

境内には千鶴さんの帰りを待っていた高御さんと木実さんがいました。

高御「ん・・・?おお、永佳か。どうした?千鶴ならまだ帰って・・・。」

永佳「千鶴ならここだ。」

はい、永佳さんに抱えられていますからね。

高御「う、うわあぁぁぁぁ~!!!千鶴ぅぅぅ~!!!」

木実「ありゃりゃ~、ダメだったのね・・・。」

千鶴さんはまだ気を失ったまんまです。

永佳「話は後だ。今は母屋にこの子を運ぶから。」

高御「どうしてだぁぁぁ~!!!千鶴よぉぉぉ~!!!」

永佳「う・る・さ・い!!」

ボカッ

高御「いったぁ~・・・。殴ることないだろ~?」

木実「高御がきゃんきゃん騒ぐからだよ。静かにしてな。」

高御「ううぅぅ~・・・。」

・・・・・・

とりあえず、母屋までやって来ました。

布団を敷き、千鶴さんを横に寝かせてあげます。

千鶴「すぅ・・・。」

永佳「ふう、こんなもんかね。」

少し落ち着いたのか、千鶴さんは寝入ってしまったようです。

木実「済まないねぇ、ここまで連れ帰って来てもらって。」

永佳「いやなに、別に構わんさ。」

高御「おおぅぅ・・・、千鶴よぉぉ・・・。」

高御さんが千鶴さんの傍に寄り添います。

永佳「・・・木実よ。高御ってあんなだったっけ?」

木実「千鶴が絡むといつもああだよ。全く、こればっかりはどうしようもないね。」

永佳「ああ・・・。なるほどね・・・。」

・・・・・・

少し経って、高御さんが落ち着いた頃。

高御「・・・ああ、すまない。少々取り乱していたようだ。」

木実「・・・少々?」

永佳「はっはっは、そんな程度ではなかったよな。」

高御「・・・ええい!もう忘れろぃ!」

木実「ふふふ。それで、永佳よ?千鶴はどんな感じだったのさ?・・・見てたんだろ?」

永佳「・・・ああ、よくやっていたよ。自分の力とあんたたちの力を上手く使って、史織相手になかなか善戦してたんじゃないかな。」

高御「ほぅ・・・、そうかそうか。」

木実「永佳がそう言うくらいなんだから、なかなかなんじゃない?ふふっ、千鶴も一歩ずつ確実に成長できてるってことだね。」

高御「それもそうだな。何にせよ永佳のおかげだな。古屋の(・・・)の対策として私らだけで修行をしていた頃とは違って、これまた一気に大きく成長させてくれたもんだよ。」

木実「ほんとだね。永佳とあの修行(・・・・)を始める前までは千鶴ったら、『全然敵いませんよー(涙)!』なぁんて言ってたのにね。」

永佳「ふふっ。私にもまた一人、教え子ができて嬉しいよ。・・・で、今後もまた史織の所に決闘しに行かせる気かい?千鶴はまだそれなりだったけど・・・、高御、あんたが一番熱が入ってたんだから。」

高御「あっはっは!そうだったかねぇ。いや、まあ今後は千鶴の判断に任せることにするよ。私もちょっと躍起になっていたからねぇ。」

木実「史織に負けたから(煽り)?」

高御「むっ!そっ、そういうわけではない(焦り)!千鶴が、古屋の(・・・)に負けたまんまだと悔しかろうと思ってだな・・・!」

木実「ふふっ、はいはい。」

高御「と、とにかくだ!今後のことは千鶴に任せる。私からの差し金はもう終わった、とでも古屋の(・・・)に伝えておいてくれ。」

永佳「そうかい、分かったよ。」

千鶴「ん、ん~~~~。・・・、あっ・・・、あれぇ~っ・・・?ここはぁ~・・・?」

おやおや、千鶴さんが目覚めたようです。

高御「おおぉぉぉ~!!千鶴や!!目が覚めたのかい。」

千鶴「ふあぁぁぁ~・・・。あれぇっ・・・?高御さま・・・?」

木実「おはよう、千鶴。よく眠れたかい?」

千鶴「・・・?木実さままで・・・。どうしてここにぃ~・・・?」

あらら。どうやら千鶴さん、少し寝ぼけているみたいですね。

高御「永佳が(うち)まで運んでくれたんだよ。」

千鶴「永佳・・・先生が・・・?・・・、はっ!!!」

永佳「ふふっ、ようやく気付いたのかい?」

千鶴「ああぁぁ~、先生ぇぇ~・・・。私ぃぃ~・・・、またぁぁ~・・・。」

永佳「あんまりくよくよしてもしょうがないよ。史織をあそこまで追い詰めたのは大したもんなんだから。」

千鶴「ううぅぅぅ~~・・・。」

永佳「まあ、結果が欲しけりゃ結局は修行あるのみってことだね。小冬もそうやって日々頑張ってるんだから。」

千鶴「うう・・・、そうですね。私も頑張りますっ!」

永佳「ふふっ、その意気だね。・・・そうだ。修行するなら今度小冬を誘ってみたらどうだい?お互いに修行をする者同士、得られるものもあるんじゃないかな?」

木実「おお・・・。それ、ありだね。」

高御「何か古屋の(・・・)を負かす秘策を知っているかもしれない・・・!今度、連れて来て聞き出そう!そして、私が古屋の(・・・)を倒す!!」

千鶴「ああ!ちょっと、高御さま!?史織さんを先に倒すのは、私なんですからー!」

木実「ちょっとーー、話が逸れてるんだけどーー?」

永佳「はっはっは!愉快愉快!!」

日も暮れた暑まし山。それでもここはいつでも温かい(暑い)。

名草神殿では今日()賑やかな作戦会議が開かれるようです・・・。

〇柊の技『改心の猛撃』

 柊が自警団員中最強だと言われる所以がこれを扱えるから、というもの。元々は永佳が自警団の戦闘訓練用に組み込んだ難関・決闘技術の一つ。現状、これを扱える団員は柊だけ。

 多数の光弾を展開させ相手の動きを制限し、それとは別の光弾が相手を的確に狙い定める。難関と称されるだけはあって扱いは非常に難しいとされるがその分、他の訓練用決闘技術と比べると破格の攻撃力と命中率を誇る。少しだけだが命中した相手の(あく)っぽい心を正す効果があるらしい。そういった意味での「改心」だと思われる。

 『天理相殺』を使用し満身創痍で動けず布団で横になったままの無防備な史織に向けて柊から放たれた。もちろん、直撃。その後三日間は小冬と柊が毎日史織のお世話をしにやって来てくれたそうな・・・。ちなみに、母屋は半壊した模様。おお~、こわっ。

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